IAC2017レポート

IACとは

International Astronautical Congress2017(以下,IAC)という宇宙関連の発表が多く行われる国際学会が9/25-29にオーストラリアはアデレードにて開催された。
宇宙飛行士による発表から宇宙機(人工衛星や探査機)やロケットなどの理工学的な発表,宇宙教育に宇宙法と言った発表など,発表内容は多岐にわたる。
世界最大の宇宙関連の学会であり、今年の参加者は4500人ほどだったという。

本学会に宙畑編集部も参加したが、宇宙ビジネスの本格化とそれを下支えする小型衛星向け技術の発展を強く感じる一週間となった。

IAC2017の学会会場

宇宙ビジネスはどのようにして発展すべきか

学会の冒頭では各国の宇宙機関のトップがパネラーとして登壇し、「 Business before Science or Science before Business」というテーマに沿って意見を述べ合った。

科学技術が成熟するからこそ、その技術を応用して宇宙産業を興すことができるという立場を取る欧州や日本などの宇宙機関、宇宙産業で利益が上がるからこそ科学技術の発展につなげることができるという立場を取るインドなどの宇宙機関と、世界各国で様々な立場があった。
議論の中で、成熟した科学技術を応用して宇宙産業を興そうとしている企業が増えてきている印象があった。
以下ではこのような企業(昔からある宇宙企業である"OLD SPACE"に対応して、新興の宇宙企業を"NEW SPACE"という)についていくつか紹介する。

Rocket Lab.のブースより

多くの衛星を打ち上げ、サービスを展開

イギリスに本拠地を置くSAS(Sky and Space Global)は2020年までに200機の超小型衛星を打ち上げて通信網を構築する計画を発表した。

200機のコンステレーション計画を発表した際のSAS社員の集合写真

まずは3機の超小型衛星を打ち上げ、地上ー衛星間通信・衛星ー衛星間通信の実証を行う予定とのこと。
詳しくは同社ホームページのYoutubeを確認してもらいたい。
[embed]https://youtu.be/9j9GIC6TOK8[/embed]

同社は低緯度地域を中心に多くの超小型衛星を打ち上げ、B to Cのサービスを展開しようとしている。
特徴としては、独自に衛星の搭載機器開発は行わず、サービス展開に注力しているという点だ。そうすることで、衛星の開発期間を短縮することができ、早くサービス展開につなげられる。

中国に本拠地を置くSPACETYも衛星によるコンステレーション計画を発表した。

SPACETYが予定しているコンステレーション計画

SPACETYは2016年1月に設立した会社にも関わらず、すでに2種類の衛星を打ち上げ、今後は大学と協力して天文現象を観測する衛星を24機、その他にも地球観測衛星や通信衛星を打ち上げていく予定だと述べた。
こちらの企業もSASと同様に、独自に衛星搭載機器の開発は行やず、サービス展開に注力していることが特徴だ。

SPACETYに関する詳細は同社ホームページへ。

従来は、独自で衛星の搭載機器を開発し、打ち上げる企業が多かった。
近年、このような企業の中から、宇宙での動作実績を有する各搭載機器を通販で販売するところがでてきた。
例えばGOMSPACEやPumpkinなどである。SASもSPACETYもこのような企業の搭載機器を多く利用しているようだ。

このように、成熟した技術を応用し、サービスを展開する時代に突入しつつあるように感じた。
今後も宇宙を利用したサービスを展開する企業が多く出現することが期待される。

今後の成熟が期待される技術分野

更なる技術の発展が期待される分野の1つとして、小型衛星用の電気推進系*2がある。
推進系の技術が成熟すると、サービス展開の幅も広がり、今後ますます宇宙利用に関するスタートアップが登場するように考えられる。
*2電気推進系についてはこちら:http://jpn.nec.com/solution/space/technology/bus/ion_engine.html

例えば、同一スペックのカメラを搭載した衛星の場合、低軌道を周回する衛星の方が地上との距離が近くなるために、地上分解能がよくなる。しかしながら、低軌道を周回する場合には、大気の影響が大きくなり軌道高度が下がるために運用期間が短くなるという課題があった。電気推進により軌道を維持できれば、低軌道であっても運用期間が短くなることもない。地上分解能が良くなれば、その分確認できるものも増えるため、サービス展開の幅も広がる可能性がある。

また、軌道を自由に変えられるようになると、好きな位置に衛星を配置できるようになるため、より効率よくコンステレーションを組むことが可能となる。そうすることで、打ち上げる衛星の数も最低限で済むためにコストが下がり、サービス展開の敷居が下がることにもつながる。

すでに、オール電化衛星と呼称されるような電気推進系を搭載した大型衛星は打ち上げられているが、実用的な小型衛星用の電気推進系はまだ発展段階にある。
小型衛星向けの電気推進系を売り出す企業はRAFAELやSITAEL、BusekにThrustMeといくらか出始めたが、まだどこも実績があるといえる段階ではなく、今後の技術の成熟が期待される。

広がるIoT/ビックデータビジネス

今年の講演では、IoTやビックデータに関する発表も多くみられた。
開催地であるオーストラリアのIoTベンチャー企業として、fleetやmyriotaなどの会社の発表があった。これらの企業は衛星を用いて、今まで通信網がなかった海上の船や飛行機、山中や広大な畑の真ん中などから様々なデータを吸い上げ、ビジネスを行おうとしている。ウルグアイのベンチャー企業であるchipsaferは牧畜にセンサーを付けて、デジタル酪農を提案している。

衛星を通じて、牧畜を管理する
Image Credit:chipsafer

その他にも、衛星画像を用いて自然災害(洪水、干ばつ、マングローブの生育状況など)の状況把握をするソリューションや衛星とドローンを組み合わせたソリューションなど、多くのアイディアが発表されていた。衛星から得られる情報だけでなく、地上の気象情報やTwitterでのつぶやきも組み合わせた解析が行われるなど、衛星画像もビックデータの一つとして扱われ始めている。

さらに、これらのビジネスを支えるプラットフォームとして、Amazon Web Service(AWS)やGoogle Earthなどが無償の衛星画像のプラットフォームを整備しており、衛星画像を使った新しいビジネスの加速が期待される発言が学会内でも度々飛び出していた。

OLD SPACEはさらなる技術の高度化へ

対する従来からの宇宙企業”OLD SPACE”は、自らが持つ能力をさらに伸ばすことで差別化を図りたい方針だ。中国は光学衛星の解像度をさらに高める計画を発表し、欧州大手衛星メーカーのAirbus Space and Defenceもレーダー衛星分野での高解像度化を目指すという。

また、衛星の通信手段として従来から用いられてきた電波ではなく、光を用いた通信『光通信』が注目されている。
衛星数の増加に伴い、使用できる周波数が込み合ってきていることが問題となっているが、光通信はそれを解決する一つの方策となり得る。ドイツの通信機器メーカーであるTESATは小型衛星に搭載可能な光通信端末のアピールを行った。
光通信では電波での通信よりも多くの情報を伝送することが可能になる。この特徴を活かして、NASAは光通信を深宇宙探査に使いたいと述べるなど、光通信への興味の高さをうかがわせた。

一週間の、宇宙業界のお祭りとも言えるIACは、イーロンマスク氏の火星移住計画に関する講演を持って締めくくられた。
イーロンマスク氏はSpaceXで開発しているロケットを利用することで、世界中のどこへでも1時間以内に移動できる世界を実現してみせる、と発表した。

イーロンマスク氏の講演は複数のホールを開放して行われた

今回の記事だけではとても紹介しきれないほど多くの講演があり、宇宙業界の盛り上がりをひしひしと感じることができた。