宙畑 Sorabatake

宇宙政策

ASTRO GATE、スペースポートを軸に宇宙輸送技術の規格化や宇宙教育の連携加速

スペースポートの企画・運営を手がけるASTRO GATEは、内閣府調査とISUとの覚書締結を同時に発表。制度と人材育成の両面から宇宙産業を支える基盤づくりを推進しています。記事の最後には代表取締役の大出大輔さんへの3つの質問とその回答も掲載しています。

スペースポートの企画・運営を手がけるASTRO GATEは、2025年7月に内閣府が推進する宇宙輸送技術の規格化に関する調査への参画と、国際的な宇宙教育機関であるInternational Space University(ISU)との連携という2つのプレスリリースを発表しました。

それぞれのリリースから、同社が宇宙産業の発展に向けた基盤の構築を着実に前に進めていることがうかがえます。まずは、それぞれの取り組みに関する概要を紹介し、最後にASTRO GATE・代表取締役の大出大輔さんに直接伺った3つの質問への回答も掲載しています。ぜひ最後までご覧ください。

宇宙輸送の“共通ルール”を探る──内閣府調査に参画し、規格化・標準化を検討

ASTRO GATEは、日本総合研究所やパシフィックコンサルタンツとともに、内閣府が委託する「宇宙輸送技術に関する規格化・標準化の在り方に関する調査」に参画。

この調査は、ロケットやスペースポートといった宇宙輸送インフラに関する技術・サービスの規格化を通じて、日本の宇宙輸送分野の国際競争力を高めることを目的としています。

米国を中心に進むロケット打ち上げ規制の国際調和が進められるなか、日本独自の強みを活かした制度設計が求められています。

調査では、国内外の宇宙輸送に関する制度・規格の動向調査と日本が取り組むべきテーマの検討が進められます。

また、単なる調査という枠を超えて、以下のような取り組みを行うこともリリースでは言及されていました。

・日本における規格化・標準化のニーズと課題の整理
・産官学連携によるステアリング委員会の設置と議論
・次年度以降の継続的な活動体制の構築

ASTRO GATEは、複数のスペースポートを企画・運営する立場から、現場視点での知見を提供するとのこと。安全性や互換性の確保、事業者間の連携促進といった観点から、実効性ある制度設計がおこなわれることが期待されます。

本リリースについて、ASTRO GATE代表取締役の大出大輔さんは以下のようにコメントしています。

「この度、内閣府様による日本の宇宙輸送に関する重要な調査事業に携われることを、光栄に思います。弊社は世界中の国や自治体とスペースポートの企画運営に取り組むとともに、世界中のロケット会社等と、打上げに向けた技術的交流をしています。これらの知見とネットワークを活かし、共同で本調査を実施する日本総合研究所様、パシフィックコンサルタンツ様とともに、日本の宇宙輸送の合理的な規格化・標準化に取り組んでまいります。」

宇宙教育の“ハブ”を目指して──ISUと連携、アジア太平洋での人材育成を推進

ASTRO GATEは、フランスに本部を置く国際的な宇宙教育機関・International Space University(ISU)と、教育・人材育成・イノベーションの分野での連携に向けた覚書(MoU)を締結しました。

この連携は、スペースポートを活用しながら、教育や地域社会とのつながりを深めることを目的としており、以下のような分野での協力が検討されています。

・宇宙教育プログラムの共同企画・実施
・地域に根ざした宇宙産業の育成支援
・スペースポートを活用した市民参加型の教育・啓発活動
・イノベーション・エコシステムの形成

ASTRO GATEはスペースポート運営の専門知見を、ISUは学際的な宇宙教育の国際的ネットワークを持ち寄り、本取り組みは、ISUが推進するアジア太平洋地域における多様なステークホルダーとの連携戦略の一環であると明記されています。

また、「特にスペースポートというインフラが市民参画や教育の促進に果たす役割に焦点を当て取り組みを進めていきます」とも記されています。

日本に限らず世界各国でスペースポートが増えるなか、いかに宇宙産業がその地域にとって重要なものとなり得るかをスペースポートが開発される地域に住む市民の理解を得ながら進めるうえで非常に重要な機能となることが期待されます。

ASTRO GATEのCEOである原田悠貴さんは、本リリースについて以下のようにコメントしています。

「宇宙教育の世界的リーダーであるISUと連携できることを大変光栄に思います。私たちは、スペースポートが“学び・刺激・共創”の場として大きな可能性を秘めていると考えています。本連携を通じて、日本およびアジア太平洋地域における次世代の宇宙人材の育成に貢献してまいります。」

また、ISUの学長であるDr. John Wensveen氏も以下のようにコメントしています。

「ISUは、アジア太平洋地域におけるネットワーク拡大の一環として、ASTRO GATEとの連携の機会を嬉しく思っております。学際的な宇宙教育の新たな展開を模索する中で、ISUは引き続き、アカデミア、政府、民間企業との協力を通じて、グローバルな連携とイノベーションの推進に貢献していきます。」

ASTRO GATE・代表取締役の大出大輔さんに訊いた3つの質問

ASTRO GATEのHPには以下の3つの事業を展開しているとあります。

スペースポート事業
世界各地のスペースポートの企画から運営までを総合的に支援。

ロケット事業
ロケット打上げ・輸送関連のサポートサービスを提供。

新規事業開発
宇宙産業への参入を検討する企業に向けた調査・コンサルティングを通じた新規事業開発を支援

今回発表されたのはスペースポート事業の一環とも捉えられますが、宇宙輸送のルール作りと宇宙教育という、専門性の異なる支援です。ASTRO GATEが考える理想のスペースポート事業、引いては宇宙事業とはどのようなものなのか、同社の代表取締役である大出さんに以下の3つの質問に回答いただきました。

1.宇宙事業参入のきっかけとこれまで
2.ASTRO GATEが実現する理想のスペースポート事業と宇宙産業
3.今回の2つのリリースから生まれる成果として期待すること

1.宇宙事業参入のきっかけとこれまで

A.大手建設会社の新規事業部に配属になり、AIやブロックチェーンや宇宙を調査しました。

ほぼ全てのビジネスが金とマンパワーで勝敗がつき、勝者全取り構造のため、日本が勝つのは難しいと感じたものの、スペースポートは地理的優位性を活かせること、世界に分散して必要なことから、最も勝ち目があると判断し参入しました。

北海道スペースポートを企画運営するSPACE COTAN株式会社には創業時から参画し、同取締役COOとして、資金調達やロケット会社の打ち上げ対応を実施。

その後、世界中のスペースポートを企画運営するために、ASTRO GATE株式会社を設立しました。福島でロケット打上げを実現させるとともに、現在は、ケニアやモルディブでのスペースポート企画運営も行っています。

2.ASTRO GATEが実現する理想のスペースポート事業と宇宙産業は?

A.1つのスペースポートを1つの運営会社で運営するこれまでのモデルでは、多くのスタッフが必要となり、運営費削減に限界があります。

ASTRO GATEでは世界中で複数のスペースポートを企画運営することにより、人員合理化し、劇的に安価にスペースポートを運営するとともに、ロケット会社に対して複数のスペースポート選択肢を提示することが出来ます。

また、将来的なP2Pネットワーク構築においても、同一オペレーターによるスムーズな連携を実現します。

3.今回の2つのリリースから生まれる成果として期待すること

A>内閣府の調査では、世界中の宇宙輸送に関する規格等を調査し、我が国の宇宙産業発展に向けた戦略を検討します。これにより世界中のスペースポートを扱う弊社は、より深く世界各国の戦略を理解した上で、世界中のスペースポート企画運営戦略を検討することが出来るでしょう。

また、スペースポートに取り組みたい世界各国が期待することは、地域における宇宙教育もセットで取り組み、国を科学立国することです。この点について、ISUは宇宙教育を世界でリードしてきた存在であり、心強いパートナーとして、スペースポートと宇宙教育をセットにした地域振興に取り組むことができます。

以上、様々な国、機関、企業との連携を続々と発表するASTRO GATEの大出さんに3つの質問にお答えいただきました。日本の地理的優位性にいち早く気づき、素早く行動に移す同社の思いが詰まった回答だったように思います。今後も、ASTRO GATEが日本の宇宙産業を成長させる基盤構築をますます進めることが期待されます。

【参考記事】
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000148328.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000148328.html