「新たな宇宙ビジネスのチャンピオンが生まれるか」Isar Aerospaceが1億5,000万ユーロを資金調達
2025年6月25日、中小型衛星や衛星コンステレーションを地球軌道に輸送するための打ち上げロケットを開発するIsar Aerospaceが1億5,000万ユーロを資金調達したことを発表しました。
ドイツの宇宙ベンチャー企業、Isar Aerospace(イザル・エアロスペース)は2025年6月、アメリカの投資会社Eldridge Industries(エルドリッジ・インダストリーズ)と総額1億5000万ユーロ(約250億円相当)の資金調達契約を結んだと発表しました。Isar Aerospaceはこの資金を用いてロケット開発と製造体制の拡充を本格化させる方針です。
Isar Aerospaceは2018年に設立されたスタートアップで、中小型衛星や衛星コンステレーションを地球軌道に輸送するための打ち上げロケットを開発しています。独自開発のロケットの名称はSpectrum(スペクトラム)です。
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このロケットは最大1,000kgまでのペイロード(宇宙に運ぶ荷物)を低軌道に投入可能で、世界的に高まる小型・中型衛星の打ち上げ需要に対応することを目指しています。2025年3月に初号機の打ち上げを行い、30秒後に正常な制御のもとで海に落下。同社は
「私たちの最初のテスト飛行は私たちの期待をすべて満たし、大きな成功を収めました」
と発表していました。
今回の資金調達で興味深いポイントは、この資金が「転換社債」という形式で調達され、将来的に株式へ転換可能な条件が付いている点です。転換社債とは、企業がまず社債(借金)として資金を受け取り、後にあらかじめ定めた条件でその借金を株式に変えることができる仕組みです。
これにより、Isar Aerospaceは今すぐ株式を発行する必要がなく、既存の株主の持ち分が薄まることを避けながら資金を確保できます。投資家にとっても、企業価値が将来上昇すれば株式として利益を得られ、下がっても債券としての返済を受けられるという、リスクとリターンのバランスが取れた投資手段となります。
急速に成長する宇宙業界において、今回のような資金調達手段の多様化は今後の財務戦略において注目すべきポイントでしょう。
今回の資金調達について、同社のCEOであるダニエル・メッツラー氏は
「私たちは、衛星打ち上げサービスに対する世界的な需要の高まりに対応し、世界の市場と政府に宇宙への独立した柔軟なアクセスを提供しています。この投資は、新たな宇宙チャンピオンを育てるという当社の取り組みに対する世界市場からの強い信頼を示しています。」
とコメントしています。
Isar Aerospaceは今後2025年後半にもSpectrumの第2号機打ち上げを計画しており、今回の資金調達額の大きさからしても、ヨーロッパの宇宙開発をリードする存在になり得ると考えられます。今後の動向が楽しみですね。
【参考】
・Isar Aerospace signs agreement with Eldridge Industries for EUR 150m financing – Isar Aerospace
・Isar Aerospace’s Convertible Bond Financing: Fueling Europe’s Space Ambitions Amid Launch Challenges
・転換社債(CB)入門―基礎編― : 財務省