「日本の文化に魅かれた」「実機がある」2人のアメリカ出身エンジニアがElevationSpaceで働く理由
大学卒業後から日本で働くCodyさんと、NASAでのキャリアを積んでから日本で働くCalvinさんのお二人は現在、日本で大気圏再突入機を開発するElevationSpaceで活躍中。日本を選んだ理由と、ElevationSpaceでの実際の働き方や今後の期待について伺いました。
日本の宇宙企業で働く海外出身の人材に焦点を当てたインタビュー連載「Global Talents in Japan’s Space Companies」。第2回にお話を伺ったのは、大気圏再突入技術を手がける宇宙スタートアップ・株式会社ElevationSpaceで働く、CodyさんとCalvinさんです。
今、日本の宇宙産業は官民ともに急速に拡大局面にある一方で、宇宙人材の不足が課題としてあがっています。そして、宇宙産業の拡大は国内にとどまらず、国際競争が激化するなか、共創もより重要な時代となっています。そのようななか、数ある国や企業の中から「日本で働くこと」を選んだ海外出身の方が、日本企業で多く活躍されています。
本連載「Global Talents」では、海外の方から見て、日本の宇宙産業・日本企業はどのように見えているのか。また、実際に働いてみてどのように感じられているのか、お話を伺います。
本記事が海外の読者に向けて「日本の宇宙ビジネスで働く」という選択肢を具体的にイメージできる一助となりましたら幸いです。
今回お話を伺ったCodyさんはカリフォルニア州の出身。UC Davis(カリフォルニア大学デービス校)で航空宇宙工学を学び、卒業後そのまま来日して4年目になります。現在は衛星の軌道設計と、大気圏再突入のシミュレーションを担当しています。
Calvinさんはニュージャージー州の出身。Rutgers University(ラトガース大学)で機械工学を学び、NASAのゴダード宇宙飛行センターで3年半、衛星運用に携わったのち来日。現在はミッションインテグレーションとして、打上げ契約を行ったロケット企業と自社衛星のつなぎ込みを担当しています。
まったく違う経路をたどってきたお二人が、ElevationSpaceで働くに至る背景には、共通点もありました。そして、社員のほとんどが日本人、会議も日本語がメインという環境で、お二人がどのような業務を担い、ご活躍されているのか。本記事でたっぷりとご紹介します。
(1)「冒険として、すごい面白いと思って」カリフォルニアとニュージャージー、二人が日本にたどり着くまで
宙畑:本日はよろしくお願いします。まずはCodyさんから、ご出身と大学時代の専攻を教えてください。
Cody:カリフォルニア州の出身です。大学はカリフォルニアのUC Davisで、航空宇宙エンジニアリングを専攻していました。大学院には行かず、大学を卒業してから、直接日本に来て働き始めました。
宙畑:来日前、日本についてはどの程度ご存知だったのでしょうか。
Cody:正直なところ、日本のゲーム(特にダークソウルが好きとのこと)が好き、ということ以外はあまり詳しくありませんでした。ただ、アメリカでも日本の文化は全体的に人気で、ご飯も好きでしたね。
宙畑:日本以外の選択肢もあったのでしょうか。
Cody:ドイツの大学院に入るという選択肢もありました。
宙畑:最終的に日本を選んだ決め手は何だったのでしょう。
Cody:そうですね。言語を知らない国に行って、全く違う文化を味わってみたいという思いが強くありました。そう考えると、日本はアメリカから非常に遠い場所にあり、文化が真逆で、詳しく知らなかったので「冒険として、すごく面白い」と思って、日本に行くことを決めました。
宙畑:知らないからこそ面白い、というのは、非常に好奇心が強い方の発想ですね。Calvinさんはいかがですか?
Calvin:私はアメリカの中でもCodyさんと反対の地域で、ニュージャージー州出身です。ニューヨークの近くで、電車で1時間で行くことができます。大学もニュージャージー州のRutgersという大学を卒業して、機械工学を専攻していました。
宙畑:航空宇宙も学ばれていたのでしょうか?
Calvin:そうですね。航空宇宙のクラスもいくつか取り、インターンシップでも、航空宇宙の経験があります。
宙畑:卒業後は、Codyさんと同様にそのまま日本に来られたのでしょうか。
Calvin:いえ、私は、大学卒業後の3年半はアメリカで働いています。
宙畑:アメリカの会社は宇宙系の会社だったのですか。
Calvin:NASAでした。メリーランド州にあるゴダード宇宙飛行センターです。私が入社した際には、すでに決まったミッションがあり、衛星の運用や異常が出た際の問題解決を主な業務として行っていました。そのため、ミッション設計や衛星設計に関する仕事はなく、チャレンジしたいという思いで日本に来ました。
宙畑:転職先として、日本以外の国も見られたのでしょうか。
Calvin:日本のみでした。子どもの時に、日本のゲームやアニメにすごくハマっていて、非常に印象に残っていました。ポケモンやファイナルファンタジーなど、いろいろやりましたね。
また、新型コロナウイルスが流行する直前に、日本に旅行したことがあり、非常に良い思い出があって、また戻りたいなと思いました。
宙畑:日本で働くとなると、旅行とはまた違う不安もあるのではないかと思う気がしますが、特に心配はありませんでしたか?
Calvin:個人的な経験ですが、JAXAのワシントン駐在員事務所所長だった小野田勝美さんという方に、すごくお世話になりまして。それも日本に来た1つの理由です。もう一度日本で会えたらいいと思っています。
宙畑:どういうきっかけでお会いになったのでしょう。
Calvin:仕事に関係ない話ですが、私以外は全員日本人のテニスグループがあり、そこで出会いました。日本の皆さんが定期的にアメリカに来て、一緒に働いて、一緒にテニスして……という形で、とてもお気に入りのコミュニティでした。そのおかげで、私は日本に行きたい、という思いが芽生えました。
(2)最初に就職する企業はどうやって見つけた?転職先の見つけ方
宙畑:お二人は日本で最初に働かれる会社は、どのように見つけられたのでしょうか?
海外から日本の企業を探すのは、簡単ではないように思います。
Cody:偶然でした。大学生時代に、電気飛行機(eVTOL:電動垂直離着陸機)の開発と設計の、NASA発のプロジェクトに参加していたことがあり、そのプロジェクトでは私がいたチームが優勝したこともあり、電気飛行機系の会社なら何か入りやすいかなと思っていました。
世界中にいくつかあるなかで、日本にも複数のスタートアップがあって、内定をいただくことができたので入社しました。
宙畑:ご自身で探して、声をかけられたんですね。
Cody:そうですね。小さいスタートアップなので、あまりPRはされていなかったのですが、たまたま飛行機の写真を見た企業名をGoogleで検索して、「ああ、こういう会社なんだ」と思って。また、「英語で大丈夫」とも書いてあったので申し込んでみました。
宙畑:Calvinさんはいかがでしたか。
Calvin:LinkedInと、あとは宇宙系スタートアップをGoogleで検索して、直接そのサイトに応募する形でした。
宙畑:お二人ともに、日本で別の企業で働かれた後にElevationSpaceに転職されたという点では共通しています。日本の宇宙スタートアップは、今だいたい100社ほどあると言われているなかで、転職されるときは、どのように探されたのでしょうか。
Cody:日本の宇宙系って、結構スタートアップが多くて、ほとんどエージェントを使っていますね。宇宙系に興味があって働こうとしたら、何回もエージェントとか、そういう転職サイトとかと相談しながらする形になりますね。
宙畑:どちらのエージェントを使われたのですか。
Cody:正直、忘れてしまいました(笑)。本当にたくさんのエージェントから連絡をいただきました。今は宇宙系の転職市場が非常に活発で、大きく拡大しているので、本当に人気ですね。
Calvin:転職する際に、いろんな会社に応募してみました。アメリカで転職しようとしたときよりも良い返事を多くいただけたように思います。
(3)「技術的な質問と対話が面接であり、会社の文化もフィットした」ElevationSpaceを選んだ理由
宙畑:転職にあたって、ElevationSpace以外の選択肢もありましたか?
Cody:転職活動中は、面接してみて「これは違うかもしれない」とか思った会社も少なくありませんでした。スタートアップって、面接してみないと、どういう文化があるか、どういう感じなのかって分からないので、その点も難しいです。
宙畑:面接では、どのようなポイントを重視されていたのでしょうか?
Cody:ElevationSpaceの面接の時は、技術系の質問が多かったですね。技術系の質問と、あとは会社の文化がフィットするかという質問が多く、それは良い印象になりました。
あるスタートアップの面接では、ほとんど技術的な質問を聞かれない、ということがあって。そうすると、技術的な知識をこの会社が持っているかどうかが分かりません。おそらく、他のメンバーもそのような面接をされていると思うと、働いている人がどんな方なのだろうかと疑問を持ってしまいます。
宙畑:ご自身の技術がどこまで評価されているのか分からないまま入るのも怖いですし、実際に同僚となる方の技術レベルも不安になってしまうということですね。
宙畑:Calvinさんは、ElevationSpaceに入社する前に様々な企業を受けられたということでしたが、何を重視されていましたか?
Calvin:私は、エンジニアの仕事に集中するか、ビジネス系の仕事に集中するか、もしくは半々か……という迷いがありました。実際に、100%衛星運用のポジションのオファーをいただいた別の会社もあったのですが、結局断ることにしました。
宙畑:一度経験のある衛星運用に戻るという道もあったなかで、断られたのですね。
ElevationSpaceの面接はどのような印象を受けましたか?
Calvin:初めての面接は、日本語でした。それまで日本語を使う機会があまりなくて、頑張りますと回答しました。
日本語の面接で良かったのは、上司となる方が自分が考えていることを、通訳や翻訳などを介さずに直接私に伝えてもらえる形だったことです。
宙畑:日本語で面接をされたことが、かえって歓迎されていると感じられたのですね。
ElevationSpaceは大学発スタートアップで、創業者であり、代表の小林さんは、技術のバックグラウンドを持っている方です。技術者出身の経営者の下で働くかどうかは、意識されるものでしょうか。
Cody:最近のアメリカの航空産業を見ていると、ビジネス系の人がマネジメント層に増え、品質が落ちてしまっているケースも見かけます。エンジニアとしては、エンジニアリングの知識を持っている人の下で働きたいという思いは強いです。
Calvin:私も同意です。エンジニアの知識を持っている人が、会社の方向性を決める人になっていてほしいと思います。
(4)「実機を打ち上げるきっかけがなかった」二人が揃って挙げた、ElevationSpaceには実物がある強み
宙畑:数ある宇宙スタートアップのなかで、ElevationSpaceに面白さを感じられたポイントはどこにあったのでしょうか。
Cody:私にとっては、より早く現実性を持って業務に向かえるというのはポイントでした。
前職が宇宙輸送系の企業だったのですが、夢としてすごく面白い技術である一方で、(十分な資金を集めることができなければ)実機を作って実際に打上げる機会がないということもありました。衛星であれば、より早く自分が開発に携わったものの打上げができる。そう考えると、衛星系で、面白いプロジェクトは何かと考えたときに、再突入技術を開発するElevationSpaceに入社したいと思いました。
宙畑:Calvinさんも、決め手は近いところにあったのでしょうか。
Calvin:Codyさんと同じように、実物を作ること、実物があることは重要なポイントでした。また、NASAでの仕事では、すでに決まったミッションの運用をしており、設計に関われませんでしたが、ElevationSpaceでは、ロケットに搭載するための設計にも携われます。そのような経験ができるという点でも非常に良い選択だったなと考えています。
宙畑:実際に「実物がある」と感じられた場面はありましたか。
Cody:福島南相馬市にある工場に行った際に、「あ、ハードウェアがある!」と感動しました。
Calvin:私も工場で実物を見て、すごいと思いましたね。
Calvin:前職の企業では、組み立て済みのものは見ることが叶いませんでした。
Cody:ベーパーウェア (vaporware)とも言いますが、概要やCGが発表はされたものの、相当の資金が集まらずに開発がなかなか進まないというのは、特に予算が多く必要な宇宙企業においてその傾向があると思います。
宙畑:その点、小林社長が技術系のバックグラウンドの方であることで、ものづくりの進むスピードが速かったのでしょうか。
Cody:速かったですね。会社の創業時についてそこまで詳しくはありませんが、早い段階からハードウェアの開発が始まっていたのではないかと思います。
(5)アメリカと日本、宇宙業界の見え方はどう違うか
宙畑:日本の強みを感じるポイントは、これまでにありましたか。
Cody:日本の強みのイメージとしては、信頼性ですね。日本はしっかり、着実に開発するというイメージが強くあります。
宙畑:Calvinさんは、日本の宇宙産業にどういう印象を持たれていますか。
Calvin:Codyさんと同様に、ものづくりの話であれば、宇宙業界に限らず、自動車業界のように信頼性が非常に高い印象を持っています。
宇宙に関しては、私はもともとアメリカでキャリアをスタートしましたが、当時は宇宙産業というと、大きく資産を形成した人や宇宙系のファンドがスタートアップを盛り上げていました。
一方で、日本に来るとその印象は少し変わり、JAXAや三菱重工といった大企業が強い印象を持っています。そこに宇宙スタートアップが出てきて、追いつこうとしていますが、時間をかければしっかりとキャッチアップできるのだと思います。
宙畑:技術力の面では、時間をかければ追いつけそうだ、と。何がその鍵になるとお考えですか。
Calvin:例えば、ElevationSpaceの藤田さんはもともとJAXAで小惑星探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」や、次世代型無人宇宙実験システムの再突入モジュール(USERS/REM)の開発に従事し、また大気突入・着陸・回収(EDL&R)の技術開発をリードしていた方です。
このような素晴らしい方々のノウハウをもっとスタートアップにも取り入れることが重要です。
宙畑:宇宙戦略基金でElevationSpaceは「高頻度物資回収システム技術」の技術開発テーマで採択されています。これは資金的にももちろん重要ですし、JAXAからのサポートがあるという点も非常に重要なのだなとあらためて実感しました。
(6)「この人、マジですごい人だな」日本が蓄積した技術を継承するために
宙畑:ここからは具体的なお仕事の話を伺わせてください。Codyさんは、軌道の計算と、再突入するときの姿勢制御がメインのお仕事だと伺いました。
Cody:そうですね。軌道の設計・開発、あとはシミュレーションも担当しています。また、軌道設計の一部として、再突入カプセルの姿勢、安定性も含めて計算しています。さらには、誘導制御ソフトウェアの開発も担当しています。
宙畑:シミュレーションで求められる姿勢制御の精度を決めて、ハードウェア側に「このくらいの精度の部品を調達・開発してほしい」と依頼する側にもなるのでしょうか。
Cody:例えば、RCS(姿勢制御スラスタ)の取り付け角度が、こういう誤差なら許容できるけど、これより大きな誤差があれば、こういう心配になる可能性があるという解析もできます。
宙畑:ある意味、設計そのものにも関わってくるわけですね。あおばが、Codyさんにとっても初めての再突入シミュレーションになるのでしょうか。
Cody:そうです。その上で、あおばのために開発したものを、今後すべての衛星に共通して使えるようにしようと試みています。ElevationSpaceの鍵となる技術ともいえる再突入の解析がメインなので、非常に重要なミッションです。
宙畑:日本の民間企業では初めてのチャレンジだと思います。ノウハウは、ご自身で組み上げていくのか、それとも教えてくれる方や論文があるのでしょうか。
Cody:論文はいくつかありますが、ぴったりなものはあまりなく、自分で探すものが多かったですね。
あとは、CTOの藤田さんにいろいろ質問をして教えてもらって、必要な知識を身に着け、業務を進めることができました。
宙畑:はやぶさの再突入カプセルを開発された方から直接教えていただけるのは、うらやましいですね。印象に残っている会話はありますか。
Cody:一番印象に残っているのは、再突入シミュレーターに関して話をしていた際に、どうやって安定しながら再突入できるかという技術的な説明をしてもらった時に「あ、この人、マジですごい分かる人だな」と思いました。それで「ここに入ってよかった、いろいろ知識を増やせるチャンスだな」と強く思う出来事でした。
宙畑:藤田さんとの会話は日本語ですか?
Cody:藤田さんはすごく英語が上手なのですが、僕は必ず日本語で話すようにしています。
宙畑:どのくらいの頻度でお話されているのでしょう。
Cody:週1回、2回の頻度ですね。最初の頃は、ElevationSpaceに入社してから、すぐに再突入のシミュレーターを作るっていうタスクについての会話で、現在は再突入の解析方法やシミュレーションツールの開発も完了間近になっており、ツールの使い方と解析の結果の話が多くなりました。
宙畑:シミュレーションの結果は、実際のミッションでも「想定通りに来ているか」を確認する上で重要な数値ですね。
Cody:シミュレーターの一番難しいところかもしれませんが、実際に再突入したことがまだないから、検証できる情報がありません。今はとにかくしっかり開発するしかないですね。
宙畑:どうしても「百発百中で成功させねばならない」というプレッシャーもある一方で、宇宙事業にチャレンジする企業としては失敗のデータを蓄積していくことも重要だと考えています。開発する側として、理想のチャレンジの頻度はありますか。
Cody:あればあるほど嬉しいですね。週1回できたらいいなとは思います。ただ、そのような頻度って、実は衛星の問題よりもロケット側の問題なんですよね。
宙畑:ありがとうございます。海外では徐々にロケットの打上げ回数も増えているので、ElevationSpaceの衛星の需要が増え、打上げ頻度もますます増えると良いですね。
続いてCalvinさんのお仕事について教えてください。ロケットと衛星の接合を担当されていると伺いました。小型のキューブサットであれば、Exolaunchのような、一定の仕様にのっとった衛星を渡せば、ロケット企業との調整までやってくれる会社もあるかと思うのですが、あおばの場合は、ロケット会社と対話をしながら作っていく形になるのでしょうか?
Calvin:あおばの場合は、衛星のサイズがキューブサットと比較して大きいため、分離機構も大きいサイズの物が必要になり、Exolaunchのような仲介役を担ってくれる会社であっても、いくつか調整が必要で、私が調整に入っています。
宙畑:難しいのはどういう部分でしょうか。衛星の設計側に「こう設計すればいい」という決まりがないからこそ、調整が必要になるのでしょうか。
Calvin:そうですね。分離機構をきちんと取り付けるために、衛星の一番下の部分のパターンを、分離機構に合わせる必要があります。
宙畑:今、一番時間を使われている課題は何でしょうか。
Calvin:タイムラインによりますが、現状はあおばの次に打上げる衛星の調整も並行して行う必要があり、それを合わせるのは課題のひとつです。
また、現状私が調整をメインで進めているのは、射場安全です。ロケット側の射場安全の要求として、衛星を渡す時に、安全なものなのか、事故になる可能性はないかをしっかりと確認する必要があり、社内外で調整を行っています。
宙畑:射場安全というのは、あおばに積んでいる燃料が有毒なものかそうでないかといった内容でしょうか?
Calvin:まさに、どのような燃料を積んでいるのか、火薬が暴発する可能性がないかといった内容です。
その後も、ロケット企業と打ち上げに向けての調整や、(衛星を)積む時に、どこに搭載するか……などの調整を進めています。
宙畑:思っていたよりかなり幅広い業務内容ですね。ロケットに衛星を搭載するための技術的な理解を持って社外調整を行うと言っても、さまざまな関係者がいらっしゃり、さまざまな確認ポイントがあるのですね。
チームは何名ほどなのでしょうか。
Calvin:ミッションインテグレーションチームは、私を含めて3人です。1人は我々の衛星の顧客に向けて、調整を行い、私の上司の星川さんは外部インタフェース全般として事業開発と技術開発両方の観点で幅広く業務を行っています。
宙畑:宇宙業界は1つのプロジェクトに5年、10年かかることも多いなか、入社して1年という期間はまだ短いのかなと思いますが、この期間のなかで「この仕事ができてよかった」と思われた瞬間はありましたか。
Cody:あおばはそろそろ打ち上げ予定なのですが、入社した時は本当にクリティカルな期間でした。再突入のシミュレーションをできるようなチャンスは、本当にタイミング良くて、あおばが成功したら、すごく誇りに思えると思います。
Calvin:私の場合は、入社した約3カ月後に、分離機構の会社とのフィットチェックが行われて、無事に成功しました。その計画書は同僚と協力しながら作成できたのですが、3カ月でここまで調整できたというのは非常に嬉しかったです。
(7)「責任を持って進められる仕事が多い」任される速さと、日本語で回る職場のリアル
宙畑:ElevationSpaceに転職されてよかったと思うポイントを、それぞれ伺えますか。
Cody:企業文化は素晴らしいと思います。良い意味で自由があって、自分が参加したいプロジェクトに携わるチャンスがあります。そのうえで、しっかりとプロジェクトが進められており、成功する会社になってきていると思います。
宙畑:自由にできるというのは、シミュレーションを任せてもらえる、ということでしょうか。それとも、Codyさんからの提案が通りやすい、ということでしょうか。
Cody:どちらもありますね。例えば、シミュレーションの開発や解析の結果を信用してもらえること。また、問題を見つけて、提案を出したら、真剣に一緒に考えてくれる。積極的に参加している人は、任せてもらえる企業文化です。
Calvin:私も、良い意味でかなり業務を任せてもらっていると思います。
ロケット企業や分離機構の企業、射場の管理企業など、私が直接の窓口として対応しています。私はそこまで日本語が上手ではないのですが、ここまで信頼してくれると嬉しく思います。
宙畑:徐々に任せられる範囲が増えていったのでしょうか。
Calvin:かなり早く任せてもらえたなと思います。私はそもそも、前の前の仕事は100%技術でして、ビジネス系の仕事はまだ2年も経験がありません。最初は上司から「こういう感じで調整してください」と言われたこともありましたが、最近は、私が分からないものを上司に聞かない限りは、任せていただいているなと思います。
宙畑:Codyさんからは積極性というお話もありましたが、仕事を任せてもらう上で、意識されていることはありますか。
Cody:私は技術系の業務なので、まずは自分の結果や解析方法が正しいものであることを示す必要があります。きちんとした人だと思ってほしいので。
例えば、論文の結果と自分の解析を比べたり、使っている方程式を検証できたり……ということを示さないと、任せてもらえない、ということが大前提です。
また、問題の解決の対策を提案している場合は、自分の考えがいいことを示せるような証明が必要ですね。
宙畑:最初の1〜2カ月で、そういった解析結果を示されたのですか。
Cody:もちろん、最初の1カ月、2カ月目ぐらいは、自分の能力を示すのは難しいですね。まだいろいろ悩んでいる部分もありますが、私が能力を示せたのかなと思ったのは、再突入シミュレーションを作っている時に、藤田さんと話しながら「これはそうじゃない」と指摘したり質問したりしたことです。やはり、積極的に参加しないと、いい仕事にならないかなと思いますね。ただ待って、上司から「こうして」っていう指示を待つだけだったら、任せてもらうことはないと思います。
宙畑:Calvinさんは、上司の星川さんに対して何をアピールできたとお考えですか。
Calvin:英語かもしれません。例えば、ロケット企業とのミーティングで、入社して約2週間経過したところで「ミーティングの半分を担当して欲しい」と任せてもらいました。
環境条件やロケットの打上げのタイムラインはElevationSpaceに入る前にも経験があったので、それは役に立ちました。
宙畑:社内の会話は基本的に日本語と伺っていますが。言語によって仕事の進めやすさ、進めにくさを感じることはありますか。
Cody:私は日本語で働くことに慣れているから、個人的にはハードルを感じていません。ただ、他の海外出身メンバーはハードルを感じることもあると思います。
Calvin:私はまだ難しいと感じることがたまにあります。「こういうことをやりたい」という指示とか、ネクストアクションをいただいた際に、意図がはっきり分からないと、アウトプットが違うものになってしまう可能性があります。
そのため、たくさんの質問を聞くようにしています。「すみません、この意図でしたか?」と、問いかけており、これは非常に大事だと思います。
宙畑:質問をすれば、しっかり返ってくる文化なのでしょうか。
Calvin:星川さんがすごくいい人で、「あ、これはこうでした」みたいな。親切に答えてくれます。
宙畑:連載の第1回では、Synspectiveさんで、海外出身の方が多くいらっしゃるなかで、みんなでインドネシアレストランに行くといったお話がありました。海外の方と文化を学ぶような時間はあるのでしょうか。
Cody:“Free English Club”という週1回、1時間ぐらい、英会話に興味を持っている人と話す時間があります。
(8)「自分が頑張ると、相手もきっと頑張ってくれる」日本の宇宙企業で働きたい方へ
宙畑:今後、ElevationSpaceという会社自体がどう成長していくことを期待されているか、伺えますか。
Cody:SpaceXのStarshipと戦えるようなものを作りたいですね。そして、頻度も増えてほしいです。
また、有人カプセルも開発してみたいですね。現状、唯一、SpaceXだけが進んでいる感じを打破する1社になりたいですね。
Calvin:会社的な成長について、Codyさんの話も重要ですね。そのうえで、もっと知識・経験がある方に会社に参加してもらい、より大きなプロジェクトを進められるようになることを期待しています。
別の観点では、衛星以外の仕事もできるとよいかもしれません。例えば、部品の開発と供給です。Rocket Labの動きを見ると、衛星バスも開発しており、ひとつの事業に依存せず、さまざまなポートフォリオを持っています。
宙畑:そのうえで、お二人ご自身は、どういう役割を担うことを理想と考えられていますか。
Cody:個人的には、マネジメントではなく、技術のプロフェッショナルとして、技術を磨いていきたいと考えています。
Calvin:難しいですね。私はまだ模索中で、毎日考えていますが、こうなりたいという明確な答えは現状ないですね。
宙畑:ElevationSpaceにいることで成長できそう、という思いは、持たれていますか。
Calvin:それはあります。私の場合は、技術的な観点以外の成長が多くありました。日本語ももちろんですが、プロジェクトの全体像を見ながら、次のアクションを自分で決めるということの繰り返しは成長を実感しています。
Cody:そうですね、事業の構想を現実にできている、そして自分の成長を感じられることがElevationSpaceを選んで、続けて働いている理由です。
宙畑:最後に、これから日本で働きたいと考えている海外の方に向けて、メッセージをいただけますか。
Cody:日本語を勉強し始めた方がいいです。仕事だけじゃなくて、日本に住みたいなら、自分の人生が楽になります。しかも楽しいですね。
宙畑:その楽しさは、どこにあるのでしょうか。
Cody:全体的に楽しいですね。生活が楽で、ご飯も美味しい。私の場合は自分の出身ではない国に住んでいること自体が、毎日が面白いと思えますね。
とはいえ、もう4年住んでるから、そんな感じは結構なくなったんですけど、私が日本語を話し出して、誰かをびっくりさせることとか、面白く思えますね(笑)。
Calvin:そうですね。まずは実物が作れる会社を見つけてほしいです。例えば、ElevationSpaceです。
また、Codyさんが話された通り、日本語は勉強しなければなりません。自分が頑張ると、相手も頑張ってくれます。
ぜひ、日本の企業、ElevationSpaceに来てほしいですね。
(9)ElevationSpaceの求人情報
現在、ElevationSpaceではいくつかの職種で求人が募集されています。ぜひ採用ページをのぞいてみてください。

