衛星リモートセンシングベンチャー企業とビジネストレンド 2017

宇宙開発は国家機関がやることだと思われがちですが、近年では民間ベンチャー企業が数多く起業し、宇宙ビジネスが盛んになってきています。特にアメリカでは、シリコンバレーを中心に宇宙ベンチャー企業が多く揃っています。

前回の記事ではアメリカを中心とした海外の注目宇宙ベンチャーを宙畑がピックアップ、概要を紹介しました。今回から3回に分けて、前回紹介しきれなかった企業について詳しく解説していきます。また、日本のベンチャー企業についても合わせて紹介します。

まとめ:宇宙×ベンチャー企業一覧2017 アメリカ編
第一回:ロケット開発&打ち上げサービス事業のビジネスモデルと主要企業
第二回:衛星による通信サービスを提供するベンチャー企業
第三回:衛星によるリモートセンシングをサービスにするベンチャー企業

衛星によるリモートセンシングサービスのトレンド

 衛星から撮る地球の写真には以下のような特徴があります。

(1)広域性

  ドローンや飛行機など地上からの撮影よりも広範囲を一度に撮影可能

(2) 抗堪性

  台風などの強風や他者からの攻撃を受けにくく、機能を維持できる

(3) 越境性

  自らが所有する範囲を越えて活動できるので、他社・他国領土の偵察が可能

(4) 周期性

  絶えず軌道を周回しているので、定期的に特定地点の撮像が可能

 上記は、元々の人工衛星によるリモートセンシング(地表面の観測)の強みでしたが、近年人工衛星の小型化・低価格化が進み、人工衛星の数を増やすことができるようになってきています。衛星の数を増やしていくと、地球上のあらゆる場所を高頻度(1日1回以上など)で撮ることができます。

 これらのデータは、その他の地上のデータ(気象データやクレジットカード決済データなど)と組み合わせて新たな価値を生み出すと言われています。衛星もいわゆる、『ビックデータ』のうちの一つという考え方です。

衛星によるリモートセンシングのサービスを提供するベンチャー企業

複数の衛星を使ったサービスを提供するベンチャー企業を紹介します。

◆Planet

会社URL: https://www.planet.com/
世界最大規模である100機以上の人工衛星群を既に所有し、世界中の写真を撮影。撮影された写真は、高品質かつ頻繁にアップデートされ、様々な分野での活用が期待されています。農業、自然資源の管理、自然災害などの現場で採集されたデータを企業や国際協力組織に提供し、活動促進の手助けを行う計画です。2017年2月に、この分野の有力ベンチャー企業であったGoogleの子会社Terra Bellaを買収し、さらに力をつけています。

Planetサービス例。同じ場所の写真を時間を変えて撮影することで(左側上下)、時間変化を検出できる。右図ピンクは大きく変化した場所。黄色は少し変化した場所。緑はほとんど変化していない場所。どの畑が使用されているのかが分かる。
Image Credit: Planet

◆Spire

会社URL: https://spire.com/
2012年に設立され、本部サンフランシスコの他にシンガポールにも拠点を置く企業。CubeSat等の小型衛星群を用いて、海上の船舶の情報収集や天気予報に役立つ情報の収集を行っています。2014年には三井物産(グローバル・インベストメント)からの資金援助も受けています。

衛星で船舶の情報を集めるイメージ図がSpireのWebsiteで確認できる。カーソルを合わせると、船の名前と速度、向きが表示される。
Image Credit: Spire

◆Blacksky Global

会社URL: https://www.blacksky.com/
2013年設立。シアトルに本部を置き、Spaceflight Industriesの傘下の会社。およそ60機の衛星を利用して撮影された画像データを分析し、発信しています。「リアルタイムに情報を発信する」をモットーに、衛星の情報だけでなく、SNS、ラジオ、感震器の情報までも用いて、最新のデータをいち早く提供しています。

Blackskyのシステム上で、鹿児島にできた新しい太陽電池プラントを知らせるアラート画面。業界のブログやツイッター、企業からのプレスリリースの情報を自動で収集して、エネルギー業界に関する情報としてアラートがあがる。
Image Credit: Blacksky Global

◆Orbital Insight

会社URL: https://orbitalinsight.com/
2013年設立。人工衛星や無人航空機の発展により量産される地理空間データを分析。地域、国、世界単位で情報を整理し、社会・環境問題等の解決促進を目指すべく、クラウドコンピューティングなどのテクノロジーを駆使し、データ分析のプラットフォームを形成しています。昨年、20億円の投資を獲得している点も注目です。

石油タンクは残量に応じて蓋が上下するため、人工衛星から撮影すると、その影の入り方から石油の残量が推定できる。
Image Credit: Orbital insight

◆Urthecast

会社URL:https://www.urthecast.com/
バンクーバーに拠点を置く、リモートセンシングと地理空間情報を主に扱う株式会社。現在、国際宇宙ステーションに配置されているUrthecastカメラ(2機)によって撮影されている動画のライブ配信をはじめ、OptiSARという業界初となる、マルチスぺクタル画像の撮影と合成開口レーダーの2つの機能を搭載した人工衛星コンステレーションを2019~2020年ごろに打上予定です。

ISSに搭載されたカメラで撮影された北朝鮮国内の様子。車が動いている様子が分かる
Image Credit: Urthecast

日本でも衛星の観測データを使ってビジネスをする会社があります。

◆アクセルスペース

会社URL:https://www.axelspace.com/
2008年創業。多様なミッションに対応した超小型衛星を安価・短期に開発・製造し、運用までを行っています。ユーザーが衛星を所有することなく、必要なデータだけを利用できるサービスを目指し、2022年までに50機の衛星を打ち上げ・運用予定です。もっと簡単に地球を広域観測できるようにすることで、農業や林業、資源開発などの産業への貢献が期待できます。

開発中のGRUS衛星
Image Credit: アクセルスペース
多くの衛星で地球観測を行うAxel Globeイメージ
Image Credit: アクセルスペース

◆スペースシフト

会社URL:http://www.spcsft.com/
衛星を利用したビッグデータの取得を行っています。天候の影響を受けないレーダー衛星の情報から、24時間365日、地上での人や車の動きなどを解析しています。人や車の動きを経済と照らし合わせてみることで、新たな経済指標としての衛星情報利用を促進しています。

◆ウミトロン

会社URL:https://umitron.com/#Home
2016年創業。衛星のデータを活用した水産養殖支援サービスを行っています。魚の群行動を解析し、最適な給餌の量とタイミングを設計することで、高騰する水産養殖業コストの削減を図っています。

◆ビジョンテック

会社URL:http://www.vti.co.jp/
衛星リモートセンシングデータの解析を行っています。農業向けには、高品質なコメの安定的な生産のため、衛星データを使って稲の生育状況を把握するサービス「AgriLook」を提供しています。

ビジョンテックが開発する水稲圃場農業情報提供システム AgriLook(アグリルック)。稲の葉色予測マップ。
Image Credit: ビジョンテック

衛星リモートセンシングビジネスのまとめと今後の展望

 衛星によるリモートセンシングビジネスは、第一回・第二回と紹介してきた他の宇宙ビジネス分野と比べ、爆発的に成長する可能性がある分野だと言われています。今までは、政府機関など一部の人しか使うことのなかった衛星写真が、一般に広く公開されることで新たな使い道が見つかるかもしれないと考えられているのです。

 一方で、使い道について色々とアイディアは出てきているものの、ビジネスとして成立する(提供されたサービスに対して、顧客が対価を支払う)例はまだ見つかっていないとも言われており、衛星リモートセンシングにおけるキラーコンテンツ探しが世界中で行われています。

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宇宙×ベンチャー企業一覧日本編2017

※本記事は2017年5月5日時点での情報を元に作成しました。

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