世界最小ロケットSS-520と小型ロケットの可能性~大きさ、費用、注目企業、メーカー~

SS-520ロケット4号機 打ち上げの様子
Image:JAXA

世界最小のロケットとは

2018年2月3日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から世界最小サイズのロケットSS-520ロケット5号機が打ち上げられた。

今回打ち上げられたSS-520ロケット5号機は、もともと観測ロケットとして開発されたものである。

このような小型ロケットはどんな可能性を秘めているのだろうか。本記事ではSS-520ロケット5号機の特徴と小型ロケットの現状を紹介する。

■目次
(1)SS-520ロケット5号機の大きさは全高9.5メートル
(2)SS-520ロケット5号機の生まれた背景とこれまで
(3)小型ロケットの特徴~製造スパンと費用(コスト)~
(4)超小型衛星のTRICOM-1Rとは
(5)小型ロケットの今後の展望と注目企業

SS-520ロケット5号機の大きさは全高9.5メートル

2018年2月3日に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げた世界最小レベルのロケットSS-520ロケット5号機。

まずは、SS-520ロケット5号機とはどんなロケットなのか、JAXAの基幹ロケットと比較してみよう。

H-ⅡAロケットとSS-520ロケットの比較
Image:sorabatake

先日12/23に打ち上げられたH-ⅡAロケットは、全高53メートル・重量約300トンで、低軌道に10トンの衛星を打ち上げる能力を持つ。

H-ⅡAロケットの外観
Image:JAXA

それと比較してSS-520ロケット 5号機は、全高9.5メートル・重量約2.6トンで、低軌道に4kg程度の衛星を打ち上げる能力を持つ。

つまり、全高は約5分の1、重量は約100分の1といったコンパクトさなのである。

SS-520ロケット4号機の外観
Image:JAXA

SS-520ロケット5号機の生まれた背景

もともと、SS-520ロケットはJAXAで観測ロケットとして利用されていた。観測ロケットとは文字通り、観測を目的にしたロケットである。

読者の方は意外に思われるかもしれないが、上空100km以下の領域を観測する方法には、ロケット(もしくは気球)が利用されてきた。

今までの観測ロケットでは衛星を軌道投入する事は出来なかったが、気球が到達可能な高度より高い50km~150km程度の高度の観測がSS-520ロケットの主ミッションである。

SS-520ロケット5号機は、過去の観測ロケットを基に地球周回軌道への投入を可能にした改良バージョン

実は、昨年4号機の打ち上げが失敗してしまっており、今回打ち上げられたSS-520ロケット5号機は、そのリベンジだった。

5号機は主な性能は4号機と同様だが、4号機の打ち上げ失敗の原因であった電源ケーブル関連に細かな改良が加えられている。

また、低コストを実現するために民生品も積極的に活用しているのも特徴である。

   

小型ロケットの特徴~製造スパンと費用(コスト)~

さて、タイトルにもある通り今回のロケットは非常に小さいロケットとなっている。一般的にロケットと言うと大きなモノと思う人が多いのではないだろうか。

勿論、沢山のモノを打ち上げ可能な大型ロケットの方が良い事もある。しかし、打ち上げにかかるコストや製造にかかる期間などを考えると、打ち上げ費用が安く、製造から打ち上げまでのスパンが短く出来る小型ロケットが有利なケースもある。

参考として、ここで打ち上げ費用についても比較をしてみたい。

そもそもロケットの種類が異なるので打ち上げ可能な質量で単純比較は出来ないが、H-ⅡAロケットの低高度軌道への打ち上げ能力は10t・静止軌道に4tの打ち上げ能力である。

それに対して今回のSS-520ロケットは経済産業省からの委託業務費が4億円(※)充てられているがそれ以上の金額については明らかにされていない。

質量辺りの運搬コストで考えると、H-ⅡAロケットが約67万円/kg、一方でSS-520ロケットは約1億円/kg(仮に4億円の経費しかかっていないと仮定すると)である。しかし実際はもっと多くの経費がかかっているので、1kgあたりのコストはもっと高くなる。

※2/4(日)時点、開発費も含めた打ち上げ費が約4億円となっており訂正いたしました。

   

なぜ小型ロケットが求められているのか、実例をひとつご紹介したい。

つい最近までGoogleがスポンサーとなって月面を目指す賞金レースが開催されていたのをご存じだろうか。その名はGoogle Lunar XPRIZE。

この賞金レースには様々な国のチームが参戦しており、月面ローバーや月面着陸船を自分たちで開発し、月への困難な道のりに挑戦していた。

現在レースのファイナリストとして5チームが残っていたが、この賞金レースの勝者が出ない見込みが濃厚であるという報道がGoogle Lunar XPRIZEから行われた。

実際にファイナリストの1チームであるTeamIndusは、ローバーの打ち上げを予定していたインド宇宙機関(ISRO)のPSLVロケットの打ち上げ費用を工面する事が出来なかった事がレースを完遂出来ない理由であるという発表があった。

なぜか。インドの宇宙機関であるISROが開発するPSLVロケットの打ち上げ費用は約3000万ドル。この値段はロケット打ち上げ市場では安い打ち上げ費用であるが、TeamIndusが打ち上げたかったような小型ローバーを打ち上げるには非常に高額である。

小型ローバーや小型衛星など、小さいものを打ち上げる時は、大型衛星の横に相乗りして打ち上げてもらうシステムが主流。しかしこの相乗り打ち上げでは、目標の軌道は大型衛星に合わせたものとなってしまう。

このように、ただ安いだけでなく、行きたい軌道に小型なものを打ち上げる事を可能にするのが小型ロケットの大きな特徴なのである。

超小型衛星のTRICOM-1Rとは

今回、SS-520 5号機で打ち上げられる超小型衛星であるTRICOM-1R も、SS-520同様に民生品を活用した小型衛星となっている。

ミッションとしては、
①Store and Forwardミッション  ②地球撮像ミッション  ③即時観測ミッション
を実施する予定である。

この中でStore and Forwardミッションは、民生品を活用した今回のメインミッションとなっている。
近年はIoTと呼ばれるように、インターネットにあらゆるセンサを繋げられるようになってきた。しかしながら、インターネットに接続できない場所もまだあるのが現実である。そのような地点にセンサを配置しても、Store and Forwardミッションを通して、定期的に情報を吸い上げることができるようになるという利点がある。

また、今回の小型衛星TRICOM-1R の名称は、Store and Forwardミッションの特徴である「データをトリコム」ことから取ったと言われている。

TRICOM-1R のStore and Forwardミッション概要
Image:JAXA

小型ロケットの今後の展望と注目企業

小型ロケットベンチャー一覧
小型ロケットベンチャー一覧
Image:sorabatake

小型ロケット事業に取り組んでいる企業は世界に既に存在する。

国内では、大樹町で製造・打ち上げを行っているインターステラテクノロジズ社が該当する。昨年7月に部分的成功となった1号機の打ち上げを実施し、2号機の打ち上げも今年に予定している。

海外では、Rocket lab社のElectronロケットやVector space systems社のVector-Rロケットなどがある。

先日、3回目の打ち上げに成功したJAXAのイプシロンロケットは、4号機からIHI エアロスペースに民間移管する事がJAXAから発表された。このように、メーカーも一緒になって小型ロケットの事業に取り組む事は日本の宇宙産業の活性化に繋がると見込まれており、今後SS-520ロケットも民間移管される可能性もあるだろう。

民間宇宙産業がますます発展していくと、様々な種類のモノを打ち上げたいというニーズは一気に高まっていくだろう。大型ロケット相乗りでの打ち上げでは、打ち上げ時期も軌道も自由に選択する事が出来ない。「行きたい時に、行きたい場所へ、衛星を打ち上げたい」というニーズを満たす小型ロケット市場が、今後の民間宇宙産業を縁の下の力持ちとして支えるかもしれない。

SS-520 5号機の打ち上げ、そして今後の小型ロケットビジネスからは目が離せない。

また、小型ロケットベンチャーについては「インターステラテクノロジズの小型ロケットMOMOの先にあるもの」で簡単なまとめを行っているので、ぜひご確認いただきたい。

小型ロケットベンチャーRocket LabのElectronロケット打ち上げの様子
Image:Rocket Lab

詳しくは、こちらの記事も読んで頂きたい。
インターステラテクノロジズの小型ロケットMOMOの先にあるもの

小型ロケットベンチャーは成功するか~鍵となる3つのポイント~

ロケット開発ベンチャー企業とビジネストレンド2017

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