【スマホ圏外のデータも収集】アークエッジ・スペース、小型IoT端末から衛星へのデータ送信に成功【宇宙ビジネスニュース】
2025年11月6日、アークエッジ・スペースは、地上のIoT端末から自社衛星へのデータ送信に成功したことを発表しました。これにより、携帯電話が圏外の地域であっても、データ利活用の促進が期待できる、注目のニュースです。
2025年11月6日、超小型衛星サービスを手がけるアークエッジ・スペースは、IoT衛星通信の実現に向け、地上のIoT端末から自社衛星へのデータ送信に成功したことを発表しました。これにより、携帯電話が圏外の地域であっても、データ取得・送信が可能となり、様々な分野のデータ利活用が促進されると期待されます。
アークエッジ・スペースは、6Uサイズ(約10×20×30cm)の超小型衛星の量産化を強みとする宇宙スタートアップです。衛星開発や運用だけでなく、衛星データサービスまでを、ワンストップで行っています。
同社は今回のIoT通信以外にも、様々なミッションに取り組んでいます。例えば、船舶の安全航行を支える衛星VDES(VHF Data Exchange System)や、衛星と成層圏間の高速・大容量通信を実現する光通信などです。さらには月面活動に向けた測位・通信技術の開発も行っています。
特に衛星IoT分野では、今回のデモに先立つ動きもあります。2025年3月には、準天頂衛星「みちびき」を利用した高精度潮位観測の実証事業にも採択されました。地上インフラが未整備な地域でのデータ収集技術の実証を着実に進めています。
宙畑メモ:IoT衛星通信とは
IoT機器との通信のうち、特に「省電力」かつ「広域」の通信技術を用いて衛星経由で行う通信を指します。4G/5Gの電波が届かない山間部、海上、砂漠といった地域でも、上空が開けてさえいれば、上空の衛星と通信が可能です。最大の特徴は、電池駆動のような省電力で、センサーなどの少量のデータを長距離・広範囲に伝送できる点です。今回のデモのように、電源や通信網の確保が難しい場所において、データ収集(環境モニタリング、物流追跡、防災など)の有効な手段として期待されています。
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今回のデモは、2025年11月1日から4日に開催された、第11回UNISEC-Global Meetingの会期中にライブで実施されました。電池駆動のシンプルなIoT端末から自社衛星「AE1c」へショートメッセージを送信し、その内容を即時に自社地上局で受信することに成功しています。18カ国からの参加者に向けて、衛星IoTサービスの実用性を示しました。
陸上や洋上のセンサーデータは、これまで主に携帯電話網などを介して収集されてきました。しかし、通信インフラが整っていない海域や遠隔地では情報の取得に限界がありました。省電力・長距離通信が可能なIoT端末を活用することで、このような地域でも、衛星経由でデータ取得できる可能性が広がります。
同社の衛星「AE1c」は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援事業を通して開発されたものです。今回開発されたIoT通信機が搭載されています。今回のデモ成功は、IoT衛星通信サービス化に向けた技術段階が進んだことを示しています。今後、アフリカやアジア、南米など、通信インフラが未成熟な地域においても、実証とサービス展開を行う予定です。
また、アークエッジ・スペースは、2025年10月末に開催された、NIHONBASHI Space Week 2025のアフリカとの連携に関するセッションに登壇しました。そこで、IoT衛星コンステレーション実現を目指し、地上局や衛星開発への参画を呼び掛けました。
「共創の地平ー宇宙ビジネスで進む日アフリカの協力」セッションの様子 Credit : アークエッジ・スペース
今回のデモ成功は、アークエッジ・スペースが目指すグローバルなIoT衛星コンステレーションの実現に向けた、着実な一歩と言えます。
特に注目すべきは、自社で保有する「省電力IoT端末」から「衛星通信網・地上局」へと、一連のデータ送信を成功させた点です。通信インフラがない遠隔地や海上では、電源の確保自体も大きな課題となります。省電力なIoT端末が実用化されれば、あらゆる分野でのデータ活用が一気に進む可能性があります。気象、海洋、物流、環境観測など様々です。
また、アークエッジ・スペースは、衛星本体から地上局、サービスまで一貫して手掛けています。今後、同社の超小型衛星コンステレーションが拡充されれば、サービスの拡張性や網羅性が向上します。それに加え、ワンストップでサービス提供できる点が大きな強みとなるでしょう。
同社は、アフリカやアジア、南米など、今後成長が期待される新興国市場も視野に入れます。日本発の衛星IoTサービスを、各国にどのように届けていくのか、今後の同社の動向に注目です。
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