宙畑 Sorabatake

宇宙ビジネス

地球上のどこからでもインターネットを SpaceXのStarlinkとは?

アメリカのFCC(Federal Communications Commission)がSpaceXによる衛星コンステレーション運用計画を認可しました。その内容とは。

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SpaceXイメージ Credit : SpaceX

アメリカのFCC(Federal Communications Commission)がSpaceXによる衛星コンステレーション運用計画を認可した。SpaceXが開発中の衛星コンステレーションはStarlinkと名づけられており、最終的には12,000基の衛星が複数の軌道上を回ることで、地球上のどこへでもブロードバンド通信を提供する計画(予定)である。

Starlink概要

FCCは4,425基のStarlink衛星運用をSpaceXに認可し、6年以内にその半数である2,213基の運用を必須条件(※1)としている。Starlinkによって、低コスト、高速度によるインターネット通信が地球上のどこからでも利用できるようになる。運用が開始されれば、今まで価格や地理的な要因などでインターネットが利用できなかった人々にもアクセスを提供できるようになるだろう。
以下にRedditによるStarlinkの概要を挙げる。

● 重量は1基あたり386kg
● 衛星は地球観測や安全保障などの用途にも使われる
● 5年の設計寿命
● デブリ化防止のために寿命後の軌道離脱
● 高度1,110kmから1,325kmの間で83の軌道面を使用する
● 1基あたり20Gbpsの通信帯域
● 受信側のアンテナはノートパソコン程の大きさのフェーズドアレイアンテナ(※2)を空が見通せる場所に設置することで、衛星と通信することができる。費用は100ドルから300ドル(1万円から3万円)に収まる見込みだ。

衛星通信によるメリット・デメリット

衛星イメージ Credit : SpaceX

メリットは上述のように、地球上のどこへでもインターネット通信を提供できることだ。これによって、今まで携帯通信網や有線通信網ではカバーできなかったエリアでもインターネットを利用することができるようになる。低コストでサービスを提供することができれば、インターネットを利用できない40億人の人々へもインターネットアクセスを提供することができるようになるだろう。

デメリットはコンステレーション構築の費用と人口密集地での速度の低下、ハイレイテンシ(※3)だ。

1回の打ち上げでFalcon 9は25基、Falcon Heavyで72基のStarlink衛星を軌道に配置することができる。FCCから提示された6年で4,425基の衛星を軌道上に配置するためにはFalcon 9で毎年36回の打ち上げ、Falcon Heavyでも毎年22回の打ち上げを行わなければいけない。

最大で150億ドル(1.6兆円)の費用がかかるが、打ち上げサービスの低コスト化やフェアリングの回収によって費用削減は予想されている。

人口密集地では衛星1基あたりの負荷が大きくなるため、通信速度の低下も起きる。衛星通信は光ファイバ通信と比べ、ハイレイテンシも問題である。SpaceXは7,000基以上の衛星を追加で極低軌道に投入することで速度低下とハイレイテンシを回避する計画である。

衛星通信開発を行う会社は他にもOneWebやSpireなどがある。高い技術力でロケット打ち上げの偉業を成し遂げ続けているSpaceXだが、通信衛星ではどのような偉業を見せてくれるのだろうか、楽しみである。

今週の英語フレーズ

Although we still have much to do with this complex undertaking, this is an important step toward SpaceX building a next-generation satellite network that can link the globe with reliable and affordable broadband service, especially reaching those who are not yet connected.

我々には、この複雑な事業で山ほどのようにこなさなければならないことがあるが、世界中を高信頼性、手軽なブロードバンドサービスでつなげる次世代の衛星ネットワークを構築するSpaceXにとって重要なステップである。

用語解説

※1 連邦規則集 25.164(b) にて衛星運用事業者は認可が下りた日から6年以内に、中間目標として最終目標の50%の衛星を打ち上げ、軌道に乗せなければならない。2,200基以上のStarlink衛星を6年以内に打ち上げることは非現実的なため、SpaceXは再審査を求める予定である。

※2 フェーズドアレイアンテナ: 電子的な制御で電波の照射方向を変更できるアンテナ イージス艦に搭載されているのが代表例

※3 ハイレイテンシ: 通信パケットが送信され、再び受信するまでの応答速度が遅いこと ネットワーク使用時はレスポンスが悪くなる。

出典元

2018/2/22, FORTUNE, Here's What You Need to Know About SpaceX's Satellite Broadband Plans

2018/3/29, THE VERGE, FCC approves SpaceX’s ambitious satellite internet plans

2018/3/29, SPACENEWS, FCC approves SpaceX constellation, denies waiver for easier deployment deadline

2018/3/30, Reddit, Starlink FAQ

2018/3/29, FCC, FCC Authorizes SpaceX to Provide Broadband Satellite Services

2018/3/30, Cornell Law School, 47 CFR 25.164 - Milestones.

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