気候変動観測衛星「しきさい(GCOM-C)」-目的、観測項目、性能、データ利用

気候変動観測衛星「しきさい(GCOM-C)」とは~地球の彩りを宇宙から~

2017年9月14日、筑波宇宙センターで報道陣向けにある人工衛星が公開された。今年度中の打ち上げを予定するJAXAが開発する気候変動観測衛星「しきさい(GCOM-C)」だ。

気候変動観測衛星とあるように、地球規模の気候変動を宇宙から調べるための人工衛星である。

公開された気候変動観測衛星「しきさい」
Image:JAXA

※動画はこちら

「しきさい(GCOM-C)」の目的

 日本では、先月8月には東京でひと月の半分以上雨の日が続き、7月には九州北部で記録的な大雨が降った。2015年9月には北関東で鬼怒川が決壊するほどの豪雨、2014年8月には広島で大雨による土砂災害が起きた。このような激しい雨風による被害は日本に限らず地球上いたるところで毎年のように起こっている。

気候変動の影響は天気だけではない。数年前、デング熱で都内の公園が封鎖したのも、ここ数年、ウナギが高騰し食べることが難しくなってきているのも、生命の生存圏の変化や海洋環境の変化など気候変動の影響と考えられている。

一方で、すべての現象が間違いなく気候変動の影響だと言い切れるというわけではない。気候変動の要因はあまりにも複雑で、正確に把握できているわけではないのである。

そこでこの気候変動の現状を、また、今後気候がどのように変わっていくのか、それとも変わっていかないのかを調べる手段の1つして期待されているのが「しきさい」なのである。

「しきさい(GCOM-C)」の性能と調査対象

「しきさい」は19種類のセンサーを使って地球を観測する。人間の目は可視光と言われる波長の光を目が感知して地球を見ているが、可視光だけでは地球の気候を知るには十分ではない。

つまり、「しきさい」は19種類の目(センサー)で人の目で見る地球とは違う様々な“色彩(しきさい)”の地球を見ることができるのだ。

具体的には、陸地や海上に広がる植生、雲、氷の分布。地表面や海面の温度、大気中にある細かい塵の量などが「しきさい」で調べる対象だ。

これらの観測データから天気や生物に与える影響を調べることで気候変動の現状と今後の予測に活かすことができる。

「しずく(GCOM-W)」と「しきさい(GCOM-C)」の違い~GCOMプロジェクト~

しきさい(GCOM-C)の観測項目
Image:JAXA

「しきさい」には、一足先に宇宙へ行った兄(姉?)とも言える衛星がある。2012年5月に打ち上がった水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)である。

「しずく」と「しきさい」は共にGCOM(Global Change Observation Mission)というプロジェクト名を持ち、地球規模の環境変化を長期的に調べることを目的にしている。「しずく」は主に降水量や海面温度や海氷分布など水循環に関するデータを観測し、「しきさい」の観測データと補い合い気候変動の観測を行う。
※「しずく」GCOM-WのWはWater、「しきさい」GCOM-CのCはClimateを表している。

各年の北極・南極の海氷面積の変動を表したグラフ。2017年の2月、観測史上最小になったことを「しずく」が観測した。
Image:JAXA
2017年3月1日の南極域の海氷分布を白で示し、橙色の線は2000年代の同時期の平均的な海氷縁の分布を示している。
Image:JAXA

「いぶき」「だいち2号」-精度を上げる気候変動観測のデータ連携

「しきさい」と「しずく」があれば、地球上のあらゆることを調べられるように思うかもしれないが、気候変動はこれでも調べきれるわけではない。

JAXAが運用している地球観測衛星はほかにも温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」があるが、「いぶき」は二酸化炭素やメタンといった温室効果の高い気体を観測することができ、「だいち2号」は森林や海氷の分布を天候や昼夜に関係なく観測することができる。どちらも気候変動を調べるのに有効なデータを提供してくれている。

もちろん他国が運用している地球観測衛星も例外ではない。

もっと言えば、地球を観測している人工衛星のデータで気候変動に関係のないデータなどないのだ。データは多ければ多いほど、精度の高い観測結果を導き出すことができる。その貴重なデータの一つとして「しきさい」の観測データは気候変動の観測に期待されているのである。

※気候変動と人工衛星についてはJAXAのこちらにもまとめられている。
 

「しきさい(GCOM-C)」のデータ利用-気候変動、そしてビジネスへ

今後の地球の将来を知る上で欠かすことができない衛星データではあるが、気候変動を調べるためにしか使えないわけではない。

たとえば、先に打ち上げられ運用中の「しずく」や「だいち2号」の観測データはすでに気候変動以外でも利用されている。

「しずく」は、海面水温のデータから、魚がいる地域を予測し効率的な漁業を行うのに役立っている。

「だいち2号」は、地震や火山活動などの災害時の被害状況の把握のほか、違法な森林伐採の監視や、稲作の作付面積の把握などの分野での利用が広がっている。

【参考】
JAFIC(漁業情報サービスセンター)の漁業探査システム 
JICA-JAXA熱帯林早期警戒システム(JJ-FAST)の公開について
農業におけるデータ利用

「しきさい」も「しずく」と同じように漁業での利用に期待がされている他、植生や生物の生存圏の変化などの研究にも活かされるだろう。

「しきさい」のような新しい人工衛星が打ち上がり、データが増えれば増えるほど、利用の可能性は広がり、そこにビジネスチャンスも潜んでいるはずである。

今回紹介したのは「しきさい」をはじめJAXAの人工衛星であるが、これらの衛星データがより民間で利用が広がることでより衛星の利用価値も高まっていくことを願う。