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ホンダとアストロボティック、スケーラブルな月面発電ソリューションを模索するための共同開発契約を締結

月面での長期ミッションや有人滞在を支える電力システムの実現可能性を探るため、本田技研工業の米国現地法人であるアメリカン・ホンダモーターと、アストロボティック・テクノロジーが提携を発表。その概要を紹介します。

2025年9月29日、本田技研工業の米国現地法人であるアメリカン・ホンダモーター(以下、ホンダ)と、米国の宇宙関連民間企業であるアストロボティック・テクノロジー(以下、アストロボティック)は、月面での持続的な電力供給を実現するための共同開発契約を締結したと発表しました。

両社は、ホンダの再生型燃料電池(RFC)と、アストロボティックの垂直型太陽電池アレイ技術(VSAT)を統合し、月面での長期ミッションや有人滞在を支える電力システムの実現可能性について共同で検討します。 

Hondaの循環型再生エネルギーシステムとアストロボティックのVSATを統合した電力システムのイメージ Source : https://global.honda/jp/topics/2025/c_2025-09-30.html

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ホンダのRFCは、水と太陽エネルギーを使って酸素・水素・電力を連続的に生成するシステムです。昼間は太陽光で水を電気分解し、水素としてエネルギーを蓄積。夜間はその水素を電力へ変換します。

発電後に生成される水も、再び電気分解することで、循環システムが成立します。これにより、月の長い夜(約14地球日続く)でも連続的な電力供給が可能となり、人類の長期滞在やインフラ整備を大きく前進させる技術とされています。

一方、アストロボティックが開発するLunaGridは、月面でのさまざまなミッション向けに拡張可能な電力インフラサービスです。その中核となる垂直型太陽電池アレイ技術(VSAT)は、展開・自動水平化が可能で、太陽を追尾して効率的に発電できる太陽電池システムです。10kW級から最大50kW級まで対応可能見込みです。ミッション規模の拡大に応じて柔軟に電力供給量を増やせます。

両社は今回の共同研究で「①設置候補地ごとの日照条件の詳細な解析」「②LunaGridへの対応を目的とした、RFCシステムの拡張性評価」「③両システムのハード・ソフト両面での統合要件の検討」の3点を中心に進めます。

また、両社は月の南極付近において、複数の候補地での1年間の太陽光照射シミュレーションも実施します。これにより、日中にどれだけの太陽光が得られ、水の電気分解をどれだけ行えるかを予測し、夜間に水素からどれくらいの電力を発生させられるかを明らかにします。この結果から、将来のミッションシナリオに最適なシステム設計を行う予定です。

ホンダの宇宙開発部門チーフエンジニアであるDerek Adelman氏は「ホンダとアストロボティックの協力は、月面での長期滞在ミッションに必要な電力インフラを実現するための大きな一歩です。ホンダの再生型燃料電池技術は、月での人類活動を支えるだけでなく、地球上でのゼロエミッション技術の発展にも貢献するものです。」とコメントしています。

アストロボティックのパワーシステム責任者Bobby Rolley氏も「LunaGridは、長期間のミッションを可能にし、探査の経済性を大きく変える“持続可能な電力供給”を目指しています。過酷な月の夜を乗り越え、ミッション期間を数日から数年へと伸ばすことが可能になります。ホンダとの協力は、そのビジョン実現に向けた重要なステップです。」とコメントしています。

将来、人が月に滞在する場合、昼夜を通し、どのように生活に使う電力を確保するのでしょうか。今回の連携は、この大きな課題に対する現実的な解決策として期待できます。

参考記事

アメリカン・ホンダモーターが米国宇宙関連民間企業のアストロボティックと月面電力システム開発に関する共同開発契約を締結

Honda and Astrobotic Establish Joint Development Agreement to Explore Scalable Lunar Power Solutions

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