宙畑 Sorabatake

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韓国の大型企業Hanwha Groupが通信衛星市場に参入 【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/03/29〜04/04】

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韓国の大型企業Hanwha Groupが2000機の衛星通信コンステレーション計画を発表

複数の事業を展開する韓国のコングロマリット企業の一つであるHanwha Groupの子会社であるHanwha Systemsが、2030年までに地球低軌道上に2,000機の衛星コンステレーションを構築し、都市部の貨物配送用ドローンや旅客機に通信サービスを提供する計画を発表しました。 

Hanwha Groupの防衛・情報技術部門は2023年までに4億4,000万ドル(約487億円)を投じる予定で内訳は以下の通りです。

  1. ・通信技術と衛星打ち上げ費用に1億6800万ドル(約190億円)
    ・衛星通信サービスインに必要な技術開発に1億600万ドル(約120億円)
    ・衛星製造設備投資に9700万ドル(約110億円)
    ・衛星通信技術に7100万ドル(約79億円)

2023年にはβ版をサービスインさせ、2025年以降に都市部の貨物配送用ドローンや旅客機までサービス範囲を拡大し、2030年には年間売り上げとして44億ドル(約4900億円)を目指す計画となっています。Hanwha Systemsの発表によると、衛星を打ち上げるロケットは海外のロケットを活用するものの、衛星だけでなく地上設備の開発も社内のリソースで行う予定となっています。

今回の計画の鍵になるのは、同じグループに所属する2つの企業です。

一つは、英国のアンテナメーカーであるPhasor Solutionsを2020年6月に買収したHanwha Phasorです。Phasor Solutionsが所有していたフラットアンテナに関するコア技術や、低軌道衛星との送受信に必要な半導体チップの設計技術の活用が期待されています。

もう一つは、1992年に打ち上げられた韓国初の人工衛星”KITSAT-1”を開発したSatrec Initiativeを2021年1月に買収したHanwha Aerospaceです。同社は、小型の地球観測衛星や地上システムの製造に必要なコア技術を有しています。

また、Hanwha Systemsは1月にフラットタイプのアンテナの開発に取り組むKymeta Corporationに3000万ドル(約33億円)の投資を実行しており、低軌道衛星向けのアンテナ市場における共創に力を入れている点が窺えます。参考はこちら。(Hyperion Technologiesが光通信の実証試験契約を獲得【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/01/04〜01/10】) 

Hanwha Systemsの衛星事業の責任者であるChoi Jae-woo氏は、今回の発表について以下のコメントを出しています。

The global competition is heating up over the LEO satellite-based communications market, which has huge growth potential.With ample technology and expertise built upon 20 years of engagement in military communications business, we will try to become one of the leading players in the market.
(訳:巨大な可能性を秘めているLEO衛星通信市場は、世界的な競争が激化しています。軍事通信事業に20年間携わってきたことで培った技術力を活用し、この市場でのリーディングプレイヤーになることを目指します。)

Hanwha Systemsは、都市部の貨物配送用ドローン開発にも投資しています。低軌道通信衛星と無料配送用ドローンによる相乗効果を狙うHanwha Systemsに注目です。

アクセルスペースがKSATとの連携を強化

超小型衛星の製造やソリューション提供を手がける株式会社アクセルスペースが、地上局サービスを展開するKongsberg Satellite Services(以下KSAT)と衛星画像の利活用に関する新たな協定を締結したことを発表しました。

アクセルスペースとKSATの2社は、2018年12月にスカパーJSAT株式会社と連名で地上局サービス契約を発表しており、2社の連携は2度目となります。

アクセルスペースは、2021年3月22日に4機の地球観測衛星(GRUS-1B,1C,1D,1E)の打ち上げに成功しており、2023年までに十機のGRUS衛星で構成される衛星コンステレーション”AxelGlobe”を完成させる予定です。コンステレーションが完成すれば、アクセルスペースは地球上のあらゆる場所を2.5mの解像度で一日一回観測できるようになるとのことです。

今回の協定により、GRUSから取得した衛星データとKSATの様々な衛星データの連携が可能となり、KSATは既存の光学衛星データサービスの拡充が可能になります。またアクセルスペースは、軌道上の5機のGRUS衛星に対してKSATの展開する小型衛星向け地上局サービスであるKSATlite Global Ground Networkのサポートを受けることができるようになります。 

アクセルスペースのCBO(最高ビジネス責任者)の山崎泰教氏は次のようにコメントを出しています。 

より遠くから俯瞰的に地球を見ることで、人々の世界に対する見方が変わり、物事を判断する際に新たな視点を提供することができると考えています。KSATとの提携により、あらゆる人々が、より良い意思決定や効果的な行動に繋げられるような地球観測データを提供していきたいと考えています。

地球観測衛星は、多くの衛星データが組み合わされることでより利用の可能性が広がります。国や企業などの枠組みを超えて連携を強化し、様々な業界の課題解決に衛星データが利用される未来に期待です。

2020年12月19日に撮影した、南極海に浮かぶ氷山の様子 Credit : アクセルスペース

AWSが宇宙スタートアップ向けのアクセラレータプログラムを発表

Amazon.com, Inc.が提供するクラウドコンピューティングサービスのAmazon Web Service(以下:AWS)が、AWSを活用する宇宙スタートアップを対象にしたアクセラレータープログラムとなる、AWS Space Acceleratorの開催を発表しました。こちらのリンクから応募可能です。
※アクセラレータープログラムとは、オープンイノベーションの一手段として、大企業がスタートアップ企業に対して自社リソースを提供しながら協業・出資を模索するプログラムのこと。

AWS Space Acceleratorは、宇宙ベンチャーに特化した投資を実行しているSeraphim Capitalと共同で開催されます。2021年3月30日から4月21日が応募可能期間となっており、5月3日には候補の中から10社が選抜され、プログラム中に取り組むミッションを明確にするブートキャンプが開催されます。実際のプログラムは、6月7日から7月2日の4週間にわたって開催されます。

一般的なアクセラレータープログラムではシード期と呼ばれる立ち上げ初期のスタートアップ企業が参加対象ですが、AWS Space Acceleratorでは事業化がある程度進んでいる企業の応募も可能です。

選抜されたスタートアップ企業は、最大10万ドルのAWS Activateクレジット(AWSサービスの利用料)を獲得できるほか、以下のリソースを利用できます。

・ビジネス及び宇宙技術のエキスパートによる50時間以上のサポート
・AWSのクラウドサービスに関するハンズオン支援
・AWSの既存顧客やAWSパートナーネットワーク(APN)との共創
・資金調達を始めとする宇宙ビジネスを加速させる包括的な支援

AWSの航空宇宙/衛星部門のディレクターであるClint Crosier氏は、今回のプログラム発表について以下のコメントを出しています。

We are proud to announce the AWS Space Accelerator as part of our ongoing commitment to help startups succeed, and to shape the future of aerospace. We look forward to helping the first cohort of companies launch and grow through this new program.
(訳:スタートアップ企業の成功を支援し、宇宙産業の未来に寄与するという当社のコミットメントの一環として、AWS Space Acceleratorを発表できることを誇りに思います。この新しいプログラムを通じて、プログラムの第1期生の企業の成長を支援できることを楽しみにしています。)

本プログラムから、未来の宇宙産業をけん引する企業が生まれるのが楽しみです。

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