東京都が最大1億円の宇宙産業助成制度を新設!中小企業・スタートアップの参入を強力支援【宇宙ビジネスニュース】
2025年8月31日、東京都が「航空宇宙産業への参入支援事業 宇宙製品等開発経費助成」を発表。助成金は機器開発に最大1億円、衛星ソリューションに最大2,000万円と地方自治体の助成制度としては大きな予算が組まれています。
2025年8月31日、公益財団法人東京都中小企業振興公社(以下、東京都中小企業振興公社)が「航空宇宙産業への参入支援事業 宇宙製品等開発経費助成」の申請前エントリー受付開始を発表しました。
公益財団法人東京都中小企業振興公社は、東京都の中小企業支援を担う中核機関として、創業支援から経営支援、技術開発支援まで幅広いサービスを提供しています。
助成金は機器開発に最大1億円、衛星ソリューションに最大2,000万円と地方自治体の助成制度としては大きな予算が組まれています。
今回のニュースのポイントについて解説します。
(1)最大1億円!東京都の本格的宇宙産業支援の全貌
東京都中小企業振興公社は、これまでにも「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」など、国の制度と連携した支援を積極的に行ってきましたが、宇宙産業に特化した助成制度の創設は今回が初めてとなります。
「宇宙製品等開発経費助成」は、宇宙産業における都内中小企業・スタートアップのビジネスチャンス獲得を後押しする新制度として整理されています。
発表された背景には宇宙産業の急速な市場拡大があり、2020年の4兆円から2030年代早期に8兆円への倍増を目指す国の宇宙基本計画と歩調を合わせる東京都の積極的な姿勢がうかがえます。
本制度は「機器開発助成」と「ソリューション開発助成」の2つのコースで構成されています。
・機器開発助成:ロケット、人工衛星、探査機などの機器類の開発・改良を対象とし、最大1億円、助成率2/3、期間最長3年という大規模な支援を提供します。下限額は1,500万円と設定されています。
・ソリューション開発助成:衛星データを活用した農業・環境モニタリングや災害予測サービスなどの開発を対象とし、最大2,000万円、助成率2/3、期間最長1年9か月の支援を行います。
宙畑メモ:”助成率”とは
総開発費に対して助成金で負担する割合。例えば、助成率2/3とは、3,000万円の開発費がかかる場合、東京都から2,000万円の助成を受け、企業の自己負担は1,000万円で済むということです。
さらに本制度では、採択企業に対して月1回程度の連携コーディネーターによるハンズオン支援も提供されるため、単なる資金提供にとどまらない総合的な支援体制が構築されています。
(2)他都道府県の宇宙産業支援制度との規模・内容比較
地方自治体による宇宙産業関連予算は東京都に限りません。
例えば、愛知県・名古屋市が年間最大1000万円規模の支援を提供。茨城県の「いばらき宇宙ビジネス支援事業補助金」は新製品開発に最大400万円、神奈川県の衛星データ利活用プロジェクトは最大600万円(3件までのため合計では最大1800万円)、北九州市の衛星データ・宇宙機器技術開発補助金は最大500万円となっており、多くの自治体は数百万円規模です。
北海道大樹町のスペースポート開発への巨額投資を除き、今回発表された東京都の最大1億円という規模は全国自治体で高い金額となっています。
助成率の比較では、東京都の2/3(66.7%)は標準的な水準ですが、助成総額との組み合わせで最も手厚い支援となっています。神戸市の空飛ぶクルマ事業(補助率75%、最大1500万円)や神奈川県の衛星データ利活用(補助率100%、最大600万円)など、高い補助率の制度も存在しますが、総額では東京都が圧倒的です。
対象範囲の比較では、東京都は機器開発とソリューション開発の2トラック制により、ハードウェアからソフトウェアまで幅広くカバーしています。これに対し、愛知県は既存の航空宇宙産業の強化、茨城県は新規参入支援、大分県や和歌山県は宇宙港関連事業と、各自治体の産業戦略の違いが明確に表れています。
支援期間の比較では、東京都の機器開発助成が最長3年間という設定は、宇宙機器開発の実態に即した長期支援として評価できます。多くの自治体が単年度または1年半程度の支援期間に限定される中、開発から事業化までを一貫して支援する体制は他に類を見ません。
さらに本助成金では、ハンズオン支援の回数を月に1回と明記している点も大きな特徴です。
(3)まとめ
東京都の新たな宇宙産業助成制度は、最大1億円、助成率2/3という地方自治体レベルでは大型の助成であり、本格的なハードウェア試作開発を可能にする画期的な制度です。
機器開発についてお悩みの方はぜひ下記記事で紹介しているレポートを読んでみてください。
製造業が宇宙産業に参入するには?参入メリットと事例、参入する際の補助線となる考え方_PR
ソリューションにおいても最大2,000万円の助成により、これまでの地方自治体の助成金制度以上に充実したサービスの実証と開発が可能と考えられます。
2025年8月19日には、TellusがTellus AI PlayGroundを発表するなど、サービス実証がよりスムーズに行えるサービスも登場しており、応募する企業が増えることが望まれます。
【衛星データ×基盤モデル】Tellus AI PlaygroundでAIモデルを動かしてみた!
また、助成金を与えるのみならず、定期的なハンズオン支援により、事業開発の推進がより期待できるようになります。
この制度により、これまで資金面で宇宙産業への参入を躊躇していた都内中小企業・スタートアップにとって、大きなビジネスチャンスが生まれることが期待されます。申請前エントリーは10月10日まで受付中であり、宇宙産業への参入を検討している企業は早急な検討をお勧めします。
参考記事
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000079.000034524.html