人工衛星で見ごろがわかる?紅葉エリアを調べてみた

10月もうすぐ終わり、北海道から始まった紅葉の便りが徐々に南下しているようです。毎年「紅葉を見に行きたい!」と思いつつ、見に行くタイミングを逃し続けている宙畑編集部員…。今年こそタイミングを逃さないように衛星データを使って紅葉の進み具合を調べられないものかと紅葉の観測に挑戦することにしました。

※本記事は宙畑メンバーが気になったヒト・モノ・コトを衛星画像から探す不定期連載「宇宙データ使ってみた-Space Data Utilization-」の第7弾です。まだまだ修行中の身のため至らない点があるかと思いますがご容赦・アドバイスいただけますと幸いです!

【目次】
(0)衛星から推測した紅葉エリア結果
(1)去年の紅葉を衛星で見てみた! 可視光で捉えた画像の作成方法
(2)紅葉とはなにか。判別基準を探る
(3)葉っぱの色と水分量と衛星で調べる
(4)合成して紅葉を見つけよう
(5)やってみたまとめ

(0)衛星から推測した紅葉エリア結果

まず結果からお伝えすると、衛星データを用いて紅葉しているかもしれない場所の推測はできました。しかし、決して精度が高くはないというのが正直なところです。

”紅葉解析結果Image Credit:sorabatake

今回は、見たままの画像(可視光で捉えた画像:上段)と、赤い色を識別する計算式と水分量を識別する計算式、植生を識別する計算式を使って作成した画像(下段)より紅葉しているエリアの推測を行いました。観測エリアには紅葉名所で有名な嵐山と、すでに紅葉している地点で現地の情報も取得できる小樽~札幌周辺を選んでいます。

下段の画像では明るい緑ではなく、暗めの緑のところが紅葉していると推測しています。推測であって、この結果だけでは完全に紅葉しているかどうかは言い切れません。今回のデータでは、本来観測したいはずの紅葉の代表モミジ(カエデ)以外の植生にも同じ反応が出てしまい、紅葉だけをはっきり識別することができなかったからです。
やってみて改めて感じたことですが、正確に紅葉を識別するにはこのやり方だけでは十分だと思いません。地上で観測されるデータや、ほかの計算式を使ってより詳細に識別する方法があるはずです。

では、実際にどのように解析してこのような結果になったのか紹介していきます。

(1)去年の紅葉を衛星で見てみた! 可視光で捉えた画像の作成方法

紅葉とは、ご存知の通り、木々が秋から冬にかけて葉っぱを赤や黄色に変化させる現象です。まずは去年の紅葉時期に観測された衛星データを見つけてみてどのように見えるのか調べてみました。

去年の紅葉見ごろ情報などから、紅葉の名所の一つ京都の嵐山の見ごろ時期を調べると11月下旬~12月上旬が見ごろとなっていました。早速、衛星データを探してみると2017年12月6日にLandsat-8が京都周辺を捉えています。見ごろの終わりギリギリですがこのデータで紅葉がわかるか見てみましょう。

産業総合研究所が公開しているLandbrowserで衛星データをダウンロードし、無料の解析ツールEISEIを使ってとりあえず見たままの画像(可視光で捉えた画像)を作ってみます。

見たままの画像の作り方は、EISEIを開き、色合成という機能を使って、青、緑、赤それぞれにLandsat-8のバンド2、3、4を当てはめるとできます。

※衛星画像の作り方はこちらにもやり方を紹介しています。

Image Credit: U.S. Geological Survey
2017年12月6日にLandsat-8が観測した京都周辺
2018年8月3日にLandsat-8が観測した京都周辺
Image Credit: U.S. Geological Survey


一枚だけだとわかりにくいので、比較として紅葉時期とは違う2018年8月3日の画像(右側)も作りました。なんとなく木々の中に色の違いが出ているような…。

2016年12月3日にLandsat-8が観測した京都周辺
Image Credit: U.S. Geological Survey

さらに、一昨年の紅葉時期も調べると去年と同じく11月下旬~12月上旬のようだったので2016年12月3日の画像とも比較してみましょう。うーん。見たままの画像でははっきりと紅葉しているかどうかわからないです。

(2)紅葉とはなにか。判別基準を探る

もう少し、ここが紅葉しているところだ!と区別できないものか紅葉そのものについて調べてみました。※1

紅葉の仕組みは、葉っぱの緑色の色素を持つクロロフィルが消えていき、代わりに赤い色素を持つアントシアニンが作られて、赤くなっていきます。黄色くなるのは、カロチノイドという色素が多くなるためです。

また、紅葉するということは枯れ葉になるということなので、植物の持つ水分量も減っているはずです。

なので、人工衛星でより詳しく紅葉を観測するには、赤(黄葉の場合は黄)と緑の区別、もしくは水分がある植物となくなっている植物の区別ができれば紅葉を調べられないかと仮定することにしました。

今回データを使う人工衛星Landsat-8は11種類の波長を調べることができる人工衛星です。今回調べたい葉っぱの色も、水分量もLandsat-8が観測できる波長からデータを得ることができます。

Image Credit:sorabatake

さてうまく解析できるのでしょうか…。

(3)葉っぱの色と水分量を衛星で調べる

まず、紅葉の葉っぱの色、つまり緑から赤くなった木々の場所を識別しないといけません。
ここで、木々の色味を調べる時の植生指標として、GRVI(Green-red ratio vegetation index)という指標があります。

GRVI=(G-R)/(G+R)

という式で示すことができ、この式を衛星データに当てはめて使うことで緑と赤の色の差を明らかにすることができます。
上の式の中に含まれる「G」と「R」とは緑(Green)と赤(Red)の波長データを当てはめるということです。
嵐山周辺の観測データから、まず、可視光の緑の光を捉える波長(landsat-8のバンド3)と赤の光を捉える波長(バンド4)を使います。

また、植物に含まれる水分量の調べ方については、正規化水指数NDWI(Normalized Difference Water Index)という指標があり、GRVIと同じような式になっています。

NDWI=(G-SWIR)/(G+SWIR)

G=緑(バンド3)とSWIR(Short Wave Infra-Red)=短波赤外(バンド7)の波長を式に当てはめることで、水分量の分布を調べることができます。

Image Credit:sorabatake

そして、作ってみた画像が下記になります。
EISEIでは、「計算」というところから「植生指数」を選ぶと上の式にどのバンドを当てはめるか指定することができます。

2017年12月6日の京都 嵐山周辺(-GRVI)
2017年12月6日の京都 嵐山周辺(-NDWI)
Image Credit: U.S. Geological Survey


(左)GRVI=(緑-赤)/(緑+赤) この式のままだと緑の光が強いほど、指数が高く(白く)なってしまうので、赤の光が強いほど指数が高く(白く)なるように、-GRVIに調整しています。木々の生えている場所で比較的白っぽくなっている場所があるのがわかります。といっても意外に街中がかなり白くなってしまいました。

(右)NDWI=(緑-短波赤外)/(緑+短波赤外) この式も式のままだと水分が多いほど高い指数になるため、水分が少ない方の指数を高く表示させるために-NDWIに調整しました。街中も乾燥しているのか、植生と街中の境目が少しわかりにくくなっています。

同じように2016年12月3日の観測画像でも同じことをやってみます。

2016年12月3日の京都 嵐山周辺(-GRVI)
2016年12月3日の京都 嵐山周辺(-NDWI)
Image Credit: U.S. Geological Survey


(左)GRVI=(緑-赤)/(緑+赤) 2017年の画像と同じく-GRVIに調整しています。(右)NDWI=(緑-短波赤外)/(緑+短波赤外) 同じく-NDWIに調整しています。

と、なんとかここまで画像を何枚も作ってきましたが、やりたいことは、葉っぱが赤くて水分もなくなっている場所を一発で見分ける方法です。今のところできた画像からは紅葉の場所がいまいち分かりません。このGRVIとNDWIの画像をさらに合成して紅葉エリアを割り出してみます。

(4)画像を掛け合わせてみる

紅葉の特徴から2種類の画像を作ってきましたが、画像を掛け合わせるには、青、緑、赤の3原色それぞれに振り分ける必要があります。

作成した2種類の画像ともう一つの指標として、木々のある場所とそうじゃない場所を区別するために植生の活性度を示すNDVIを入れることにしました。

Image Credit:sorabatake
2017年12月6日の京都 嵐山周辺(NDVI)
2016年12月3日の京都 嵐山周辺(NDVI)
Image Credit: U.S. Geological Survey


白いところほど、植物が生い茂っている場所です。

さて、3種類の画像が準備できたので、振り分けていきます。

振り分け方は自由です。
今回は、青を-NDWI、緑をNDVI、赤を-GRVIにしてみました。

この配色の場合、
 青(-NDWI)は、水分がないところほど強い。=葉っぱが乾燥して枯れている。
 緑(NDVI)は、植物が生い茂っているほど強い。=葉っぱが青々としている。
 赤(-GRVI)は、赤いところほど強い。=葉っぱが赤くなっている。
といえます。

そのため、水分がなく(青が強く)と葉っぱが赤い(赤が強い)場所=理想です。しかし下の画像を見るとわかるとおり、街中がほぼ紫になってしまうので、緑がかっている場所(植生分布)の中で、緑が暗いところほど紅葉している場所であると推測しました。

Image Credit: U.S. Geological Survey


2017年12月6日の京都周辺の紅葉解析画像 右は可視光画像

2017年の嵐山周辺の拡大図。明るいところもありますが暗い部分(紅葉していると考えられる部分)もあるようです。

Image Credit: U.S. Geological Survey


右:2016年12月3日の京都周辺の紅葉解析画像 右は可視光画像

2016年の光明寺周辺の拡大図。暗い緑、紫がかった緑があり紅葉していると推測できそうです。 
2017年、2016年とも、ほぼ似通ったところが紅葉していると推測できます。可視光の画像と見比べて、少しは識別しやすくなったでしょうか。

この期間ピンポイントの日付ではないですが、去年の嵐山、一昨年の光明寺周辺にて撮られた紅葉写真がインターネットでも出てくることから確かにこの時期に紅葉していたと言えそうです。

嵐山・渡月橋 ※去年の写真はスライドの4枚目以降  
紅葉に包まれる参道がドラマチック!光明寺 ※3枚目の写真が2016年の紅葉の様子 
 

さて、では今年の紅葉状況はどうなのでしょうか。10月を過ぎて北海道から紅葉が始まっています。10月8日の札幌周辺を同じように加工してみました。

Image Credit: U.S. Geological Survey


左:2018年10月8日 小樽~札幌周辺の可視光画像
右:同じエリアの解析結果(青:-NDWI、緑:NDVI、赤:-GRVI)

雲や雲の影で区別が難しいところがありますが、都心より山のほうで比較的暗い緑があるため、山のほうで紅葉していると推測できます。

10月8日観測の定山渓温泉周辺の拡大図

比較的明るい緑が広がっているようですが、薄暗い緑のエリアもあります。
実際、定山渓温泉ではすでに紅葉しているようなのでなんとか現地の情報とも一致していそうな雰囲気です。
2018定山渓紅葉情報
 
さらに、北海道にいる宙畑メンバーが札幌市内の北海道大学での紅葉の状況を現地で撮影してきてくれました。

10月8日観測の北海道大学周辺の拡大図。まだ全体的に明るい緑に見えます。

Image Credit:sorabatake


10月16日に撮影された写真ですが、この日はもう紅葉しているところ、十分じゃないところとあるようですね。人工衛星の解像度がもっと高ければ、もっと詳細にそれぞれの木の紅葉の進み具合を調べることもできるかもしれません。

これから、徐々に紅葉エリアは南下していくので、また衛星が別の場所を観測したら同じように解析することができるはずなので、折を見て衛星で紅葉の状況を調べてみたいと思います(パソコンに溜まっていく衛星データの容量と相談しながら…)。

ちなみに10月24日になると北海道大学の紅葉はここまできれいに色づいていました。

Image Credit:sorabatake


(5)やってみたまとめ

解析素人ながらなんとか推測した紅葉エリアでしたがいかがだったでしょうか。

なんとかできたようにも見えますが、今回の合成画像では、川辺や海辺の近くの植生も山の植生と同じような色がついてしまっていることに気が付きました。より細かく、植生を分類しつつ、紅葉の進み具合なども見分けるにはさらに複雑なデータの掛け合わせ、現場データとの検証が必要になりそうです。

また、解析結果の画像1つを作るのに、landsat-8のバンド3、4、5、7をダウンロードし、このバンドの組み合わせから3つの画像を作り、最後にその3枚を組み合わせるという、手順がかなり多くなりました。別の場所でも新たに解析していくには、重い衛星データをサクサクと処理できるツールが必要だと感じました。実際メモリー8MBのパソコンが何度フリーズしたことか…。コードを書くことができる人であれば、コードを書いてすぐ解析できるGoogle Earth Engineのようなツールで今回やった処理を全国に当てはめて一瞬で解析することもできそうです。

ちなみに、10月25日にJAXAの人工衛星「しきさい」が紅葉を観測した結果がサイトに公開されていました。
どのように解析したのか確認したところ、今回紹介したような複雑な解析ではなく、見た目に近い色合いに合成して赤と緑の色を強調させていると記載があります。

「しきさい」が捉えた紅葉の様子

とてもシンプルな解析方法で色づきもわかりやすくなっています。色づきを見るという意味では、水分量や植生指数の計算など難しく考えなくてもよかったのかもしれませんね…。

今は、解析方法さえわかればデータの組み合わせ方や計算式を指定してすぐに解析できるデータプラットフォームも出てきています。日本でも、Tellusといったプラットフォームが生まれようとしています。

アイディア次第でいろいろなことが自分で調べられる時代が来ています。ぜひ衛星データを使ってこうしたらどうなるんだろうと試してもらえると嬉しいです。

もし解析に興味を持つ人がいればぜひ自分なりに解析をしてみてはいかがでしょうか。

参考資料※1
国立科学博物館 「紅葉」・「黄葉」のしくみ 
秋の衛星季節学におけるウェブサイト上で公開されている紅葉情報の有用性
MODIS-GRVI時系列データによる常緑針葉樹林の秋季・冬季の植物季節と成長期間の推定

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