宙畑 Sorabatake

宇宙ビジネス入門・基礎

31歳・衛星通信・放送業界「宇宙業界の給与相場と、転職した会社が倒産した場合のキャリアパスを知りたい」【宇宙ビジネスキャリア相談室】【PR】

宇宙ビジネスに関心を持つ皆さまからキャリアに関する質問を募集。「給与相場」「宇宙業界内の事業領域区分とキャリアパス」「会社の継続性」に関する質問に宇宙人材エージェントを運営する株式会社インバイトユーの河辺さんにご回答いただきました。

かつては一部の専門家だけの世界と思われていた「宇宙ビジネス」。

しかし近年は、民間企業の参入や技術革新により急速に拡大し、航空宇宙工学を学んだ人に限らず、自動車業界、電機業界といった理系の方のみならず、IT・金融・コンサル・広告など、他業界で培ったスキルを生かせる多様な人材が活躍できるフィールドへと変化しています。

とはいえ、「どんなスキルが役立つの?」「どうやってキャリアを築けばいい?」といった疑問や不安を抱える方も少なくありません。

そこで宙畑では、宇宙ビジネスに関心を持つ皆さまからキャリアに関する質問を募集し、回答するという企画を実施。本企画では、Xやメールマガジンで寄せられた疑問とその答えをまとめ、宇宙業界でのキャリアの可能性を読者の皆様にお届けします。

では、さっそく最初の質問を紹介します。最初にピックアップさせていただいたのは、宇宙業界に興味を持ったきっかけが「顧客理解のために宇宙業界のリサーチを行っていた際に宙畑の記事を読み興味を持った」という31歳、文系出身で、衛星通信・放送企業の営業担当をしていたという方からの質問です。

Q1.給与の相場を教えてください
Q2.宇宙業界内ではどのような事業領域区分があり、業界内での転職を含めどのようなキャリアパスがあるのか
Q3.スタートアップが隆盛している印象があるが、当然ながら解散してしまった企業も相応にあると考える。その環境におられた方のその後のキャリアパスを知りたい。

この3つの質問にご回答いただいたのは宇宙人材エージェントを運営する株式会社インバイトユーの執行役員、河辺真典さんです。

【河辺真典さんのご経歴】
1993年大手繊維会社にて生産技術職に従事。1998年リクルートエージェントにて製造メーカー及び技術系分野の人材紹介を主に担当後、人材開発マネジャーとして社員採用と育成を経験。
2006年から技術系人材紹介会社メイテックネクスト設立に携わり、17年勤務。後半6年間は代表取締役社長として事業を牽引。
2023年ディップ株式会社にて執行役員として介護人材紹介事業責任者を担う。
2024年10月より株式会社インバイトユー参画。
内閣府 宇宙スキル標準委員会委員

(1)宇宙業界への転職において最も気になる質問? 給与の相場は

Q1.給与の相場を教えてください

非常に気になるポイントですよね。私との面談でも多くの方から、具体的な相場や金額についてご質問をいただきます。

前提として、他の産業と比較して基本給に大きな差異はありません。ただし、宇宙産業は中長期視点での開発投資と短期の収益化プロジェクトが並行しているため、多くの宇宙スタートアップで短期業績は赤字です。そのため、賞与が支給しづらく、年収で比較すると給与水準は高いとは言えません。

そのような状況も考慮し、ストックオプションなど将来期待を分かち合う制度で報いる企業もあります。
では、具体的にどのような給与体系なのかというと、宇宙スタートアップの多くは年功序列や経験年数ではなく、ジョブ型の人事制度が導入されているため、どんな業務や職制をお任せするかによって、給与のレンジが決定します。

面接でご経験や人物面を評価し、お任せする業務に応じて給与が決まります。そのため年功序列型の年収と内定時の提示年収にギャップが生じるケースがあります。

私たちの実績では、プレーヤー職としての採用ですと、専門性の高さに応じて各社概ね500万円から800万円、リーダー職は700万円~1000万円、管理職や責任者クラスで1000万円超の実績です。

また、一般的にストックオプション制度の詳細は非公開なので、内定後に詳細な説明を受けることになります。

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(2)宇宙業界出身でなくとも活躍できる! どんなキャリアパスがある?

Q2.宇宙業界内ではどのような事業領域区分があり、業界内での転職を含めどのようなキャリアパスがあるのか

宇宙には漠然と興味があるけど、具体的にはどんな事業があるのか。こちらも面談でよくお受けする質問です。

宇宙業界内での役割は宙畑の業界マップに示されているように「製造・インフラ」「宇宙利用」「探査」という各ミッションを、それぞれの企業が担っています。詳しくは宙畑の業界マップを参照ください。

「製造・インフラ」では、ロケットや人工衛星、地上局など宇宙利用を実現するための機器を製造する企業から、宇宙利用を促進するためのシステムを開発する企業を紹介しています。

「宇宙利用」では、宇宙をどのようにビジネスに利用しているかを紹介しています。

「探査」では、人が宇宙に行く「有人宇宙探査」と、探査機が宇宙で活動する「無人宇宙探査」の2つに分けて紹介しています。

キャリアパスについては、専門性を高め組織のリーダー職になる、もしくは、管理職としてキャリアアップなど、他の業界と大きな違いはありません。宇宙業界に転職するメリットを挙げるならば、宇宙業界は成長期にあるため、キャリアアップの機会に恵まれているということでしょう。

また、それぞれの分野で専門性が異なる部分と共通する部分があり、業界内での転職事例も多くあります。例えば、宇宙機の製造に関わる共通の技術課題に関するスキルをお持ちの方は、ロケットや衛星など分野を超えて転職されている実績があります。

また、事務系の職種においても、顧客は近しく共通性も大きいため同様に業界内では事業領域を超えて転職をされています。

実際に私たちがご支援させていただいた事例としては、複合機の電子回路設計を担当されていらっしゃった方が、ロケットの制御回路設計のセクションで採用された実績があります。

回路設計というスキルの共通性はもちろん、量産性を考慮しコストを低減するノウハウなどは地上製品と同様、宇宙機の開発においても課題であり、選考においても評価されていました。

総じて、宇宙業界の各社で多くのプロジェクトが動いており、人材採用も積極的で組織は成長拡大期にあります。したがって社内のキャリアパスに閉塞感を感じることはないと思います。

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(3)転職した宇宙スタートアップが解散してしまったらどうなる?

Q3.スタートアップが隆盛している印象があるが、当然ながら解散してしまった企業も相応にあると考える。その環境におられた方のその後のキャリアパスを知りたい。

どのような産業においてもそうですが、ご指摘のとおり、すべての宇宙スタートアップが事業として成功するとは限りません。

ただ、宇宙産業全体は圧倒的な人材不足であり、部分的な企業淘汰は発生しますが、その際も宇宙業界で働き続けたいと望む従事者は、ほぼ宇宙業界にて吸収されているのが実情です。

日本の宇宙産業は基礎的な技術では伍しているものの、米国のスペースXを筆頭に商業実績や実証では大きく差が開いています。今後、技術優位はもちろん、商業化に向け、多額の投資と効率を高める必要があります。そのため、宇宙業界は成長しながら淘汰や勝ち組による前向きな吸収は必然的に起こると思います。

(4)河辺さんから質問者の方への応援コメント

今所属している企業や業界から、転身するリスクはどの業界や企業にも存在すると思います。私が言えることは、宇宙産業は国家安全保障や地球環境の抜本的な改善の観点からも、成長させなければならないということです。その必然性に共感いただける方は、ぜひ一歩踏み出してみてください。

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(5)宙畑編集部の一言コメント

給与、キャリアパス、会社の継続性……宇宙業界への転職を考える方が誰しも気になるだろうポイントが並んだ質問でした。質問者の方、この度は質問をお寄せいただき誠にありがとうございます。

河辺さんの回答にあったように、宇宙業界の給与は他の業界と比較して飛びぬけて給与が高いという業界ではありません。ただし、産業としては発展途上の業界であり、日本ではもちろんのこと、世界的に見ても未踏の成果を生み出すひとりとなれるチャンスが多く存在しています。

宇宙業界以外の業界から宇宙業界に転職した人に焦点を当てた連載「Why Space」でも「社会を前進させる使命感」を持って転職した方「夢を実現するために来た」と宇宙から地球への輸送サービスを開発する企業に転職した方がいらっしゃいました。

日本において「自動車産業の次の基幹産業となり得る」と期待されているのが宇宙産業です。ぜひ、宇宙産業に飛び込んでみませんか?

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