宙畑 Sorabatake

宇宙ビジネス

AWS Ground Stationが変える衛星データビジネス

Amazonは、2018年11月末に米ラスベガスで開催されたre:Inventカンファレンスにて、AWS Ground Stationを発表しました。宇宙業界の一部には大激震が走ったのではないでしょうか。最近、衛星データ遊びが趣味な宙畑にも大激震が走りました。

AWS Ground Station発表

Amazonは、2018年11月末に米ラスベガスで開催されたre:Inventカンファレンスにて、AWS Ground Stationを発表しました。宇宙業界の一部には大激震が走ったのではないでしょうか。最近、衛星データ遊びが趣味な宙畑にも大激震が走りました。
AWS Ground Stationーこのサービスは、世界12の拠点に新たに設置する衛星通信アンテナによって、衛星経由のデータ通信を、世界中に存在するAWSの通信ネットワークとデータ処理能力とともに利用することができるというものです。これにより、衛星を介したデータの送受信がより気軽に、容易に利用できるようになります。

自社保有の地上局だけでなく、ロッキードマーチンとのアライアンスで360°地球どこでも通信可能に

サービス内容の発表とともに衝撃だったのは、ロッキードマーティンとのアライアンス。ロッキードマーティンの持つ小型衛星基地局Virgeで、Amazonの保有する12台のアンテナの通信可能範囲の補完を行うそうです。

買い切り型から従量課金型へ

従来、衛星からのデータを受け取るためには、独自にアンテナを用意する必要がありました。衛星データを取得した後には、ダウンロード用に自前でストレージを用意し、オンプレ環境で解析、転送の際にはハードディスクに保存する必要がありました。(※昨今はクラウド環境整備が進んでいるので改善してきています)
AWS Ground Stationでは、ユーザは基地局を利用した時間分だけ課金することで、衛星と通信することができます。買い切りだった基地局が、従量課金で利用できるようになるというわけです。AWS Management Consoleから基地局利用のスケジューリングも容易に行うことができるようになりました。さらに、Amazonの提供するプライベートクラウドでデータを取得し、AWS Cloudで解析できるほか、AWS Global Networkで自分の好きな環境に転送することもできます。

AWS ground Stationと今までの衛星通信サービス Credit : 宙畑-sorabatake-

強みはAWSのあらゆるサービスとの連携

シェアリングできる基地局を自社で用意できるところもすごいですが、AWS Ground Stationの最も強い点は、AWSのあらゆるサービスと連携できることでしょう。AWS Ground Stationで取得したデータは、AWS Global Networkを利用してプライベートクラウドであるAWS VPCや、AWS Cloudで利用することができます。ここで、AWSモデムデジタイザ・VITA 19 basebandやVITA 49RF ove IP data Streamなどで一次処理することが可能です。さらに、処理したデータをAmazon EC2にルーティング・信号処理することでデータをデジタル化。デジタル化されたデータは、AWSで提供されるあらゆるSaaS、PaaSでストリーミング・処理・分析・保存することができます。

AWS既存サービスとの組み合わせで一気通貫のサービスに Credit : 宙畑-sorabatake-

AWS Ground Stationはワンストップな衛星データサービス

衛星データの解析を7つのステップに分けるとすると、下記のようになります。
衛星を打ち上げ、データ収集
衛星ごとに地上局でデータ受信
一次解析(信号解析)
二次解析(高次解析)
衛星データとして提供
開発環境を提供
ビジネス利用促進

AWS Ground Stationはなんとこの1〜5までをほぼワンストップで提供する大規模なサービスとなるわけです。いやあ…GAFA強い…。ちなみに、従来までは世界的に、それぞれのサービスを、衛星メーカ、地上局運用業者、画像解析業者、ストレージサービスプロバイダで分担していました。

囲い込んだユーザは欧米の主力衛星データ解析企業

Amazonは、初期の戦略的パートナーとしてDigital Globe、BlackSky、CapellaSpace、Open Cosmos、HawkEye360を紹介しています。これらの企業は欧米の衛星データ事業を牽引する主力企業たち。初期にメジャーを取ることで、ユーザの囲い込みを狙っているようです。

圧倒的強みのあるAWS。課題は…?

初めは2つのGround Stationのみのフィージビリティですが、2019年中頃には12台全ての基地局を利用できるようになるAWS。プラットフォームを展開し続けている巨大企業の新たなサービスに、課題はあるのでしょうか。



まあ、強すぎて課題はほぼないと言っても過言ではないのですが…
基地局を増やしていけば、それなりのコストがかかります。衛星から取得できるデータの活用先が増え、設備投資・維持費用に対していかにして黒字化させていくか、
需要が一気に増えた場合に、現時点で想定している基地局12から、どのように増やしていくか。この辺りへの対応には、今後注視していきたいところです。

参考

re:Inventで衛星通信地上局システム発表――AWSの新しいSaaSはサテライト・アズ・ア・サービス|テッククランチ

Amazon-Lockheed venture casts shadow on ground station startups|SPACENEWS

Satellite data business is Amazon’s next disruption target|SPACENEWS

AWS Ground Station|Amazon Web Service

Amazon launches AWS Ground Station and how it would turn earth observation industry on its head|GEOSPATIAL WORLD

衛星データを容易に利用できる「AWS Ground Station」発表|ASCII.jp

【2018年】AWS全サービスまとめ その1(コンピューティング、ストレージ、データベース、移行、ネットワーキング & コンテンツ配信)|DevelopersIO

AWSのPaaS, SaaSを利用して開発を効率化する|Qiita