宙畑 Sorabatake

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どこまで広がる?ー産業革命により広がる地上インフラの民需と、新たな官需【週刊宇宙ビジネスニュース 4/22~4/28】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新! 今週は、IoT市場の盛り上がりにより高まる地上局ネットワーク(地上インフラ)の民需、それによりさらに発生する新たな官需についてのニュースです。

依然として安定した地上インフラの官需

地上局ネットワークの老舗であるイリジウムコミュニケーションズ社は、2019年4月、ノルウェーのKSATとの連携で、チリのプンタアレナスに新しい地上局を設置したことを発表しました。
チリにアンテナを設置したことで、今まで北半球中心だった地上局ネットワークに南半球を追加、ネットワークの冗長性を強化しました。

従来より人工衛星は、国防や通信など、国のインフラとして使われています。インフラとしての需要は継続的に安定してあるため、人工衛星からのデータを受信するためのアンテナの需要も継続的にあり、そのアンテナが壊れることなく安定して稼働することが求められてきました。

イリジウム社の新たな地上局 Credit : Iridium

高まる地上局ネットワークの民需、官需

一方で、衛星通信の民間需要も動きが活発になってきています。

1月にイギリスの非営利企業Catapult社とパートナーシップを結んだインフォステラ社は、Innovative Solutions in Space (ISIS) 社、Teledyne Paradise Datacom社といった地上インフラシステムの主要メーカ数社とパートナーシップを締結し、同社の提供するアンテナシェアリングサービスStellarStationへの接続を進めると発表しました。

NASAや国防総省とも契約を結ぶAtlas社は、昨年くらいからBlackSky社やSpace Systems Loral社などの顧客に地上インフラを提供していました。AWSと提携し、2016年からはクラウドベースの地上局ネットワークFreedomを提供しています。
同社は4月、米国空軍ミサイルシステムセンターから、マルチバンド・マルチミッション要件を満たすための電子制御アンテナアレイのプロトタイプミッション契約を締結しました。

民需を目当てに立ち上がった企業が、新たな官需にも対応するようになってきています。

Atlas社の地上局ネットワーク Credit : Atlas

民需の高まりの背景は第4次産業革命?

イタリアのスタートアップLeaf Space社は、来年末までに地上インフラの数を現在の3倍に増やし、小型衛星への通信サービス提供をスケールアップするため、数ヶ月中に増資を予定していることを発表しました。イタリア、スペイン、アイルランド、リトアニアの計4つの地上局を運営していましたが、さらに、米国内1箇所と赤道付近1箇所を含む計8箇所の地上インフラを整備するそうです。

通信インフラの民間需要の背景には、第4次産業革命ーーーモノのインターネット化によるトレンドが関連していると考えられます。IoT市場では、いつでも、どこでも通信できることが求められます。
事実、Leaf Space社は64のキューブサットの軌道投入を目指すスイスのスタートアップAstrocastやオーストリアのキューブサット事業者Fleetなど、IoT向け通信インフラを提供したいとする事業者を顧客に持っており、衛星が唯一の通信手段である遠隔地にあるセンサーやデバイスへの接続を提供するとしています。

Leaf Space社はIoT向け通信インフラの顧客需要増加により増資を検討 Credit : Leaf Space

IoTや5Gなど民需の通信需要増加に伴いスタートアップの動きが活発になってきています。民需で技術が向上すると、新たな官需にも対応できるようになる。さらに官需で技術が向上すると、新たな民需にも対応できるようになる。民需と官需の往来で、通信インフラの需給はどこまで広がって行くのでしょうか。

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