衛星通信サービスベンチャー企業とビジネストレンド2017

宇宙開発は国家機関がやることだと思われがちですが、近年では民間ベンチャー企業が数多く起業し、宇宙ビジネスが盛んになってきています。特にアメリカでは、シリコンバレーを中心に宇宙ベンチャー企業が多く揃っています。

前回の記事ではアメリカを中心とした海外の注目宇宙ベンチャーを宙畑がピックアップ、概要を紹介しました。今回から3回に分けて、前回紹介しきれなかった企業について詳しく解説していきます。

まとめ:宇宙×ベンチャー企業一覧2017 アメリカ編
第一回:ロケット開発&打ち上げサービス事業のビジネスモデルと主要企業
第二回:衛星による通信サービスを提供するベンチャー企業
第三回:衛星によるリモートセンシングをサービスにするベンチャー企業

今回は第二回:衛星による通信サービスを提供するベンチャー企業を詳しく紹介します。

衛星による通信サービスのトレンド

 日本では衛星通信と言われてもあまりピンときませんが、この業界が今、大きく動こうとしています。アフリカや南米などを中心に世界にはまだインターネットにアクセスできていない人が30億人いると言われています。この30億人が衛星を介してインターネットにつながることで、新たなビジネスチャンスが生まれると考えられ、GoogleやfacebookなどIT企業がこぞって投資を行っています。

近年の低軌道衛星による通信サービスには大きな利点が3つあります。

(1) 世界中に通信ネットワークを提供できる

 従来の通信衛星は静止軌道と呼ばれる軌道に投入されていたため、地上のある範囲のみに通信環境を提供していましたが、低軌道に投入されることで今まで衛星通信サービスを享受できなかった地域(海上など)に通信環境を提供できます。

(2) 時間遅れが小さい

 従来の通信衛星は、静止軌道と呼ばれる地球から3万キロ離れた軌道を周回していたため数秒の時差が発生していましたが(海外とのTV中継など)、新しいサービスでは高度1000キロほどの低軌道に投入するためこの時差が小さく、投資など数秒の差が大きな利益を生む市場に需要があるといわれています。

(3) 地上側の端末が小さくできる

 通信衛星と地上の距離が小さいため、お互いに発信する電波の強さが弱くても受信ができるようになります。つまり、衛星からの電波を受けるための地上側の端末が、従来よりも小さく安くできるのです。例えば、山岳地帯で工事をしている重機などにも搭載でき、IoTのネットワークとして機能します。

衛星による通信サービスの主要ベンチャー企業

衛星による通信サービスの主要ベンチャー企業を紹介します。

◆OneWeb

会社URL: http://oneweb.world/#home
2016年12月にソフトバンクが10億ドルの出資を決めた衛星通信サービス会社。ソフトバンクの他にもコカコーラやボーイング、米半導体大手Qualcommなども出資を行っています。2018年までに648基の衛星の衛星を打ち上げて、地球規模にインターネット環境を提供する計画でしたが、ソフトバンクの投資を受けて、さらに2,000基の衛星を追加することを決めました。

地球をたくさんの衛星で覆い、通信網を形成する
Image Credit: OneWeb

◆SpaceX

会社URL: http://www.spacex.com/
SpaceXは将来的な人類の火星移住計画の資金源として、衛星通信サービスの提供も計画しています。数千基の衛星を打ち上げ、地球規模にインターネット環境を提供します。Googleが米資産運用大手Fidelityとともに10億ドルの出資を決めています。

◆O3b

会社URL:https://www.o3bnetworks.com/
O3bとは、『Other 3 Billion(残り30億人)』の略で、中軌道の衛星群から通信サービスを提供します。OneWebの創始者であるグレッグワイラーによって設立された。2013年に最初の4基が打ち上げられ、最終的には2019年までに20基の衛星群を構成する予定です。

O3bが提供する衛星群による通信サービスイメージ
Image Credit: O3b

◆Orbcomm

会社URL:http://www.orbcomm.co.jp/index.html
低軌道周回衛星を利用した衛星通信サービスを提供している通信事業者。
専用の通信端末とアンテナがあれば山岳地、海上などの通常のインフラが整備されていない場所でも通信が可能になります。例えば山岳地に設置された多数の設備・計測機器や、車両・ 船舶などにオーブコム通信端末を接続することにより、位置情報(位置情報はGPS衛星から取得します)や稼動情報、計測器のデータなどを送ることができ一元管理が可能になります。

Orbcommが提供する衛星通信サービスイメージ
Image Credit: Orbcomm

◆Iridium Next

会社URL:https://www.iridiumnext.com/
衛星電話を運営するイリジウム社は2016年12月、次期計画として、Iridium Next計画を発表しました。バックアップを含めて、81基の衛星で地球を覆い、地球上のあらゆる場所で衛星通信を可能にする計画です。

Iridiumが投入する衛星
Image Credit: Iridium

日本でも、衛星との通信を利用したサービスを提供している会社があります。

◆マゼランシステムズジャパン

会社URL:http://www.magellan.jp/
超高感度・高精度衛星測位システムを提供しています。病院など施設内での電動車いすやフォークリフトの位置管理、自動運転や、産業機器、農業機器などの自動運転に応用されています。

衛星による高精度な測位が農業機械や建設機械の自動運転に適用できる。
Image Credit: マゼランシステムズジャパン

衛星通信ビジネスのまとめと今後の展望

低軌道衛星による通信ビジネスは、実は90年代にも一度盛り上がり失敗した歴史があります。
アメリカのMotorola社がイリジウム計画として、地球低軌道に77基の衛星を打ち上げ、衛星携帯電話通信システムを構築するというものでした。衛星は計画通り打ち上げられましたが、地上端末が高価であったため顧客を集めきれませんでした。

失敗から20年近くが経過し、人工衛星の小型化・低価格化および世界規模でのインターネットの広まりを受けて、また再び低軌道衛星による通信ビジネスが起ころうとしています。

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第一回:ロケット開発&打ち上げサービス事業のビジネスモデルと主要企業
第二回:衛星による通信サービスを提供するベンチャー企業
第三回:衛星によるリモートセンシングをサービスにするベンチャー企業
宇宙×ベンチャー企業一覧日本編2017

※本記事は2017年5月5日時点での情報を元に作成しました。

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