独Isar Aerospace、衛星打ち上げに初成功。7号機まで製造中【宇宙ビジネスニュース】
ドイツのIsar Aerospaceが、小型ロケット「Spectrum」の2回目の打ち上げで初の衛星軌道投入に成功しました。追加の打ち上げ契約や機体の量産計画など、記者会見で語られた今後の事業展開も紹介します。
ドイツのスタートアップ企業Isar Aerospaceは9月5日(現地時間)、小型ロケット「Spectrum」の2回目の打ち上げがノルウェーのアンドーヤ宇宙港から行われ、初めて衛星の軌道投入に成功しました。民間企業が独自で開発したロケットによる欧州からの衛星の軌道投入は、今回が初めてです。
We made history. On just our second flight, we became the first commercial space company from Europe to deliver satellites into orbit. Mission ‘Onward and Upward’ successfully lifted off and deployed payloads into orbit. A new chapter for European spaceflight. More: https://t.co/EQ8NvB6lEo
— Isar Aerospace (@isaraerospace) September 5, 2026
さらに、同社は9月15日、米国の打ち上げサービス企業SEOPSとの追加5回の打ち上げ契約を発表しました。フランス・パリで開催されたカンファレンス「World Space Business Week」での記者会見では、契約内容に加え、機体の量産や今後の打ち上げ計画を説明しました。
ミュンヘン工科大学から生まれたロケット企業、日本企業とも契約
Isar Aerospaceは、ドイツのミュンヘン近郊を拠点とする、2018年設立の企業です。ミュンヘン工科大学で学んだダニエル・メッツラー氏ら3人が創業しました。
Spectrumは、全長28メートル、直径2メートルの2段式ロケットです。液体酸素とプロパンを推進剤に用い、地球低軌道に最大1000キログラムの衛星などを運ぶ設計となっています。エンジンを含め、機体の開発・製造を自社で行うことが特徴です。
1回目の打ち上げは2025年3月に行われましたが、30秒後にエンジンが停止し、機体は海に落下しました。調査の結果、ガスを排出する弁が意図せず開いたことと機体の回転動作の開始時に姿勢制御を失ったことが、失敗につながったと説明しています。
開発資金は民間投資家からの調達のほか、ESAなどの支援も受けています。ESAの「Boost!」プログラムでは、2021年に1100万ユーロ、2024年に1500万ユーロ超の支援契約を結び、飛行実証や量産の準備を進めてきました。さらに2026年8月には、ESAの「European Launcher Challenge」で約2億ユーロ規模の支援契約を締結しました。次世代ロケットの開発や試験設備・射場の拡充、今後のミッションに充てるとしています。
また、日本企業や日本企業の海外拠点とも打ち上げ契約を結んでいます。ElevationSpaceの宇宙環境利用・回収機「あおば」、アストロスケールの英国法人が手がける衛星除去の実証ミッション「ELSA-M」と日本法人が手がけるロケット上段の捕獲・除去実証「ADRAS-J2」も、Spectrumで打ち上げる予定です。
SEOPSが追加5回を契約、複数の衛星を相乗りで打ち上げ
今回SEOPSと結んだのは、2028年から2030年にかけて、Spectrumによる専用打ち上げを5回実施する契約です。ノルウェーのアンドーヤと、カナダで整備を進めるスペースポート・ノバスコシアを利用します。2025年に契約した1回と合わせ、SEOPSが確保した打ち上げは計6回となりました。
左から、Isar Aerospaceアレクサンドル・ダロノーさん(ミッション&打上げ運用担当副社長 / VP)、ステラ・ギエンさん(CCO)、SEOPSエバン・ホイト社長
SEOPSは「Waymaker」という相乗り打ち上げサービスを提供しています。複数の打ち上げ事業者と契約してロケットを確保し、顧客の衛星を取りまとめて搭載します。今回の契約でも、SEOPSがロケット1機を専用で確保したうえで、複数の衛星事業者の衛星を相乗りさせます。
SEOPSのエバン・ホイト社長は記者会見で、ロケットの確保に加え、衛星の準備状況や開発計画の変更に合わせた調整もWaymakerの役割だと説明しました。複数の事業者や地域から打ち上げられるようにすることで、顧客の選択肢を増やす狙いです。
Isar Aerospaceによると、今回の契約により、2028年に予定する打ち上げ枠はほぼ埋まったということです。
打ち上げ需要にどう応えるか、2027年は少なくとも4回を計画
記者会見では、SpaceXのFalcon 9が将来運用を終了する可能性やそれに伴う打ち上げ機会の確保についても質問が出ました。
Isar AerospaceのCCOを務めるステラ・ギレン氏は、打ち上げ需要は以前から増加しており、Falcon 9の今後を巡る動きが、顧客による打ち上げ枠の確保を急がせているとの見方を示しました。特に2028年と2029年の打ち上げ機会を求める動きが強まっているということです。
同社では、すでに3号機から7号機まで製造を進めています。2回目の飛行で得たデータは引き続き分析していますが、会見時点では機体に大幅な設計変更を加える予定はないということです。より多くの機体を製造できるように、細かな変更を加える可能性はあるとしています。
ミュンヘン近郊では、約4万平方メートルの新工場への移転準備も進めているといいます。開発や製造に関わるチームを同じ場所に集め、作業の自動化を進めることで、将来的に年間最大40機を製造できる体制を目指します。
打ち上げ回数を増やすには、機体の増産に加え、射場の整備も必要です。同社はノルウェーのアンドーヤ宇宙港に加え、カナダでも射場の整備を進めています。南米の仏領ギアナにあるクールーからの打ち上げも計画していますが、会見ではカナダの方が先に準備を整えられる見通しを示しました。
次の3回目の飛行は、同社にとって初めての商業飛行となります。民間の顧客のペイロードに加えて、ESAのBoost!プログラムによる支援を受けたペイロードも搭載する予定です。会見時点では具体的な打ち上げ日は公表していませんが、2027年以降の計画について、ギレン氏は次のように話しました。
「来年は少なくとも4回の打ち上げを予定しています。2028年には打ち上げ能力を2倍強に増やします。これらはすべて契約を締結済みです」(ギレン氏)
参考文献
History for European spaceflight: Isar Aerospace reaches orbit and deploys payloads on second flight

