米政府が2030年までISSの運用継続を表明。日本の進退にも影響か【宇宙ビジネスニュース】
【2022年1月3日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
2024年以降のISS運用、継続か撤退か。各国の動向は
12月31日、NASAのビル・ネルソン長官は、バイデン政権がISSを2030年まで継続する旨を表明したとブログで発表しました。
ISSをめぐっては、少なくとも2024年までは運用を継続することが参加国の間で合意されていました。
アメリカでは、議会上院で2030年まで、下院では2028年までISSの運用を継続する法案が提出され、審議が継続されている状況でした。
ヨーロッパ宇宙機関は、2019年11月に2030年まで運用を継続する方針を示しています。一方、ロシアはISSの老朽化を理由に2025年以降は運用から撤退し、独自の宇宙ステーションを構築する構想を発表していました。
参加国の中でも負担費用が大きいアメリカの進退は、ほかの参加国の意思決定にも影響を及ぼすと見られます。
ISS運用を支えてきたNASAの予算事情
NASAは20年以上にわたり年間約20億ドルから40億ドルをISSの運用に費やしてきました。
2021年5月に発表されたNASAの2022年度の予算要求において、ISSの運用費用には全体の5%にあたる約13億ドルが割り当てられています。ISSへ物資を輸送するのにかかる費用を含めるとさらに大きな金額になります。
アルテミス計画や深宇宙探査に注力していきたいアメリカにとって、ISSの運用費用は負担となりつつあるようにも見えます。
また、NASAは民間企業による商用宇宙ステーション構築に向けた支援に積極的です。2021年12月には、Blue OriginとNanoracks、Northrop Grumman Systems Corporationら3チームに総額約470億円を支援することを発表しました。
商用宇宙ステーションの構築を前にISSが退役すれば、NASAの宇宙飛行士の活躍の機会が一時的に失われてしまうだけではなく、地球低軌道の商用利用が普及しない可能性も考えられます。さらに、宇宙ステーションを所有する国が中国のみとなってしまうのは、宇宙開発分野で覇権を握りたいアメリカにとっては好ましくはない状況でしょう。
2020年代後半から商用宇宙ステーションの構築や運用が活発化していくと見られ、その動きが2030年代以降のISSの運用を左右していくことになるかもしれません。
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参考
Biden-Harris Administration Extends Space Station Operations Through 2030
地球低軌道における2025年以降の有人宇宙活動の在り方に係るオプション整理に向けた検討状況
NASA’S MANAGEMENT OF THE INTERNATIONAL SPACE STATION AND EFFORTS TO COMMERCIALIZE LOW EARTH ORBIT