VoyagerとInfleqtion、宇宙における量子時代の幕開けに向けて提携【宇宙ビジネスニュース】
2025年11月12日、防衛および宇宙技術を手がける企業Voyager Technologiesと、量子技術を手がけるInfleqtionが、戦略的パートナーシップを締結しました。今回の提携は、地球低軌道(LEO)を中心とした宇宙空間で、量子技術を実用化することが目的です。
2025年11月12日、防衛および宇宙技術を手がける企業Voyager Technologiesと、量子技術を手がけるInfleqtionが、戦略的パートナーシップを締結しました。
今回の提携は、地球低軌道(LEO)を中心とした宇宙空間で、量子技術を実用化することが目的です。量子時計、量子センサ、量子コンピューティングを宇宙機に組み込むことで、通信のインフラ強化や、各社の競争が激化する宇宙ミッションの継続性を高める狙いがあります。
宙畑メモ:量子技術
量子とは、粒子と波の性質をあわせ持った、とても小さな物質やエネルギーの単位のことです。(文部科学省HP「量子ビーム」の説明ページより引用)
量子特有の性質を活用した技術を量子技術と呼びます。量子技術を使った例として、極めて高精度に時間を測れる量子時計、磁場や温度などのわずかな変化を高い感度で測定できる量子センサがあります。
そのほか、従来のコンピュータでは難しい複雑な問題を解き、より高速で処理できる量子コンピューティングなどがあります。
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Infleqtionは、NASAがISSで運用中の実験施設である、Cold Atom Labに技術提供を行うなど、これまで10年以上にわたり宇宙における量子研究を牽引してきました。
今回の提携により、量子技術は実験段階から商業利用段階へと進み、宇宙でのデータ取得、宇宙機の位置制御などで、利活用が進むと見られています。
両社はまず、Infleqtionが開発した量子時計(Tiqker Quantum)を国際宇宙ステーション(ISS)へ搭載します。その後、ISSの後継となる民間宇宙ステーションStarlabでも実証を進める計画です。
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リリースには、「高精度で安全な時刻情報を提供する量子時計を宇宙に設置することでゴールデンドーム関連ミッションを含む商業および国家安全保障ミッションに大きな変化をもたらし、宇宙船の自律的な調整と衛星群間の安全な通信を可能にすることが期待されます」と記載がありました。
また、VoyagerのCEOであるDylan Taylor氏は、「私たちは量子技術の実用性を、研究から実運用の段階へと引き上げます。量子技術を宇宙で活用することで、まったく新しいデュアルユース技術(民間および軍事用途の双方に使用できる技術)を確立します」と安全保障用途に限らず、この技術を民間に開放する展望についてもコメントしていました。
InfleqtionのCEO Matthew Kinsella氏は、「量子技術は宇宙に出ることで真価を発揮します。Voyagerとの協業によって、量子時計や量子センサが宇宙におけるインフラの信頼性、拡張性、安全性をどのように高めるかを実証し、宇宙空間で確かな効果を発揮するはずです」とコメントしています。
量子技術は将来の宇宙インフラの基盤と期待されており、今回の提携はその最初の一歩と言えます。量子と宇宙という先端技術が融合されることで、社会にどのような効果をもたらすのか、今後に注目です。
参考記事
Voyager and Infleqtion Partner to Launch Quantum Era in Space
Quantum clocks: Ticking away toward a new era of precision measurement
解説記事 | 量子センサとは | 松下雄一郎 | Quemix Inc.

