NASAと米エネルギー省、2030年に向けた月面原子炉開発で新たなMoU締結。政府内の横断的連携による月面上の電気インフラ整備の更なる加速。【宇宙ビジネスニュース】
NASAと米エネルギー省は、月面向け核分裂電源の開発に向けた新たなMoUを締結しました。2030年までの開発を視野に協力体制を明確化し、月面活動に必要な電力インフラ整備を前に進める動きです。
2026年1月13日、NASAは米エネルギー省と共同で、アルテミス計画および将来の火星探査に向け、月面で使用する原子力発電システムの研究開発を支援する方針を発表しました。両機関はこの協力を強化するため、新たな覚書(MoU)に署名しています。
宙畑メモ:月面における原子力発電システムとは
核分裂反応を利用して電力を生み出す、小型の発電システム。NASAでは、月面の昼夜や温度変化に左右されず、長期間にわたって安定した電力を供給するための基盤インフラとして検討されています。一般的に「月面原子炉」と呼ばれることもあります。
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米エネルギー省は、米国のエネルギー政策や原子力分野の研究開発、安全管理を担う政府機関です。宇宙分野においても、原子力技術に関する専門的知見を有する機関として、関連する研究開発に関与してきました。
NASAの発表によると、今回締結されたMoUは、月面原子炉に関する研究開発や将来的な配備を見据え、NASAと米エネルギー省の協力関係を整理するものです。両機関がそれぞれの専門分野を活かし、原子力技術と宇宙探査の観点から協力を進めていく方針が示されました。
月面では昼夜が約14日ずつ続くという環境上の制約があり、従来の太陽光発電だけでは対応が難しい場面が想定されてきました。このMoUでは、短期間の探査にとどまらない月面活動を念頭に、電力インフラの在り方を検討していくことが位置づけられています。居住や実験、資源利用といった活動を継続的に行うためには、安定した電力供給が前提条件となるためです。
また、月面原子炉に関する動きはNASAの別文書からも見て取れます。
NASAが公開している「Fiscal Year 2026 Budget Technical Supplement」では、月面原子炉が、技術開発部門から月・火星探査を実際に成立させるための基幹インフラを所管する部門へと位置づけが移されています。これは、同システムが研究段階の技術ではなく、将来の探査ミッションを支える実装フェーズの要素として扱われ始めていることを示していると考えられます。
NASA長官のジャレッド・アイザックマン氏は次のように述べています。
「米国は月への再進出、滞在のためのインフラ整備および火星やその先への大きな飛躍に必要な投資にコミットします。この未来を実現するには原子力エネルギーの活用が必要です」
また、米エネルギー省長官のクリス・ライト氏は次のように述べています。
「マンハッタン計画からアポロ計画に至るまで、米国の科学とイノベーションが結集することで、不可能と思われていた新たなフロンティアへ世界を導いていたということを歴史が証明しています。今回の合意はそのレガシーを継承するものであり、当省はNASAおよび民間宇宙産業と共に、原子力エネルギーと宇宙探査の歴史における偉大な技術的成果の一つとなるであろう事業に取り組めることを誇りに思います」
NASAと米エネルギー省による今回の発表は、既に検討が進められてきた月面原子炉について、研究開発から実装に向けた取り組みを加速させるための協力体制を明確にしました。
大規模なインフラ整備を必要とする月面活動を推進する上で様々な機関の連携は重要です。今回のMoUを通じて政府内の横断的連携が深まったことで、月面上の電気インフラ整備がさらに加速することでしょう。
参考記事
NASA, Department of Energy to Develop Lunar Surface Reactor by 2030

