宙畑 Sorabatake

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衛星開発の低コスト化に挑むボーイング社

旅客機製造で知られているボーイング社は、衛星開発についても大手。ベンチャーの波に対して、どのような動きをしようとしているのか紹介します。

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ボーイング社での衛星開発 Credit : Boeing

旅客機製造で知られているボーイング社だが、ロケット打ち上げから衛星開発、さらには火星移住のための開発にも取り組んでいる。SpaceXなどのベンチャー企業によって衛星開発にも低コスト化の波が訪れ、政府との巨額な契約を結び、利益を得ていたボーイング社の衛星開発にも、これからの新たな時代を生き延びていけるような改革が必要とされている。

ボーイング社の衛星

ボーイング社の衛星は1997年に開発され、その後改良を続けてきた702シリーズと2014年に発表され、現在開発中の小型衛星、502シリーズに分かれる。

2015年には世界で初の、姿勢制御に電気推進エンジンのみを搭載した702SP(small platform)衛星を打ち上げた。この衛星はたったの4年という、とてつもなく短い期間で研究開発が進められた。

702SP衛星の開発

これからの開発競争を生き延びていくためには、安定して運用している702衛星シリーズと同程度の信頼性を持ち、さらに軽く、安く仕上げる必要があった。

そこで研究チームが思いついた方法が上述にもある、電気推進エンジンの採用だ。姿勢制御をするために、電気の力のみによってキセノンガスを高い周期で排出することができれば、姿勢制御用の液体燃料を打ち上げ地点で補給する必要もない。電気推進エンジンを採用すれば時間と費用を節約できるのだ。

さらに研究チームは費用を節約するために衛星を空輸ではなくトラックによる陸路で輸送することにした。

さらなる低コストを目指すため、衛星のスペックも最適化された。2つの衛星で、今までの1つの衛星と同じサイズになるように、1つの衛星のサイズを半分にしたのだ。これによって、今までよりも2倍の数の衛星を一度に打ち上げることができる。さらに小型ロケットにも衛星を搭載できるようになったのだ。

他にも研究チームは3Dプリンタを使用した部品の単純化、共通部品の使用などを通して信頼性と低コスト化に挑んだ。

昨今のベンチャー企業によって衛星も低価格競争が始まったが、これまでのノウハウを生かし、これからの衛星開発での活躍が楽しみなボーイング社である。

今週の英語フレーズ

“We had a manufacturing engineer on the team, with experience in planes, not just satellite,” said Peterka. “So we looked at the supply chain early on, and found ways to reduce part counts, and get assemblies more complete.”
「我々のチームは衛星だけではなく、航空機開発の経験を持つ人もいた。そのため、我々は早くから流通ルートに着目し、部品数を削減し、組み立て部品を完成させる方法を発見した。」

出典元

2017/06/17, Boeing: Space Overview,
http://www.boeing.com/space/
2017/06/17, Tech Crunch, Boeing wants to turn satellites into a cheaper, highly-automated business,
https://techcrunch.com/2017/02/21/boeing-wants-to-turn-satellites-into-a-cheaper-highly-automated-business/
2017/06/17, Forbes, Boeing Innovates Team To Produce New Satellite,
https://www.forbes.com/sites/jonathansalembaskin/2016/04/04/boeing-innovates-team-to-produce-new-satellite/#69da5257b97e

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