再使用型カプセルでISS往復へ。欧州の宇宙輸送企業TEC、約4億5,000万ドルを調達【宇宙ビジネスニュース】
2026年9月8日、欧州の宇宙輸送企業The Exploration CompanyがシリーズCラウンドでの資金調達を発表しました。調達額は4億5,000万ドル(約702億円)で、累計調達額は約6億8,000万ドル(約1,060億円)です。資金は宇宙ステーションとドッキング可能な再使用型カプセル「Nyx」と高推力ロケットエンジン「Storm」に充てられます。
2026年9月8日、欧州の宇宙輸送企業The Exploration Company(以下、TEC)がシリーズCラウンドでの資金調達を発表しました。調達額は4億5,000万ドル(約702億円)で、累計調達額は約6億8,000万ドル(約1,060億円)です。
資金は宇宙ステーションとドッキング可能な再使用型カプセル「Nyx」と高推力ロケットエンジン「Storm」に充てられます。
TECは2021年、宇宙企業であるAirbus Defence and SpaceとArianeGroupで要職を経験したエレーヌ・ユビー氏と、航空宇宙業界の経験者チームが設立した企業です。
再使用型カプセルから高推力エンジンまで、宇宙輸送に関わる技術を開発しています。欧州・米国・UAEに拠点を持っています。
TECが引き続き当面の最優先とするのは、Nyxの開発です。これはさまざまな種類のロケットで打ち上げ可能な再使用型の宇宙船で、宇宙ステーションへ貨物を運び、安全に地球へ持ち帰ることができる設計です。
今後予定されている実物大の軌道実証では、ISSへのドッキングおよび地球への帰還を目指します。将来的には人員輸送にも対応させる構想です。
次の柱がStormの開発です。CNESやDLRといった欧州の宇宙機関の協力も得ながら開発しているStormは、酸素とメタンを推進剤とし、全流量二段燃焼サイクルを採用した再使用型の高推力ロケットエンジンです。
宙畑メモ:全流量二段燃焼サイクル
燃料側では少量の酸化剤を、酸化剤側では少量の燃料を混ぜて、それぞれプリバーナー(小さい燃焼室)で燃焼させ、生じたガスで各ターボポンプを駆動するロケットエンジンの燃焼サイクル。この仕組みにより、タービン温度を抑えて長寿命化を図れます。また、シール部で燃料と酸化剤が混ざることによる故障リスクを低減でき、信頼性の向上にもつながります。
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Stormは、将来の再使用型で低コストな欧州の超大型ロケットの推進基盤となり、開発予定のロケットでは低軌道に最大40トンを運ぶことを目指しています。今回の資金により、同社は一連の試験を段階的に実施する予定です。
TECの契約・受注は20億ドル(約3,120億円)以上に達しており、公共部門と民間部門にバランスよく分かれています。顧客には欧州宇宙機関(ESA)や商業宇宙ステーション向けの貨物物流契約が含まれます。
リリースによると、同社はNASAとSpace Act Agreementを結んだ欧州初の宇宙スタートアップでもあるとのこと。今回の調達の背景には、このような同社の実績があります。
宙畑メモ:Space Act Agreement
NASAが「その他の取引権限(OTA)」に基づき、通常の調達ルールによらず企業・大学・国際機関等と柔軟に連携するための協定。資金提供、施設や機器の提供など、様々な形態があります。
創業者兼CEOのエレーヌ・ユビー氏は以下のようにコメントしています。
「地球上のすべての人が宇宙のインフラに依存していますが、軌道に到達し、物資を補給し、軌道から帰還する能力は依然として限られています。この資金調達により、私たちはNyxを国際宇宙ステーションに運び、安全に地球に帰還させるとともに、欧州が将来の再使用可能な大型ロケットに必要な高推力推進能力であるStormを加速させることを、迅速に実行できます。私たちが欧州を拠点に、世界中の人材、顧客、パートナーと共に事業を拡大しているのは、次世代の宇宙輸送がより多くの国、産業、人々の役に立つよう構築されなければならないからであり、また私たちの使命が、宇宙におけるより協働的で平和な未来の構築に貢献することだからです。」
今回のニュースは、打上げからISSへのドッキング、地球への帰還まで含めた同社の再使用型カプセル開発に、大きな額が投資されるという内容でした。
宇宙ステーションの試料や成果を持ち帰る手段は限られているため、回収能力自体が事業価値を持つようになり、今後さらに注目されそうです。
また、今回はカプセルと同時にロケットエンジンにも資金が充てられています。Stormは将来の欧州の超大型ロケットを見据えた開発です。
投資家からも、宇宙へのアクセスは今後ますます重要なインフラとなり、他国に借りるだけではいられないとコメントされています。自前で宇宙にアクセスする手段を整備することの重要性が高まっていると考えられます。
まずはISS実証に向けたNyx開発の進捗に、今後も注目です。
参考記事
NEW ROCKET ENGINE COMBUSTION CYCLE TECHNOLOGY TESTING REACHES 100% POWER LEVEL - NASA
Hélène Huby | World Economic Forum

