39歳・自動車業界で16年勤務「具体的な業務内容はどんなものがあるのでしょうか?相対性理論は使えるようにしておいた方がよいでしょうか?」【宇宙ビジネスキャリア相談室】【PR】
宇宙ビジネスに関心を持つ皆さまからキャリアに関する質問を募集。「具体的な業務内容や宇宙業界で働くうえで必要な知識」に関する質問に宇宙人材エージェントを運営する株式会社インバイトユーの河辺さんにご回答いただきました。
かつては一部の専門家だけの世界と思われていた「宇宙ビジネス」。
しかし近年は、民間企業の参入や技術革新により急速に拡大し、航空宇宙工学を学んだ人に限らず、自動車業界、電機業界といった理系の方のみならず、IT・金融・コンサル・広告など、他業界で培ったスキルを生かせる多様な人材が活躍できるフィールドへと変化しています。
とはいえ、「どんなスキルが役立つの?」「どうやってキャリアを築けばいい?」といった疑問や不安を抱える方も少なくありません。
そこで宙畑では、宇宙ビジネスに関心を持つ皆さまからキャリアに関する質問を募集し、回答するという企画を実施。本企画では、Xやメールマガジンで寄せられた疑問とその答えをまとめ、宇宙業界でのキャリアの可能性を読者の皆様にお届けします。
第2回の質問としてピックアップさせていただいたのは、宇宙業界に興味を持ったきっかけが「宇宙は本当に不思議なので、死ぬまでに少しでも理解したい。業界で発展に寄与したいから。」という39歳、機械工学、振動分野を専攻し、現在は自動車業界で設計、実験業務 振動・騒音、熱流体に関わる方からの質問です。
Q1.これまで自動車業界で働いてきましたが、宇宙ビジネスでやっていけそうかがまったくわかりません。具体的な業務内容はどんなものがあるのでしょうか?
Q2.相対性理論は使えるようにしておいた方が良いでしょうか?
この2つの質問にご回答いただいたのは宇宙人材エージェントを運営する株式会社インバイトユーの執行役員、河辺真典さんです。
【河辺真典さんのご経歴】
1993年大手繊維会社にて生産技術職に従事。1998年リクルートエージェントにて製造メーカー及び技術系分野の人材紹介を主に担当後、人材開発マネジャーとして社員採用と育成を経験。
2006年から技術系人材紹介会社メイテックネクスト設立に携わり、17年勤務。後半6年間は代表取締役社長として事業を牽引。
2023年ディップ株式会社にて執行役員として介護人材紹介事業責任者を担う。
2024年10月より株式会社インバイトユー参画。
内閣府 宇宙スキル標準委員会委員
(1)自分の仕事をそのまま宇宙の仕事に置き換えてみよう! 自動車業界と宇宙業界の共通点
Q1.これまで自動車業界で働いてきましたが、宇宙ビジネスでやっていけそうかがまったくわかりません。具体的な業務内容はどんなものがあるのでしょうか?
こちらは私が様々な宇宙業界への転職希望者の方とお話しする中で最も多いご質問です。質問いただいた方のように、幼少期から天体に興味があった、宇宙戦艦ヤマトやガンダム世代の方々のあこがれ、また宇宙兄弟でリアルな宇宙飛行士の実態を知り興味を持った……など、潜在的に宇宙に興味を持っていらっしゃる方は非常に多い反面、実際にどうなのか具体的な情報も少なく、非常に気になる方も多いでしょう。
技術領域で言えば、燃焼エネルギーを動力に変え、大型構造物を動かすという見方をすれば、自動車とロケットに共通しているポイントが多くあります。
例えば、自動車の振動解析や実験評価のお仕事をそのまま、自動車というワードをロケットに置き換えてみましょう。
・「自動車エンジン」⇒「ロケット推進の燃焼制御や試験」
・「自動車のボディー・シャーシ」⇒「ロケット機体の構造設計や強度解析」
・「自動車のNVH(Noise、Vibration、Harshness」⇛「ロケットの振動解析や試験」
・「自動車の走行(ロード)」⇒「ロケットの打上げ」
と、置き換えをしてみるとさらに詳細な共通点がイメージできるのではないでしょうか。
ご質問者の方のご経験と照らし合わせると具体的には、ロケットでの打上げ時の強烈な振動や衝撃に耐えうる内部構造はどうしたらよいのか、その設計や実験解析、また衛星では、同様に打上げ時に衛星にかかる振動や衝撃に耐えうる構造、また太陽光の当たる部分と当たらない部分での大きな温度差や内部のユニットで発生する熱を逃がすためにどうするかなど、熱マネジメントの開発や解析にも生かせると思います。
(2)宇宙業界のフェーズは基礎研究から応用・量産へ。相対性理論よりも重要なこと
Q2.相対性理論は使えるようにしておいた方が良いでしょうか?
相対性理論ですか。「宇宙は物理学や量子力学を駆使してとにかく難しい」という印象なのでしょう。
もちろん、惑星間の引力や自転、それらの影響を考慮しながらの軌道制御や周回する中での太陽の位置と地上を捉える姿勢制御など、難しい演算をベースに考える分野もあります。
ただ、宇宙業界は必ずしも相対性理論を使える人しか働けない業界ではありません。
例えば、燃料を燃やしてロケットを打上げて衛星を宇宙に運ぶ。運ばれた衛星が地球を撮影して地上にデータを送る……これらの宇宙ビジネスの一連の流れを完結するために必要な機能は地上で実績のある量産技術が応用され、設計開発がなされています。すべての開発がゼロから原理を積み上げていくわけではありません。
実際には、相対性理論といった原子・電子レベルの根本的で基礎的な物理論というより、宇宙では学校で学ぶ、主要な力学方程式が用いられます。例えば、自動車業界では演算式を意識しなくともデータを入れれば解が出る状態にあると思いますが、宇宙はこれから実証実験を積み重ね、経験則を得る段階にあるため、机上計算も実験データの解析も、モデル化はこれからの段階のため、基本的な力学方程式を駆使して、演算する必要があります。
(3)河辺さんから質問者の方への応援コメント
宇宙というと最先端で学術的で難しい、そんなイメージだと思いますが、実際は過酷な宇宙環境において限られたスペースや重量という制約の中、どのように課題を解決し最適化するか。
地上でのモノづくりを参考にしながら、泥臭い開発を行っている。そのようにイメージしていただくと、そんなに遠い世界でもないことを理解いただけると思います。
ただし、重要なのは、過去の経験則に頼るだけではなく、「なぜそうなのか、なぜそうするのか。」を力学方程式を駆使して論理的に考えること。その点が面白みでもあり難しさでもあります。物事の真理を探求したいという思考をお持ちの方はぜひチャレンジしてみてください。
(4)宙畑編集部の一言コメント
宇宙ビジネスというと宇宙に特化した特殊な知識やスキルがなければ活躍できないと思われる方も多いのかもしれません。
実際にそのような不安を抱えられている方も多く会いました。ただし、実際には宇宙に特化した知識や技術は転職した後に学ばれている方が多くいらっしゃるのが現状でしょう。
宇宙業界以外の業界から宇宙業界に転職した人に焦点を当てた連載「Why Space」でも「半分知ってる、半分未知」という思いを持って転職して活躍されている方や、まさに自動車業界からロケット開発企業に転職された方は「原理原則には多くの共通点がある」と話されていました。
まずは、ご自身のこれまで培われた素晴らしいスキルやご知見がどのように宇宙ビジネスで活かされる可能性があるのか、インバイトユーの無料キャリア相談で聞いてみる!と、気軽に飛び込んでみてはいかがでしょうか。


