宙畑 Sorabatake

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Amazonが新部門を立ち上げ宇宙事業に本格参入へ【週刊宇宙ビジネスニュース 6/29〜7/5】

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Amazonが宇宙事業に本格参入

新部門を率いるのは元空軍少将

以前より宇宙事業に関心を示していたAmazonは、6月30日に宇宙事業専任の新部門「Aerospace and Satellite Solutions」を開設することを発表しました。

同社は2018年にAWS Ground Stationというサービスを発表しています。Amazonが世界各地に所有する衛星通信アンテナとAWSのデータ処理能力を利用することで、衛星を介したデータの送受信が容易に実現できるというサービスです。

Credit : 宙畑

AWS Ground Stationはすでに、NASAのJPL(ジェット推進研究所)やLockheed Martin(ロッキード・マーティン)、Maxar Technologies(マクサー・テクノロジズ)といった研究機関や大手民間企業からCapella Space(カペラ・スペース)などのベンチャー企業まで幅広く利用されています。

Aerospace and Satellite Solutionsは、AWS Ground Stationを基盤にサービスを展開していくようです。同部門のリーダーには、元米国空軍少将のClint Crosier(クリント・クロジャー)氏が就任しました。クロジャー氏は宇宙軍の立ち上げにも携わっていた人物で、防衛産業の顧客にアプローチしたい姿勢が伺えます。

AWSを利用して撮影から数分以内の画像公開を実現

さらに前述のCapella Spaceは、ダウンリンクから顧客へのデータ提供までの工程にAWS Ground Stationを利用し、わずか数分以内の画像公開が可能となったことを発表しました。

Capella Spaceは36機のSAR衛星コンステレーションを構築し、衛星画像の提供サービスを行っています。衛星1機あたり1日2〜5TBにのぼる膨大なデータをAWSで管理するというわけです。

AWS上にデプロイされたCapella Spaceの衛星画像 Credit : Capella Space

通常、撮影してからデータを公開するまでに24時間程度必要だと言われていますが、Capella Spaceは顧客から依頼を受けてから数時間以内に提供するスピーディさを売りにしてきました。今回、提供までの時間がさらに短縮されたことで、防衛や災害対応など即時性を要する分野でも衛星データ活用が進むのではないでしょうか。

ESA コペルニクス計画の担当3社を選定

7月1日、欧州宇宙機関(European Space Agency 以下、ESA)は、地球観測プログラム「コペルニクス計画」の次期6つのミッションを委託する企業を発表しました。

選定されたのは、大手衛星製造企業のThales Alenia Space(タレス・アレニア・スペース)フランスとイタリア拠点、エアバスのドイツとスペイン拠点、ドイツのOHBです。

契約金は合計約25億ユーロ。そのうち約8億ユーロはドイツの企業に支払われる見込みです。ESAは「選択参加制」を取っており、加盟国はプロジェクトごとに参加を表明して資金提供の割合を自由に決められます。

加盟国の予算負担額と割合 Credit : European Space Agency

ドイツは2019年秋に、ESAの3年間の予算として、最多の23%にあたる33億ユーロを拠出することを表明。ドイツ航空宇宙センター(DLR)は「投資が契約という形でドイツに還元されている」「中小企業も受注できていて喜ばしい」とコメントしています。

英国政府とインドの通信企業がOneWebを買収入札

2020年3月に連邦倒産法第11条(Chapter11)を申請し、再建に向けての動向が注目されていた衛星通信企業のOneWeb(ワンウェブ)は、7月3日に英国政府が主導するコンソーシアムによって買収入札されたことを発表しました。

英国はEU脱退に伴い、ESAが進めるガリレオ計画からも退かなければならないため、その代替としてOneWebの衛星の利用を検討している旨が報道されていました。

また、コンソーシアムはインドの有名起業家Sunil Mittal(スニル・ミッタル)氏が率いる大手通信企業Bharti Global(ブハルティ・グローバル)からの資金提供を受けています。Bloombergの報道によると、英国政府とBharti Globalは5億ドルを出資し、それぞれ株式の45%の株式を取得、残る10%は既存の株主が保持することになるとのことです。裁判所での手続き等は2020年末までに完了する見込みとのことです。

OneWebのCEOであるAdrian Steckel(エイドリアン・ステッケル)氏はプレスリリースで「前向きな結果で売却プロセスを終えられて、嬉しく思っている」「できるだけ早く衛星の打ち上げに戻りたいと考えている」とコメントしています。

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参考

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