「この5年が勝負」民間大手・スタートアップ・アカデミア・コンサルの最前線の若手4人が語る、日本の宇宙産業の可能性と課題
宇宙産業の最前線で奮闘する日本のプレイヤーはいま何を感じ、どこに勝機を見出しているのか。民間大手、スタートアップ、アカデミア、コンサルティングという異なる立場から宇宙産業に関わる若手4名に、日本の宇宙産業の強み・課題・展望を語り合っていただきました。【PR】
現在、宇宙産業の成長が著しく、日本に限らず各国で宇宙技術への投資が行われ始めています。そのようななか、宇宙産業の最前線で奮闘する日本のプレイヤーはいま何を感じ、どこに勝機を見出しているのでしょうか。
今回、民間大手(日揮グローバル)、スタートアップ(AstroX)、アカデミア(同志社大学)、そしてコンサルティング(PwCコンサルティング)という異なる立場から宇宙産業に関わる若手4名が一堂に会し、日本の宇宙産業の強み・課題・展望を語り合っていただきました。
なお、本特別対談は5大陸14カ国に宇宙産業のコンサルティングチームがあり、「宇宙分野の主要トレンドと課題」「月面市場調査」などの宇宙産業に関わる調査レポートを発刊するPwCコンサルティングのシニアアソシエイト、須田夏帆さんに進行いただきました。
(1)「宇宙をやるつもりはなかった?」それぞれの宇宙産業との出会い
須田:まずは、皆さんが宇宙産業に関わるようになった経緯から教えてください。
深浦:日揮グループにはかつて宇宙関連の部署があったようですが、私が入社した当時はありませんでした。転機は2017年末、米国の「宇宙政策指令第1号」により月への有人探査の再開(後のアルテミス計画)が掲げられたことです。世界的に宇宙開発が活性化するなかで「当社も貢献できるはず」と考え、入社4年目となる2018年に宇宙ビジネスについて考える社内有志活動を始めました。
その後、大きな契機となったのはコロナ禍でした。世の中が大きく変化する中、会社が新事業のアイデアを公募した際、宇宙というテーマを提案しました。
当時、JAXAとも意見交換を重ねており、連携を前に進める方法を模索していたタイミングでした。社内提案の結果、意欲ある若手、支えるミドル層、それを応援する経営層という要素が噛み合い、2020年末に「月面プラントユニット」が設置され、翌年のJAXAとの協定締結に至りました。
小田:もともとはIT系の会社を複数立ち上げて経営していました。ただ、ITの領域では、サービスの基盤となるプラットフォームもクラウドなどのインフラも米国の企業に押さえられていて、日本企業が構造的に勝ちにくいということを痛感していました。
そうしたなかで宇宙市場の成長性を知りました。日本には地理的にも技術的にもポテンシャルがある。しかしロケットというインフラを自国で持てていないために、産業全体がスケールできていない。ここを自分たちでおさえれば大きな事業を作れると考え、それまで経営していた会社を売却してAstroXを立ち上げました。
田中:もともと宇宙が好きで、大学受験の時点で有人宇宙開発に関わりたいと考えて東京大学の航空宇宙工学科に進みました。
私は推進系の研究室に所属していたのですが、その研究室の先生がレーザーを使って月の砂(レゴリス)から金属を取り出すという研究テーマを提案していたんです。地球から物資を運ぶだけでなく、月面にある資源を現地で利用して自立した活動基盤を作るための技術──ISRU(In-Situ Resource Utilization:現地資源利用)と呼ばれる分野です。以来、9年間にわたって同分野の研究に取り組んでいます。
加納:PwCコンサルティングでコンサルタントとして4〜5年の経験を積むなかで、社内に宇宙チームが発足し、そこに参画しました。
ちょうど「宇宙戦略基金」第1期の採択が発表されはじめるタイミングで、まずは国内の宇宙産業にどのような課題があるのかを、コンサルタントとしての視点で整理するところから仕事を始めました。
(2)日本の宇宙産業の強みは製造業、システムインテグレーション、技術の蓄積
須田:まずは、日本の宇宙産業の強みについてお話を伺いたいと思います。事業や研究を進めるなかで、日本の強みはどこにあると感じていますか。
小田:島国であり、東と南が開けているというロケットを打上げやすい地理的な優位性と、製造業の技術力です。
製造業における日本人の丁寧にしっかり作るという気質から、ITの分野で求められるような「とりあえず早く作って出して改善する」というカルチャーに合いづらいところもありますが、品質の平均値が非常に高いと感じます。
深浦:当社の領域でもありますが、システムインテグレーション力が強みだと考えています。月面の資源利用の分野では、個々の要素技術の研究開発が世界中で行われています。しかし、それらを統合してひとつのプラントシステムとして動くように設計できるプレイヤーは、世界的にも多くありません。
先日、宇宙資源の分野で先進的な政策を打ち出してきたルクセンブルクで開かれた学会に参加したのですが、システムインテグレーションの話をすると、欧州の研究者や民間企業の方から「自分たちが開発した技術の出口に困っている」「日揮が設計するプラントシステムに組み込めないか」という反応を多くいただきました。
月面で推薬(ロケットの燃料となる液体水素や液体酸素)を製造するプラントを構想すると、月の砂から水を取り出す抽出装置、水を精製する装置、電気分解装置、液化装置、貯蔵設備などが必要になります。日本の場合、これらがすべて国内の企業で賄えるんです。しかも多くの場合、分野ごとに複数社の候補があります。
いずれも宇宙産業の経験はない企業ですが、地上の産業で使われてきた製品を作ってきた方々なので、品質そのものが備わっています。こうした包括的なサプライチェーンが国内に存在していることは、日本の産業基盤としての大きな強みだと思います。
小田:私たちが進めるロケット開発においても、精密加工や素材まで一通りのサプライチェーンが国内に整っていて、ものを作れる人材と企業が揃っているというのは日本の強みだと感じています。
AstroXは福島県南相馬市に拠点を置いていますが、南相馬を含む福島県の沿岸部、浜通りと呼ばれる地域には、東日本大震災後の復興の過程で航空宇宙関連の産業支援が進み、航空分野の経験を持つベンダーが多く集まっています。
また、こうした企業は宇宙に対する心理的な抵抗感がありません。技術的に十分対応できる企業でも「宇宙なんてうちにはできない」と尻込みされてしまうことがありますが、浜通りではそうしたマインド面の壁がないのも大きいですね。
田中:私が関わる分野においても、材料や化学プロセスに関する技術の蓄積が日本の強みだと思います。特に製鉄や冶金(鉱石から金属を取り出す技術)の分野は、日本が長年にわたって中心的に担ってきた領域で、大学の研究機関にも厚い知見があります。加えて、故障しても修理に行けない宇宙機において求められる高い信頼性を実現できるものづくりの力は、海外の研究者や技術者と話していても、日本に対する大きな信頼を感じます。
(3)「開発途上の月面で事例を作れば、地上も変えられる」宇宙がもたらす成長機会
須田:宇宙産業に参画することで、それぞれの立場にどのような成長機会が生まれると考えていますか。
深浦:大きく2つあります。ひとつは先行者優位です。月面開発はまだ黎明期にあり、現段階では実際に月面に設備を送り込んで運転した実績はほとんどみられません。制度設計やサプライチェーンの構築も進行中の段階です。この時期に先に動いて実績を作れれば、事実上の標準を握ることができると思います。
もうひとつは、月面で開発した技術を地上に還元できる可能性です。特に取り組みたいのがプラントの自動運転です。地上のプラントでは、人が操作したほうがコストが安かったり、新しい自動化技術を導入しようとしても初期投資が大きく従来方式に見積もりで勝てなかったりするため、完全自動のプラントはなかなか実現していないのが実情です。
しかし、38万キロ離れた月面では、人が常駐して操作することは現実的ではなく、自律的に動くシステムを設計せざるを得ません。ここで開発した制御の仕組みやソフトウェアを、地上のプラントにも転用できる可能性があります。
小田:地上ですでに構築されているシステムを変えるということは、明らかにそちらが良いと分かっていて、技術的にはできるものであっても、さまざまなしがらみからその選択を取れないということがたくさんあると思います。その点、月面という制約のある環境を使って技術開発と合わせて実現できることで、地上への転用も行いやすくなるというのは、すごく面白い発想ですね。
田中:アカデミアの立場からは、研究と教育の両面で成長の機会を感じています。
宇宙戦略基金のような資金は「5年後に打ち上げるための実証機を作る」ことを前提として支給されるため、基礎研究が中心だった研究者も社会実装を強く意識するようになっています。宇宙が基礎研究と社会実装をつなぐ経路として機能し始めていると感じます。
また教育の観点でも、自分の研究が月面基地、火星探査、資源循環、地球外インフラといった大きなビジョンにつながると認識するきっかけになっており、宇宙開発を志す門戸を強く押し開くことになっていると感じます。実際に、これまで地上での利用だけを考えていた分野の研究者の方が、宇宙関連の研究資金が増えたことで新たに参入するということも起き始めています。
(4)それぞれの立場から見たリアルな課題
須田:強みや成長機会がある一方で、宇宙産業に取り組む上で感じている課題を教えてください。
深浦:まず挙げられるのが情報へのアクセスです。宇宙業界はまだまだ閉じられた世界で、初めて参加する方にとっては踏み込んだ情報を得ることが難しいと考えています。自社の事業計画に落とし込めるレベルの具体的な情報にたどり着くには、キーパーソンに直接つながるしかありません。
実際に私が本格的に日揮グローバルで宇宙事業に参入するチャンスだと感じたのは、政府の資料に「月面の水資源を活用した水素・酸素の燃料製造プラント」という言葉があったのを見て、それまでお世話になった方々からつないでいただく形で関係者の方にお話を伺ったことでした。構想はあるけれどプレイヤーはまだいない、とそこで初めて知り、競争相手がいないのであれば私たちにもチャンスがあると本格的に動き始めました。
また、社内で宇宙事業の承認を得るにはJAXAなど外部との連携の具体的な計画や案件が求められますが、これから宇宙ビジネスに取り組みたいと考えるような企業では、連携を進めるための受け皿となるチームが存在しないケースが少なくありません。しかし、チームを作るには案件が必要で、一方で案件を得るには受け皿がいるという鶏と卵の問題があります。
さらに、事業継続の見通しが立てづらいという問題もあります。社内では定期的に事業性についての説明をしていますが、特に月面開発に関する計画は各国の計画に依存することと、産業が確立していない中での不確定要素が大きく、非常に難しい側面もあります。現状に理解を示し、多角的な見方から判断をしてくださるミドル層や経営層がいなければ、事業は続けられません。
小田:スタートアップの強みは意思決定や開発のスピードに尽きると考えています。その点、ハードウェアの開発でスピードを出そうとすると、試作と失敗を何度も繰り返す必要があり、そのためにはキャッシュが不可欠です。結局、お金の問題に帰着します。宇宙戦略基金で10年間に1兆円の予算がついたのは前向きなことですが、米国と比べると桁が違うということも考えなければなりません。
もうひとつ気になっているのは、宇宙スタートアップ全体を見ると、収益の柱を政府からの受注や補助金に頼っている企業が多いことです。官需だけに依存したモデルでは産業としてスケールしにくいですし、実際に行き詰まる企業も出てきています。
加納:官需に依存してはいけないということは、政府の方々も非常に強く意識されているところだと思います。宇宙戦略基金、そのもととなる宇宙技術戦略を見ていると、端々に「持続可能な産業として成立させなければいけない」ということが「経済安全保障」「自律性の確保」と同様のボリュームで記されています。 政府が投じたお金で成立させるのではなく、きちんと自律的に回っていくということを目指しているのだと認識しています。
小田:まさにおっしゃる通りで、結局、ビジネスは、誰のどんな課題を解決するかでしかないと思っています。民間の需要をどう獲得していくか、技術起点ではなくニーズ起点で事業を考える姿勢が求められます。技術があれば売れるというわけではない。その考え方で日本はこれまで多くの分野で失敗を繰り返してきたはずです。
深浦:私もビジネス化への意識は非常に重要だと考えています。そのうえで、ロケットや月面インフラのように、国として保有しなければならない基盤的な技術や設備やシステムについては、産業の黎明期にある今、必要な投資として割り切ることも重要だと考えています。
あらゆるものに一律にビジネスとしての収益性を求めると、産業の基盤となるインフラが構築できなくなります。インフラへの投資と民間での収益化のバランスについて、業界全体でもう少し解像度が上がるといいなと思っています。
小田:それはまさにそのとおりですね。両輪がないと前に進めていけないと思います。
須田:アカデミアの視点で、日本の宇宙産業の課題についてはどのように考えていますか?
田中:アカデミアとしては、研究資金の時間軸の短さが最大の課題です。科研費が採択されても期間は3年で、その間に技術を深掘りすることはできますが、宇宙での実証にはとても届きません。5年、10年の資金があれば、ポスドク(博士研究員)を安定した条件で雇用でき、その人の専門性を育てることもできます。
もうひとつは、事業化やシステム化の知見がアカデミア側に不足していることです。研究者は現象の解明や原理の検証には強いですが、事業モデルの構築、顧客開拓、量産体制、品質保証といった領域は企業との連携なしには進められません。
須田:人材の不足はスタートアップ側でも感じますか。
小田:感じます。宇宙産業に新たに入ってくる人の数自体を増やさないと、業界内で人が移動するだけでは全体の人手不足は解消されません。
そのようななか、AstroXは昨年から1年で社員数がほぼ倍に増えていますが、宇宙以外の業界からの転職者では自動車業界の出身者が多いです。扱う部品が似ていたり、たとえばエンジンの燃焼器を手がけた経験がロケット開発にも生きたりと、技術的な親和性が高いのが理由です。
須田:大企業、スタートアップ、アカデミア、お三方の立場の課題を聞くと、ヒト・モノ・カネ、そして情報に課題があると分かりました。加納さんはコンサルタントの視点から見て日本の宇宙産業の課題についてはどのように考えていますか?
加納:私は、「宇宙ビジネス」に関する一般認識にも課題があると考えています。
例えば、PwCコンサルティングが日常的にお付き合いしている、宇宙産業外の企業の皆様からは「宇宙で何かビジネスをやりたい」「参入を検討したい」というご相談がここ数年で大きく増えています。
その際に、意思決定層の方々が従来の宇宙産業のイメージのまま、まず大型のアセット(設備や衛星など)を自前で保有しなければならないという前提で考えることが多くあります。そうすると、必要な投資額も人員も膨大になり、投資回収に何十年もかかるという計算になってしまいます。
しかし実際には、コマーシャルスペース(商業宇宙)や衛星データの利活用など、大型のアセットを持たずに参入できる選択肢も広がっており、まずはそのような選択肢の全体像を把握することが重要です。
須田:事業計画に必要な情報を適切に得られるかということですね。
加納:全体像の把握に加えて、宇宙産業はグローバルの法規制や政策動向の影響を非常に強く受けます。特に欧米の動きに連動するかたちで国内の方向性も決まっていく部分があるため、それらをリアルタイムで把握し続けることが重要ですが、ひとつの事業部門で対応するには情報量が膨大です。PwCコンサルティングではフランスをはじめとする海外法人と緊密に連携し、各国の動向と擦り合わせながらクライアントを支援する体制を取っています。
(5)産官学連携の成功事例とこれからの課題
須田:ここまでそれぞれの立場から課題を伺いましたが、産官学の連携から具体的な成果につながった事例はありますか。
田中:同志社大学が参画した変形型月面ロボット「LEV-2」(愛称:SORA-Q)のプロジェクトがわかりやすいと考えています。JAXAが異分野の技術を宇宙に取り込むために運営するオープンイノベーションの枠組み「宇宙探査イノベーションハブ」をきっかけに、変形技術に強みを持つタカラトミー、カメラ技術を持つソニーが加わり、共同で開発されました。
2024年1月にJAXAの小型月着陸実証機SLIMが月面に着陸した際、傾いた機体の状態を撮影したのがこのSORA-Qです。あの1枚の写真があるかないかで、日本の宇宙開発の成果の伝わり方はまったく違ったと思います。研究段階から実証機の製作、そして実際に月面で運用するところまでをワンストップで実現できた、象徴的な事例です。
深浦:当社では、月面での推薬製造プラントの地上実証に向けて、宇宙産業の経験がない複数の企業やアカデミアとの連携が進んでいます。
ここ数年で「どんな技術が必要か」を具体的に示せるようになってきており、技術を持っている企業や研究者も国内にたくさんいらっしゃいます。
ただ、マッチングの課題は大きいと感じており、両者が一緒に仕事を始めるための仕組みが整っていません。
深い技術の話をしようとすると契約が必要になりますし、企業側も研究開発費の予算がないと動けません。たとえば、100万、200万円規模でもいいので、最初の共同研究を始めるための助成があれば、取り組みの件数が増え、そこからいいものが残っていくのではないかと思います。
小田:技術を持っている側がもっと発信していくことも大事だと思っています。「こういう技術があります」という情報が世の中に出ていけば、それを嗅ぎつけた人が自分から接触してくる。そのような流れが増えていけば、結果としてマッチングも進んでいくはずです。
加納:技術を持つ側の発信についてはお金を集めるという観点でも重要です。欧米と比べるとVC(ベンチャーキャピタル)からの支援力が弱いとされる日本においては、大企業やCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)と連携し、資金・人材を確保していく動きも有効ですが、大企業・CVC側が、世にある技術シーズを把握しきれない、有用な技術が眠ってしまっているという課題もよく寄せられます。
技術と資金・人材をつなげるプラットフォームづくりなども一部で取り組まれている所ではありますが、技術シーズ側としては、やはり積極的に支援元にアプローチし、技術を知ってもらうということも重要だと考えています。
田中:マッチングの話に関連して、アカデミア側にはもうひとつ別の課題があります。大学発のスタートアップを立ち上げる際に、経営を任せるCEOを外部から迎えることがありますが、研究者にはその人の力量を見極める知見がありません。ビジネスのことがわからないまま相手の言うとおりにした結果、不利な条件で株式を持っていかれてしまったというケースも実際にあります。
小田:技術を理解できないCEOとは組まないように注意をした方がよいと考えています。博士号をもってないといけないとか、自分の手で作れないとかではありません。経営の知識を持ったうえで、技術を構造的に分解して理解し、それに基づいて意思決定ができるかどうかが重要です。私も、大学で講演する機会をいただくたびに「技術がわかる(理解しようとできる)人と組んでください」と伝えています。
(6)「この5年が勝負」日本の宇宙産業の展望
須田:最後に、日本の宇宙産業が世界でより大きな存在感を持つために、この5〜10年でどのような変化が必要だと思いますか。
深浦:NASAが2026年3月に発表した「Ignition(イグニッション):月面基地の建設を核とする新たな月面開発計画」のように、日本でも現状のものからさらに踏み込んだロードマップを策定し、実証の機会を確保していく必要があると考えています。この段階で先に動いて実績を作れなければ、産業化の段階で日本が存在感を示すことは難しくなります。
小田:ロケットによる輸送、衛星の製造、データサービスまでを垂直統合で日本として持つことが大事です。自国でインフラを押さえなければ、スタートアップが何社か上場しても、産業として世界に勝てる構造にはなりません。日本には製造業の強みがあるので、アジアや欧州の需要は十分取れると思います。ただ、この5年でそこまで到達できなければ、ITと同じ轍を踏むことになります。AstroXとしては今年末にロックーン方式(気球で成層圏まで上昇し、そこからロケットを発射する方式)での宇宙空間到達を目指しており、衛星を軌道に投入するオービタルロケットの実現は2029年を計画しています。本当に時間との勝負です。
田中:製鉄や冶金など、かつて日本が強みを持っていた分野で、技術を担える企業や研究者が地上での需要の減少とともに少なくなっています。宇宙資源利用の分野ではまさにその技術が必要なのですが、担い手がいなくなってから再び育てるには数十年かかる。宇宙が新しい活用先として機能し始めるタイミングと、その技術を持つ人たちがまだ残っているタイミングが重なるのは、今しかないと感じています。
加納:これまでの議論のとおり、日本の宇宙産業はこれまで官需・国内中心の構造で続いてきましたが、NewSpaceを含むこれからの宇宙産業は民需の獲得やグローバル市場への展開にも目を向けていく必要があります。そのためには、国際的な法規制や市場動向が常に変化するなかで、どの領域にどんな機会があるのかを的確に見極めることが大切です。PwCコンサルティングとしても、グローバルに広がるネットワークを生かして、宇宙産業に新たに参入する企業を支援していきたいと思っています。
(7)PwCコンサルティングからのお知らせ
PwCコンサルティングでは、2024年に宇宙分野の専門チームである「宇宙・空間産業推進室」を立ち上げ、官公庁、民間企業、スタートアップ、アカデミアなど多様なプレイヤーの皆さまに対して、市場調査や事業戦略策定、社会実装など幅広いテーマで支援を行っています。また、日本に加え、米国・欧州など5大陸14カ国に宇宙分野の専門チームを有しており、グローバルに連携しながら各国の知見やネットワークを活用した支援を提供しています。
現在、若手を含む宇宙人材の採用も強化しています。本対談記事を通じてPwCコンサルティングでの仕事や宇宙分野に関心を持っていただいた方、また事業に関するご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
・採用に関するお問い合わせ
・宇宙事業に関するご相談
■後編「若手4人が語る宇宙産業で働く理由とキャリアの可能性」
「キャリアの観点では、今が宇宙産業に関わる一番いいタイミングだと思っています」
続く後編では、衛星データ、宇宙保険、スペースポート、コンサルとさまざまな立場で宇宙産業の最前線で奮闘する若手4人にキャリアについて対談いただきました。




