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「数回の打上げで市場は一気に拡大するだろう」ElevationSpace、Redwireが提携。バイオ医薬品技術を自社プラットフォームに統合へ【宇宙ビジネスニュース】

衛星内で実験などができる小型宇宙機を開発するElevationSpaceは米国のRedwire Corporationとの締結を発表しました。その提携内容と、RedwireがElevationSpaceに期待することについて、直接お話を伺いました。

衛星内で実験などができる小型宇宙機を開発するElevationSpaceは3月26日、米国のRedwire Corporation(以下Redwire)と、Redwireの微小重力およびバイオ医薬品向けハードウェアを、宇宙実証プラットフォームに統合するための基本合意書(MoU)を締結したと発表しました。

Redwireは、デジタルエンジニアリングやAI自動化技術を強みに、宇宙・防衛分野のインフラや自律型システムを手がける企業です。2020年に創業して以来、軌道上の3Dプリンターを開発するMade In Spaceや、小型衛星と宇宙機のコンポーネントを開発・製造するAdcole Space、バイオテック企業Techshotなどを買収し、事業を急速に拡大。2021年にはニューヨーク証券取引所へのSPAC上場を果たしました。現在は、米国や欧州拠点に約1,400人の従業員が在籍しています。

今回の提携により、ElevationSpaceは、グローバルな顧客へのアクセス向上を図るとともに、自社の宇宙実証プラットフォーム上での連携機会を広げる狙いもあるといいます。

今後両社はElevationSpaceのプラットフォームとRedwireのハードウェアおよび科学研究ペイロードとの互換性確保に向け、実験インターフェースや回収要件の共有を進めます。あわせて、プラットフォームに適した研究実験の特定や、Redwireが提供可能なサービス内容についても共同で検討していく方針です。

ElevationSpace COO 宮丸 和成氏(左)とRedwire COOのショーン・バックリー氏(右)

(1)Redwire・COOショーン・バックリー氏にインタビュー取材

来日していたRedwire COOのショーン・バックリー氏を取材すると、RedwireはElevationSpaceの存在に創業まもない時期から注目し、提携に向けて対話を重ねてきたといいます。宇宙での実験・回収サービスを目指す企業は世界に複数存在しますが、バックリー氏は提携の決め手となったElevationSpaceの魅力として、経営陣のリーダーシップに加え、日本に拠点を置いている点を挙げました。

「日本国内でカプセル提供を担える企業を探していました。米国や欧州ではすでに他の企業と連携していますが、アジアでは選択肢が限られているのが現状です。そうした中で、日本でこの分野に取り組むElevationSpaceに強く惹かれました。実際に経営陣と対面し、非常に有望な協業になると感じました」

バックリー氏は、日本の宇宙産業について、宇宙戦略基金を通じた投資により、技術開発や実証が進み始めているとしています。また、近年は米国の宇宙企業がパートナーシップを通じて日本市場に参入する動きも出てきていることを挙げました。

また、日本への拠点設立の可能性について尋ねると、実現には事業としての成立性や収益性に加え、市場への理解が条件になると話しました。

(2)ElevationSpaceへの期待

今回の提携にあたり、ElevationSpace COOの宮丸和成氏は、「当社(ElevationSpace)の大気圏再突入・回収システムカプセル回収能力とRedwire社の革新的な微小重力ハードウェアを組み合わせることで、特にバイオ医薬品分野における微小重力環境での研究開発機会を飛躍的に拡大させる可能性を秘めています」とプレスリリースで述べています。

Redwireはバイオ医薬品分野に長年取り組んできた企業であり、微小重力環境を活用することで、がん治療薬をはじめとする次世代医薬や新たな材料の開発に注目しています。

「私が描いているビジョンは、ElevationSpaceや日本の製薬会社と協力し、実験を宇宙空間へと持ち出すことです。微小重力環境下で実験を進め、それを地球に持ち帰り、次世代の医薬品開発のために日本企業へ即座に届ける、というサイクルを想定しています。そして、次世代の治療法や高度な医薬品を日本企業によって国内市場に投入していただくことを考えています。さらに、日本企業と他国との関係性次第では、それらの成果を日本から海外へ展開することも可能でしょう」

また、宇宙での実験や製造については、欧米では啓発活動が進みつつありますが、「なぜ宇宙なのか」を言葉だけで理解してもらうことは容易ではありません。日本国内向けに宇宙空間の利用価値を証明する存在として、ElevationSpaceに期待しているとバックリー氏は話します。

「ElevationSpaceとその顧客企業による打上げが数回行われると、市場は一気に拡大する見通しです。製薬会社をはじめとする企業が宇宙にカプセルを送り込みたがるようになるでしょう」

【参考】

ElevationSpace、Redwireのバイオ医薬品技術を自社プラットフォームに統合する計画を発表