4000以上のプロジェクトに貢献する全世界デジタル3D地図「AW3D」の展望と、自社衛星が生み出す新たな価値とは。NTTデータ・Marble Visionsインタビュー
宇宙戦略基金の「高分解能・高頻度な光学衛星観測システム」実施機関として採択された株式会社Marble Visionsの本間さや香さん、NTTデータの神立梨沙さんに、AW3Dの実力と将来についてうかがいました。
2014年、株式会社NTTデータ(以下「NTTデータ」)と一般財団法人リモート・センシング技術センター(以下「RESTEC」)」は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」)の衛星画像から全世界の陸地の起伏を表現したデジタル3D地図を作成し、「AW3D」のブランドで提供を開始しました。これまで世界130カ国・4,000以上のプロジェクトでの利用実績があり、2024年には10周年を迎えました。防災・災害対策から都市開発計画、身近な携帯電話の基地局整備までなくてはならない存在になったAW3Dに、今後はNTTデータが2024年7月に設立した衛星観測サービスの新会社「Marble Visions」が自ら開発、運用する高分解能・高頻度な光学衛星という存在が加わります。
本記事では、宇宙戦略基金の「高分解能・高頻度な光学衛星観測システム」実施機関として採択された株式会社Marble Visions(以下、Marble Visions)の本間さや香さん、そしてNTTデータの神立梨沙さんに、AW3Dの実力と将来についてうかがいました。

2024年に10周年を迎えたAW3Dのはじまり
宙畑:2024年に始動から10年目を迎えたAW3Dは、これまで4,000以上のプロジェクトでの利用実績があるとお聞きしています。NTTデータがどのような位置づけでAW3D始められたかのか、またお客様やソリューション提供会社に衛星データが浸透する世界をどのように目指してこられたのでしょうか?

本間:AW3Dは、2013年ごろにJAXA様とともに「だいち(ALOS)」の活用を考えるなかで、全世界の陸域を対象とした3D地図にし、利用を広げる取り組みを進めていこうとしたことがきっかけです。JAXA様、RESTEC様の知見を活かして3D化の共同開発をし、官民連携の大きな取り組みにしようと考えました。2014年にはAW3Dブランドとしてパートナーとの共同販売という形で全世界に販売開始しており、今もなお市場創出のために連携・協力を続けています。
AW3Dが生まれる以前にも全球に近い、地表の約80%をカバーするデジタル標高モデルにはスペースシャトルの観測データから作成された「SRTM(Shuttle Radar Topography Mission)がありました。しかし、SRTMの解像度は30mで、定期的に更新されるものではありませんでした。
そこで、全世界の陸域をカバーする5m解像度の数値標高モデル[Digital Elevation Model(DEM)]を整備し、「標準版地形データ」として提供を始めたのです。すると、国内はもちろん海外からも多くの引き合いをいただき幅広く使っていただける製品になりました。2015年からは、米国の衛星運用会社Maxar Technologies社(以下「Maxar社」)の衛星画像を活用した「高精細版地形データ」の提供を開始しました。そこからアップデートを続け世界最高クラスの0.5m解像度を実現したことは大きな転換ポイントになりました。
その後2019年には、新しいアルゴリズムで標準版地形データを2.5m解像度にアップデート。また、利用ニーズの高い日本に関しては、全域を地形データ、衛星画像、建物3Dデータで整備した「日本全国データセット」も提供するようになりました。2022年にはこのデータセットをより使いやすいようにアップデートするなど、絶えず新しいサービスを開発し、2024年に10周年を迎えることができました。
宙畑:2014年ごろは社会の中での衛星データ利用はまだ限定的だったと思います。かなり大きな決断だったように思いますが、決断のきっかけはどのようなものでしょうか?
本間: JAXA様の議論の中で、日本が世界で認められる技術の一つとして「3D地図を作ろう」と決断できたことがすごく大きかったですね。実際に私たちが国内、海外とさまざまなお客様とお話をしていく中でも、2Dデータだけでなく、今後シミュレーションをより正確に行っていくために、正確な高さの情報を持った3Dデータが必要だと考えるお客様は非常に多いと感じていました。
例えば、世界各国の防災分野における活用や、地図を作れない地域での利用です。航空機を飛ばすことができない、そもそも測量に入ることができない地域というのもまだまだ世界中には非常に多く存在します。そういった地域で地図の代替として使っていただくニーズは想定以上でした。
宙畑:NTTデータはもともと衛星データの利活用には関わっていたのでしょうか?
本間:NTTデータの中では20年以上にわたって、衛星事業に取り組んでいました。実は規模は小さかったですが、衛星を使って解析し、利用してもらうという技術開発はNTTデータの中でずっと磨かれてきていたのです。
JAXA様とともに積極的に地球観測衛星の開発と利活用推進に取り組み、私たちが今まで培ってきた技術を投入できるという事業判断があったのが2013年以降の取り組みだったのです。多様な衛星が打ち上げられて、解像度も精度も良くなり、使える幅も広くなり、「AW3D」として広がってきているのは市場のニーズと上手く重なったからこそと思っております。
NTTデータとMarble Visionsで働く2人の役割
宙畑:お二人は衛星データ利用について、NTTデータでどのような業務を担われているのでしょうか?
本間:私は新卒でNTTデータに入社し、もともとは衛星とは異なるソリューションの販売などを行う営業を行っておりました。2012年ごろからGISソリューションの商品企画などに携わることになり、2014年からは衛星画像コンテンツに関する企画・販売に関わっています。ほぼ10年間、衛星事業の営業・販売担当として、国内の市場拡大に関わり、主に建設土木業界やテレコム業界、政府開発援助(ODA)向けの利用促進などを幅広く担当してきました。現在は昨年7月に設立されたMarble Visionsという会社に出向し、経営企画担当兼事業推進担当として業務を遂行しています。

神立:私は新卒で地図会社に入社し、デジタル地図データのソリューション営業担当として6年半ほどキャリアを積み、2020年7月に中途採用でAW3Dのチームに加わりました。地図データを整備する際は、現地調査や取材を行い、新しい施設や道路の開通情報を得ることが一般的です。しかしながら、鮮度の高さと品質を維持するためには多くの人手を要するため、従来の整備手法には課題を感じていました。また、自動運転の支援やドローンの運航管理など新しいニーズも生まれており、2Dデータだけでなく3Dデータがあれば、地図の用途が広がるのではとの思いもありました。衛星画像とデジタル技術で全世界の3D地図を作るAW3Dの革新的な手法はとても魅力的で、この会社に転職しました。

神立:今は主に国内の中央省庁や民間企業のお客様を多く担当しています。もともと私が勤めていたような地図会社は決して競合というわけではなく、地図を図化するための素材としてもAW3Dは活用されており、そのような案件も担当しています。
また、AW3Dの標準的なカタログ製品を販売するだけでなく、新しいユースケースを創出することも重要な業務のひとつです。Marble Visionsを含め、世界各国でこれから打ち上げが予定されている次世代衛星の活用を見据えて、お客様と共にPoCにも取り組んでいます。
AW3Dの4000を超える国内外の具体的な利用事例とは?
宙畑:10年間の事業でユースケースが4,000を超えているということについて、国内と海外の利用比率はいかがでしょうか?
神立:AW3Dは代理店を介して世界各国にデータを提供しており、2014年当時から海外案件の比率が高かったのですが、このところは直接お客様とやり取りしながら開拓した国内の大型案件も増えてきています。そのため、現在の利用比率としては国内が少し多い状況となってきました。
AW3Dのコアの強みは、衛星画像から高精度な3Dを作る技術です。GISの背景図など2Dデータを提供する案件もありますが、正確な高さや形状のデータが必要とされる、解析やシミュレーションの領域で使われることが非常に多いことが特長です。
一例としては、電波伝搬シミュレーションが挙げられます。通信会社は5Gの基地局を整備する際、電波がどのように空間を伝わり、離れた場所に到達するのか、デジタル空間上でシミュレーションを行います。ここで使用するデータは、電波の障害物となる建物や樹木の高さや形状が正確に再現されており、最新の現況を反映したものである必要があります。国内だけではなく海外でも事例が多いユースケースですね。

神立:他にも、高精度な地形データが必要になるような浸水シミュレーションや、環境分野では新しい建築物ができる場合に、周囲の建物や樹木の高さ、形状がどのように風の動きに影響を及ぼすのかといった風況のシミュレーションや日照シミュレーションなどでも利用が進んでいます。



神立:さらに、新しい利用用途としては、ドローンの運航の際に、障害物になるようなものがないのかを把握をするといったケースもあったりします。
宙畑:国内と海外とで利用ニーズの違いはありますか?
神立:国内ではAW3Dの解像度と精度の高さ、更新頻度が評価され、自治体業務でも多く活用されるようになってきています。都市計画基本図の更新や固定資産税調査においては、従来は航空測量を行うことが一般的でしたが、予算の制限で適切な頻度で画像の更新ができていない自治体も存在します。衛星画像を活用することにより、高頻度かつコストを抑えて更新することが期待できます。
また、実利用に向けてはいくつかのハードルがありますが、これからどんどん利用が進んでいくだろうと思っているのが森林の分野です。森林資源調査は高い精度が求められるため、航空レーザー測量を利用することが一般的だったのですが、全国を対象に計測するには10年近くの時間を要し、コストもかかります。高頻度に資源量を調査するためには、別のリソースとの組み合わせも求められており、そこで高頻度かつ高精度な衛星画像データがあれば活用できるのではと期待されているところです。
一方で、海外では資源や建設・土木分野で広域かつ最新のデータが必要になる場合に活用されていますね。
お客様との会話を続けた結果の4,000事例
宙畑:利用分野がかなり広がってきていると分かりました。衛星データの利活用推進は比較的新しいデータであるがゆえに、それほど関心のなかったお客様にも使いたいと思っていただくことが非常に重要だと考えています。その点、NTTデータで営業をされる際に意識していることはありますか?
本間:新しい分野で使ってみたいというお客様のところに足を運び、技術側とも密に連携しながら業務で使えるようカスタマイズをし、「これならば使える」となるまでフィードバックをいただきました。業務に応じて解析の幅広げ、何度も商品企画会議を繰り返してソリューションを増やしてきております。
宙畑:お客様との最初の接点は、いわゆる飛び込み営業のような形と、お客様側からアイデアが出てきて、お問い合わせが来るケースとどちらが多いですか。
本間:スタート時に衛星画像を使って何ができるかを知られていなかったので、まずは衛星画像を活用いただける注力分野を決め、「お客様の業務の課題はこれだよね」と仮説を作ってご連絡をして……ということを繰り返し続けました。そこから広がってきたのが建設・土木やエネルギー(電力)分野、テレコムの分野ですね。
事例が広がった結果、だんだんと自分たちのところも使えるかもしれないというお声をいただくことも多くなってきました。今はこちらからの営業とお客様から来ていただく場合とおよそ半々でしょうか。
神立:最近はありがたいことに引き合いがとても増えてきていますね。宙畑さんなどのメディアによる発信の効果もあって衛星活用がかなり民間にも浸透してきていまして、使ってみたいと思う方が増えてきたこともあると思います。
私たちが大事にしているのは、自分たちの技術とお客様のニーズが合うユースケースを作ることです。例えば「都市の変化をいち早く捉えたい」というお客様に対して、対象エリア全域の衛星画像を定期的に入手し、変化箇所を抽出することを提案するなど、衛星画像と解析技術がどのようにお客様の業務に役立つかを考えています。お客様の課題と解決策について仮説を立てて、こちらから意見交換や訪問を打診することも多くあります。
宙畑:AW3Dを広い分野の方々に使っていただけるようになっていく中で、印象的だったお客様からの反応や、対話を繰り返しながら事例創出にいたるまでのプロセスはどのようなものでしょうか?
本間:AW3Dのチームが数名程度だった頃から、お客様との距離を大切に、しっかりとフィードバックを得てやっていこうと取り組みをしてきました。
そうすると最初はネガティブな反応ももちろん多くなります。プロダクトを販売しただけですと、どうしてもお客様のイメージに合わなかったり、「もっとこうであれば使えたのに、ここまでしか使えなかったよ」といったご意見です。そこで販売後にお客様先に通い、実際のお客様の環境での解析結果を見せていただきながら議論をしたりもしています。
ネガティブなご意見への対処をしっかりと行い、そこからさらにお客様からのフィードバックを得て、技術担当と話をして、というステップにつなげてきました。
神立:現在はAW3Dのチームは数十名規模となりました。直販および代理店などのパートナー連携で年間数百件のプロジェクトがあるため、営業担当者は複数のチームに分かれて活動しています。製造ラインが自社にあり、技術メンバーを抱えているところがとても強みですから、日ごろお客様からいただいたご要望や課題感は、技術メンバーにフィードバックをして製品開発に活かしています。技術メンバーと一緒に提案に行くこともありますね。
新しいお客様の開拓に他分野業界の展示会を有効活用
本間:毎年、さまざまな展示会に注力分野を決めて出展しています。1年ほど前には森林分野のイベントに出たところ本当に反響が多かったです。「衛星でこんなことができるようになるならもっと早くやってほしい」といったかなり好意的な反応をいただいたきました。過去には電力インフラやテレコム系のイベントにも出展しています。
また、展示会に出展するからには何か新しいものをと考えて、ブースでは新たな解析結果などを積極的に紹介しています。森林分野の展示会ではAIによる樹木ポリゴンの作成や樹高に加え、樹種の分類などの結果を利用者の声と合わせて提示することにより、来場いただいた方々との会話のきっかけとしています。新しいものをどんどん投入していることも展示会で注目を集めるためのポイントなのかもしれません。

神立:展示会では「これまでドローンとか航空測量を使っていたけれど、衛星の選択肢もあるかもしれない」といった興味や関心をよくうかがいます。これまで人が直接確認しにいっていたような業務、例えば何らかの変化の調査やインフラ保全といった業務でも「最近の衛星画像の解像度の高さと高頻度な撮影があれば置き換えられるかもしれない」といったご意見もありますね。これまで衛星をご存知なかった方へのアプローチという意味で展示会はいつも良い反応が得られると思います。
2024年はAW3D10周年記念ということでイベントがとても多かったのですが、思った以上に反響があったのはNTTグループ内の最新の技術を展示するNTT R&D FORUMでした。グループ連携で一緒に提案をしに行きましょうという提案が多くありました。国内では地域に密着している企業だからこそ、お客様に直接提案に行けるということもありますので、案件の種類によってはグループ連携で一緒に取り組むことができて、とてもよかったと思いますね。
自社独自の光学衛星コンステレーション構築でデジタルツインの実現へ
宙畑:今後、ますます地球観測衛星が打ち上がり、衛星データの量が増えることが想定されます。衛星データアーカイブ活用は大きな利点の一つですが、1ペタバイト分のデータには地球198個分が含まれるといいます。今後はさらに巨大なデータになるのではないでしょうか?
神立:まさに、衛星データは大量のアーカイブを活用できるので、2時期、3時期といった複数の画像から変化箇所を抽出してほしいといったニーズは多くあります。AW3Dは自社製品の製造のために定常的にAIを活用しており、これまでの数多くのプロジェクトで培った解析技術のノウハウを有しています。そのため、お客様から解析のご依頼をいただいた際に、すぐに対応できることも強みです。
本間:私たちには、「4D」つまり時間軸をきちんと管理し、より高い頻度でデータを提供できるようにしたいという思いがあります。大きく2つの指標がありまして、1つ目は、日本全国、全世界レベルでベースマップを作る取り組みです。これまで4~5年に1度の頻度で更新するのが精一杯でしたが、それを1年に1度にしていこうと思っています。2つ目は、東京など都市レベルの局所的なものでは、1~2年に1度の更新から数カ月、最終的には数週間に1度程度にしていこうとしています。
例えば、東京の3Dデータを1週間に1度更新してみると、思っている以上に都市は変化しており、新しいビルが日々出来上がっていく様子などがわかります。そうしたものができてくると高さの情報も含めた3Dデータをかなり現実に近い形で捉えられる。これからの時代においては、リアルタイムにより近い中で都市の分析・シミュレーションを行い、迅速かつ正確な意思決定をしていかなくてはなりません。その一助となっていくことがデジタルツインの世界の実現だと思っています。
神立:これまでは自分たちでは衛星を持っていなかったので国内外のパートナー企業から素材となる画像を入手して、自分たちで付加価値加工する方法を取っていました。衛星の数がどんどん増えて、2Dデータであれば日本国内を毎年に近いレベルで更新できるようになりましたが、3Dデータを作るのはそう簡単ではありません。高さを計測するためには、複数方向から撮影された画像が必要で、精度の高さを実現するためには角度など撮影条件をコントロールすることも求められます。現在運用されている衛星は、2Dデータ用の撮影が基本となっているため、現状は3Dデータを作るためにその都度、新規撮影を行うことが多く、ALOSをベースに全世界のデータを作ったときのようなことは今の衛星だとうまくできていません。Marble Visionsができて、自分たちで衛星を運用することで、3Dデータを面的に更新できるようになるという期待感はすごくあります。
宙畑:Marble Visionsが発足して、宇宙戦略基金の技術開発テーマ「高分解能・高頻度な光学衛星観測システム」に採択されました。近い将来にNTTデータ自身で地球観測衛星を運用、データを取得されていくようになるわけですね。AW3Dにも大きなアップデートあるのではと思いますが、Marble Visionsが作る未来と、AW3Dで実現したいことについてお聞かせください。
本間:お客様のニーズを聞き続けてきた私たちだからこそできる、顧客ニーズを設計に反映させた衛星の開発、運用、データ活用から提供までを一気通貫して行うことをMarble Visionsのミッションとして考えています。これまで最もお客様に近い立場にいて、「もっと高頻度に撮影してくれれば、もっとこういったところに使えるのに」「もっと安くなれば」とさまざまなご意見をいただきました。
お客様の本当に求める4D、デジタルツインの世界を実現していくためには、自分たちで衛星の設計から製造、運用までやっていきたいと思うにいたりました。
例えば、40~50cmといった高い解像度で数週間に1度更新ができるような仕組みができれば、都市計画レベルでの活用もできるようになってくるため、民間地図だけではなく、公共地図でもより衛星画像が使われるようになるでしょう。その世界が近づくと、お客様の活用の幅もさらに広がると考えています。
例えば、高精度と高頻度が揃えば今はすべて人手でやっているインフラの巡視を一部衛星で代替することによってコストを下げられるほか、浸水深予測の精度向上やドローンとの連携などがますます進むでしょう。

神立: 私は、3Dの変化把握にも期待しています。これまでアーカイブされた2Dの画像を比べて変化の起きた場所を調べることはできていたわけですが、それが3Dになると建物が新しくできていく様子、壊されていく様子など変化の詳細を正確に確認できると思います。街の変化をいち早く察知して、何かの営業活動につなげたいお客様、解析やシミュレーションを手掛けているお客様にも、今まで現地に見に行かなくてはいけなかったことがデジタル空間の中で業務ができるようになります。
衛星画像を見ていると、都市や街が変わっていくスピードはとても早く、建物が取り壊されたら、すぐに次の建物が建っていたりしますが、現状ではリアルタイムに追いかけることが難しいのです。世の中には高頻度で撮影できる衛星もありますが、解像度は低いものがほとんどでした。40~50センチという解像度で高頻度の撮影ができると、建物一棟一棟レベルの変化も見えるようになりますし、そこに高さの変化があれば工事の状況を見るとか、インフラ設備の周辺で何か異変が起きてないかを見るとか、樹木の伐採や成長が分かるようになります。そこにすごく期待しています。

宙畑:最後に、宙畑の読者の皆様に向けてメッセージをお願いします。
本間:Marble Visionsという新しい会社を作り、今後は衛星のハードウェアの面も手掛けていきます。するとこれまでお客様から期待されていてもできなかった取り組みができるようになっていくと思いますし、していかなければならないという責任感も持っています。この記事を読んでいるこれからデジタルツインを実現していく皆様が、社会課題を解決していくステップにつなげていけるように、そして衛星データがその一助となるように、より一層取り組みを加速していきますので、ぜひご期待をいただければと思います。
神立:4,000 という利用実績の数にも裏付けられている通り、私たちがお客様とのコミュニケーションを重ねて衛星画像ソリューションや3D地図の用途を開拓してきたという自負があります。これから打ち上げられる新しい衛星の活用により、これまでは解像度や頻度の面で難しかったことも、近い将来対応できるようになると思います。これまで衛星データに触れたことがない方にも、「もしかしたら衛星だったらもっと効率的にできるかも?」と課題解決のヒントに繋がり、関心を持っていただければ嬉しいです。これからもお客様と共に、社会課題の解決や新しいユースケースの創出に取り組んでいきたいと思っています。