宙畑 Sorabatake

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競合多くひしめく小型ロケット業界の話題続々と【週刊宇宙ビジネスニュース 8/5〜8/11】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

小型衛星・ロケット分野の従事者が一堂に会するSmall Satellite Conferenceが行われていたこともあり、小型衛星・ロケットに関連する話題が多く発表されました。

まずはVector(ベクター)社から。
Vector社は、SpaceX社に所属していたメンバーが創業した、小型ロケットを開発している企業です。
日本では、2018年に兼松が提携を発表したことでも話題となりました。

8/7に同社はアメリカ空軍と、Small Rocket Program-Orbital (SRP-O) プログラムの建付けにより、2021年に3U(10x10x30cm相当)の超小型衛星を複数機打ち上げるという内容で、約4億円の契約を結んだことを発表しました。
計画していた2018年の打ち上げも開発の遅れにより流れていたものの、投資は継続して受けていた*1ことや、上記のような話題もあり、着実に商用打ち上げまでのステップを踏んでいたのかと思われました。
しかし、それも束の間、8/10にVector社のCEOであるJim Cantrell氏は財政上の理由により退任へと追い込まれた、という話題が。
CEOのみならず、現場の開発者も複数人、突然に解雇となっているようです。資金面の問題から、一時的に業務を停止したというプレスリリースも出ており、続報が待たれます。
小型ロケットを開発しているスタートアップは多く、今後も同様の話題は出てくるかもしれません。

小型ロケットで他の話題としては以下の3つがありました。

  • 航空機にロケットを搭載し、空中からロケットを打ち上げることを計画しているVirgin Orbit社による複数機体制
  • インドの宇宙機関(ISRO)が開発している小型ロケットSSLVの年末初打ち上げ
  • Vector社に先行してロケットの商用打ち上げをしているRocket Lab社によるロケット回収計画

Virgin Orbit(バージンオービット)社は、ロケットを打ち上げ可能な航空機を複数機有することで、同一軌道に時間差で衛星を投入するサービスを展開する予定だ、と発表しました。
同一軌道に時間差で衛星を投入できるようになることで、OneWeb(ワンウェブ)社のように、衛星によるサービス網(コンステレーション)を構築しようとしている企業は、想定した軌道に衛星を配置しやすくなるため、計画を効率的に進めることができるようになります。
同社の打ち上げ費用が高額すぎる、とOneWeb社が発言していることでも先日話題に挙がりましたが、実際にサービスインする際にどの程度の価格帯になるのか、気になるところです。

インド宇宙機関が開発するSSLVロケット。
PSLVという大型なロケットに、複数の衛星を載せて今までは打ち上げてきましたが、小型ロケットの需要があるとみて、小型ロケット分野へと参入してきました。
年末に打ち上げを予定しており、相乗りでの打ち上げ機会を提供しているSpaceflight(スペースフライト)社が同ロケットを買い上げたようです。
小型ロケットの開発を発表した2018年には、3日・6人で製造可能なロケットを目指す、と言っていましたが、この点が実際にどうなったのかも注目点です。

3つ目のRocket Lab(ロケットラボ)社は少し毛色が異なり、打ち上げたロケットの再使用計画を発表しました。
同社は、打ち上げた小型ロケットの第一段にパラシュートを取りつけ、落下の途中でヘリコプターにて回収する、ということを試みているようです。

Rocket Lab社は、これまでの商用打ち上げは、6回すべて成功しています。再使用できることによるメリットは当然ありますが、そのためには新たに機体を回収するためのシステムを組み込む必要もあり、多くのプレイヤーが参入しようとしている小型ロケット分野*2の中で、今回の計画が吉と出るか凶と出るか、については判断が難しいところです。
いずれにしても、小型ロケット業界の雄であるRocket Lab社からは目が離せません。

と、ここまで小型ロケットの話題でしたが、大型ロケットの話題も1つ。
今までは大型衛星を中心に打ち上げてきたSpaceX社が、先日、小型衛星向けの相乗り打ち上げもサービスとして提供していく予定だ、とアナウンスしました。
150 kg以下の衛星を数億円で打ち上げられるようになる、ということで、小型ロケット単体で打ち上げるよりは少し安くなることもあり、需要のバランスがどのようになっていくのか、注目していきたいところです。

*1…Vector社は、2016年4月26日のAngelラウンドでの資金調達をはじめ、計5回のSeedラウンドの資金調達に成功。また、2018年10月19日にはシリーズBラウンドで約70億円の資金調達に成功しており、累計調達額は約110億円にのぼっています。

*2…小型ロケット打ち上げを試みている企業例

Credit : sorabatake

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参考

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SPACEFLIGHT INC. PURCHASES AND FULLY MANIFESTS FIRST-EVER COMMERCIAL SSLV MISSION FROM NEWSPACE INDIA LIMITED (NSIL), THE COMMERCIAL ARM OF ISRO, INDIA

Rocket Lab Announces Reusability Plans For Electron Rocket

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