宙畑 Sorabatake

探査

ispace、UAEのOrbital Spaceと学生参加型の月探査ミッションで覚書を締結

2025年9月12日、月面輸送サービスや探査ローバーを開発するispaceは、アラブ首長国連邦(UAE)の宇宙教育企業と提携を発表。その概要を紹介します。

学生参加型の月探査ミッション始動へ

2025年9月12日、月面輸送サービスや探査ローバーを開発するispaceは、アラブ首長国連邦(UAE)の宇宙教育企業 Orbital Space Satellite Services L.L.C(以下Orbital Space)と、学生参加型の月探査ミッション実現に向けた覚書を締結したと発表しました。

Orbital Spaceは、UAEを拠点とし、学生や若手に実際の宇宙開発体験を提供することに注力する教育系宇宙企業です。

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国際コンペで選ばれた実験が月へ

覚書に基づき、Orbital Spaceは学生向けの国際コンペを企画・運営し、選定された実験機器(ペイロード)の輸送費支援や広報活動を行います。
ispaceはペイロードの技術評価や、月への輸送サービスの提供を検討します。

今回の取り組みの背景には、教育と宇宙産業の連携を強化する世界的な流れがあります。NASAやESA、JAXAも学生向け実験プログラムを実施してきましたが、民間企業による月輸送を活用した学生参加型の試みは珍しいものです。

UAEは国家戦略として宇宙探査を重視し、探査機「Hope」や宇宙飛行士育成などに積極的に投資しています。特に若手人材の育成は最重要課題の一つであり、今回の取り組みはその一環であるとも考えられます。

Orbital Spaceは「誰もが宇宙にアクセスできる未来」を掲げ、教育用ミッションを推進してきました。ispaceとの協力は、その活動を国際的に拡大するものとなりそうです。

宙畑メモ:ペイロードとは
「ペイロード」とは、探査機やロケットに搭載されるミッション機器や実験装置のこと。今回は、学生が設計した小型実験装置などが対象になる見込みです。

両社代表のコメント

今回のリリースについて、ispaceの代表取締役CEO & Founder 袴田武史さんは以下のようにコメントしています。

「ispaceは、2022年に打ち上げたミッション1において、『Rashid』月面探査ローバー輸送のためMohammed Bin Rashid Space Centre (MBRSC)と協業するなど、アラブ首長国連邦と深い協力関係を築いてきました。今回の覚書締結により、Orbital Space社と今後、更なる協力の深化を検討できる事、そして次世代育成に貢献すべく、学生参加型の月探査ミッションを実現していける事を嬉しく思います。」

また、Orbital Space Satellite Services L.L.C General Managerのバッサム・アルフィーリ氏も以下のようにコメントしています。

「私たちはispaceとの協力により、UAEをはじめ世界中の学生たちに“月”を身近な存在として提供したいと考えています。彼らは教室の枠を超えて、実際に月面で科学実験を設計し実証する機会を得ることが出来ます。これは、Orbital Spaceが目指す『誰もが宇宙にアクセスできる未来』を実現するための取り組みです。」

次世代の“月世代”を育む一歩に

月探査は国家や大企業だけのものではなくなりつつあります。今回の覚書は、学生が国際コンペを通じて「自分たちのアイデアを月に届ける」可能性を広げる点で注目されます。

特に、民間企業の月輸送サービスを教育に結びつける試みは世界的にも珍しく、宇宙探査を“専門家だけのもの”から社会に開かれた取り組みに変える動きの一例です。教育と宇宙産業の連携は、次世代人材の育成を後押しするとともに、将来は私たちの暮らしに直結する宇宙サービスや産業基盤にもつながっていくと期待されます。

参考記事

https://ispace-inc.com/jpn/news/?p=7862

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