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ispace、北九州の月面ランダーの開発・製造拠点を初公開。「九州発ペイロード」の誕生に期待【宇宙ビジネスニュース】

ispaceは、福岡県北九州市に設けた月面ランダーの開発・製造拠点を初めて公開し、新型の月面ランダーの構造認定試験モデルを披露しました。

ispaceは、福岡県北九州市に設けた月面ランダーの開発・製造拠点を初めて公開しました。現地では、2028年の打ち上げを予定している新型の月面ランダー「ULTRA(ウルトラ)」の構造認定試験モデル(以下、構造モデル)を披露。見学会には北九州市の片山憲一副市長も駆けつけ、地元企業との連携に期待を寄せました。

ULTRAの構造モデルと関係者

高さ約10mのクリーンルームで月面ランダーを開発・製造

ispaceの開発・製造拠点は、関門海峡に面した北九州市門司区にあります。衛星など、大型精密機器の輸送などを手がけるキャリムエンジニアリングの事業所内にあり、施設の一部を借りて使用しています。

ispaceは7月29日、新型月面ランダー「ULTRA」をH3ロケットで打ち上げる輸送サービス契約を三菱重工業と締結したと発表しました。打ち上げは2028年を予定しており、ispaceにとって3回目の月面着陸に挑むミッション3として実施されます。過去2回のミッションでは米SpaceXのFalcon 9ロケットを使用しており、H3ロケットによる打ち上げは今回が初めてです。

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ispaceは、H3ロケットによる打ち上げが決まる前の2025年ごろから、ミッション2に関する作業などで一時的にこの施設を利用してきました。

施設の天井は約10mの高さがあります。ULTRAは、ミッション2で使われた「RESILIENCE(レジリエンス)」ランダーよりも大型で、高さは約4メートル、燃料を充填する前の重さは1トン近くに上ります。機体をつり上げて作業するため、天井の高いクリーンルームが必要になりますが、こうした条件を満たす施設は限られているといいます。

ispaceの取締役CFO兼事業統括エグゼクティブの野﨑順平さんは、北九州を選んだ理由について次のように説明しました。

「これだけ精密機械をしっかり扱えるよう、建屋全体がクリーンルームになっている施設で、かつ、我々のようなスタートアップが柔軟に使わせていただける環境は、意外に少ない。開発は数年にわたります。その中では、試験のためにJAXAの設備をお借りするなど、移動が発生します。そうした開発の状況に合わせて、柔軟に施設をお貸しいただけるという意味でも大変貴重な場所で、今回、北九州を選ばせていただきました」

現在は、組み立てを担当する約10人や開発スタッフらが入れ替わりながら拠点に滞在しているということです。

「地元に宇宙産業を立ち上げたい」北九州市が連携に期待

ULTRAは、経済産業省の中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR)で交付が決定した120億円の補助金を活用して開発が進められています。打ち上げ費を含むミッション費用は200~300億円程度を見込み、補助金とペイロード輸送などによる顧客からの売上を充てる計画で、東京科学大学の科学衛星「TSUKIMI」や台湾宇宙庁(TASA)の観測機器、韓国UELのローバーなどを搭載します。

完成したULTRAは、北九州からH3ロケットの打ち上げが行われる鹿児島県の種子島へ運ばれる予定です。

見学会に出席した北九州市の片山憲一副市長は、北九州空港にはこれまで衛星などを輸送してきた実績があることに触れました。また、ULTRAにはアルミニウムやチタン、マグネシウムなどが使用されていますが、片山副市長は市内には金属加工技術を持つ企業などがあることを説明しました。

ULTRAの着陸脚。グレーの部分は軽くて丈夫なマグネシウムが用いられています。

片山副市長は、ispaceを核として、企業や衛星開発に取り組む九州工業大学などが連携することで、新たな宇宙産業が生まれる可能性があると期待を寄せました。さらに、拠点を見学したことで、地元企業との具体的な連携の可能性を感じたと語りました。

「我々も初めて見せていただき、『この事業者とつながるよね』ということを本当に強く感じています。これを機会に、地元に宇宙産業を立ち上げていきたい。ispaceさんがこれからどんどん大きな仕事を受け、世界のマーケットに向けて事業を展開していけるよう、地元としてお手伝いできればと思います。北九州市としても宇宙産業を応援し、一緒に歩んでいきたいです」

北九州市は2024年に宇宙産業推進室を設置。片山副市長によると、この2年間で宇宙産業への参入や連携に関心を持つ企業のネットワークは約150社に広がっています。

また、ispaceの野﨑さんは、地域との連携について「我々として期待したいのは、九州発のペイロードが出てくることです」と話しました。