宙畑 Sorabatake

宇宙政策

【アメリカ宇宙産業の最前線】SpaceCom 2026の現地レポートと出展していた日本関連企業3社の紹介

2026年1月末に開催されたアメリカ最大級の商業宇宙イベント「SpaceCom 2026」の現地レポートです。日本関連企業3社についても紹介しています。

2026年1月28日~30日、アメリカフロリダ州オーランドにおいて、アメリカ最大級の商業宇宙イベント「SpaceCom 2026」が開催され、NASAやアメリカ空軍等のアメリカ政府機関、世界の宇宙関連企業、スタートアップ及び大学が一堂に会しました。

参加企業による展示に加え、政策や新たなビジネスの可能性に関する講演が数多く行われ、会場ではこの分野に挑む多くの日本企業の姿が見られました。出展企業としては、日本発スタートアップで、現在は本社及び製造拠点をアメリカに移転しているGITAI USA Inc.のほか、日本企業のLetara株式会社及び株式会社MJOLNIR SPACEWORKSが参加しました。

日本企業で出展していたLetara株式会社、株式会社MJOLNIR SPACEWORKSの2社

アメリカの政策で高まる防衛需要の存在感と民間企業の競争激化

アメリカにおける防衛宇宙需要の大きな熱量が感じられたSpaceCom 2026。開会スピーチでは、アメリカ宇宙コマンド司令官ステファン・ホワイティング大将が「中国による宇宙能力の急速な拡大は驚異的であり、脅威でもある」と強調しました。

なかでも、競合勢力が衛星に対する電波妨害や物理的な攻撃を行う能力を有することについて、アメリカは民間企業のイノベーションを活用しながら、迅速に対抗能力を獲得していく必要性があると述べました。

トランプ大統領は、2027年度の国防予算を史上最高の1.5兆ドル(2026年度から5割超の増加)とするようにアメリカ連邦議会へ要求しており、こうしたアメリカ防衛予算拡大の機会をビジネスチャンスと捉える宇宙企業による競争が激化しています。この状況の中で、日本の宇宙スタートアップがいかにしてこの市場を捉えて成長できるか、そのために何が課題となるのかを現地で取材しました。

SpaceCom 2026に出展していた日本関連企業3社の紹介

①GITAI USA Inc.

2016年に設立された日本発の宇宙ロボットスタートアップGITAIは、2023年に本社及び製造拠点を日本からアメリカに移転しました。アメリカ政府の防衛需要をいちはやく予測し、2021年から月面ローバー、2023年から人工衛星の内製開発へと取組みを拡大して技術実証を積み重ねてきたことが、高い評価を得ています。

防衛プロジェクトの受注には、高度な技術力に加えて、安全保障に関する規制・要件に対応しながら、アメリカ政府・企業とのゼロからの信頼関係を構築することが求められますが、GITAIはそれを見事に成し遂げ、着実にアメリカ防衛宇宙市場の獲得を進めています。GITAIの中ノ瀬社長は、「アメリカにリソースを移転して、難易度の高い挑戦を続けてきました。当初とは違い、今では、アメリカ政府高官にGITAIのファンが増えています」と語ります。

GITAIは、SpaceCom 2026において、2024年に国際宇宙ステーション船外での宇宙実証に成功したロボットアームを展示し、中ノ瀬社長が講演を行いました。アメリカ宇宙軍からも多くの要人が展示を訪れ、GITAIの今後の取組みへ高い関心と期待を示しました。

②Astroscale U.S. Inc.

同じく日本発スタートアップAstroscaleは、日本に本社を置くAstroscale Holdingsのもと、日本と米国に拠点を設け、それぞれが独立した法人として運営されながら、グローバルなAstroscaleグループの一員として協力関係を築いて、国際展開を進めてきました。Astroscaleの衛星への燃料補給や寿命延長等の軌道上サービス技術は、アメリカ宇宙防衛能力への貢献が期待されています。

国家安全保障事業開発担当副社長Norris氏は、「Astroscaleは防衛企業ではなく、軌道上サービスを提供する商業宇宙企業ですが、その技術とサービスを必要とするアメリカ政府に対しても、ミッションに沿ったソリューションを提供していきます」と話します。

Astroscale USは、SpaceCom2026のスポンサーとしてネットワーキングイベントを主催するなど、アメリカ商業宇宙・防衛宇宙市場に対して確実にその存在感を示しています。

以上の2社は、アメリカ法人への移行・アメリカ法人の拡大によって、アメリカ防衛予算拡大の機会を捉えた成功例です。ただし、アメリカ政府の防衛プロジェクトを受託するためには、厳格なセキュリティ要件を満たすことをはじめとし、時間的・人的に大きなリソースを割く必要があることから、多くの日本スタートアップにとっては高い壁があることも事実です。

③Letara株式会社

こうした中で、アメリカ企業とのビジネス機会の創出と、それを通じたアメリカ防衛宇宙市場への参入を試みている日本企業がLetaraです。

Letaraは、北海道に拠点を置くスタートアップで、既存の液体推進や電気推進に代わって、より推力があり安全性の高いプラスチック燃料を使用した推進系システムを開発しています。Letaraが2026年の夏に予定している宇宙実証は、プラスチック燃料を使用した推進系システムの実証実験としてアジア初の試みとなります。

Letaraは、Startup Hokkaido事務局・日本貿易振興機構、全日空商事からの支援を得て、SpaceCom2026で海外で初の展示会に出展しました。事業開発担当のYuen氏は、「Letaraの技術は、ロケットや人工衛星を開発する企業にとって非常に魅力的。イベントでたまたま話しかけた海外企業との出会いが、ビジネスにつながりました」と語ります。

国内外からの引き合いを背景にLetaraは、2024年に約30人だった従業員数を、2025年には100人以上(インターンやパートタイムも含める)に増やし、うち約40%が非日本人という、国際色豊かな企業へと成長しました。

Letaraは、こうしてアメリカ企業のサプライチェーンに組み込まれる形で、アメリカ防衛宇宙市場拡大の機会を捉える試みを続けるとともに、日本国内の防衛宇宙市場にも参入しています。

2025年に発表された防衛省「宇宙領域防衛指針」では、宇宙領域における防衛能力を早急に強化するにあたり、防衛省が民間企業との連携を密にして、国内の宇宙産業基盤を育成・強化していく方針が示されました。日米ともに拡大する防衛宇宙市場が、日本のスタートアップに新たな機会をもたらしています。

日米宇宙産業協力支援に豊富な経験を持つMJF ConsultingのFletcher社長は、「日米同盟はインド太平洋地域において依然として中心的な役割を有しており、宇宙分野はますます重要な協力分野となっています。両国における安全保障・防衛投資の増加に伴い、日米間の宇宙市場における協力は今後も拡大し、非常に活発になると予想しています。」と語ります。

まとめと日本の宇宙スタートアップへの示唆

SpaceCom2026での取材を通じて、日本の宇宙スタートアップにとって重要な示唆が浮かび上がりました。

第一に、成長のためには、積極的な国際展開が必要であるということです。国際展開の方法は、先に紹介した3社のように様々で、各社のビジョンに沿った方法を検討し挑戦していくことが重要です。

SpaceComで多くの企業が指摘したのは、「国際展開成功のためには、実験の成功や契約数といった成果をKPIとする前に、そうした成果を生み出す環境の質を高めることが重要」ということでした。即ち「エンジニアと投資家の目標が一致しているか」「サプライチェーン上の関係者との力関係に歪みがないか」「部品の品質と納入期限を管理できるか」「過去のやり方や上司の指示に異を唱えることのできるカルチャーか」など、実は目に見えない要因こそが事業の成否を左右します。

国際展開を目指す日本のスタートアップは、高い技術力はもちろん、こうした企業カルチャー及び制度設計の最適化を意識することが成功のための重要な課題と言えそうです。

第二に、現在の需要だけでなく、数年先の需要を見据えることです。政府が既に公開しているプロジェクトに対して、今から技術開発を行うのでは間に合いません。では数年先の需要を予想するためには何が必要でしょうか?

SpaceCom2026では、多くの企業が「まずは顧客と会話することから始める」と語りました。将来顧客になり得そうな組織・企業のうち、契約書にサインをする権限をもつレベルの人が、どのような動機や制約のもとで意思決定を行っているのかを理解しながら数年先を予見することが、変化の激しい政策環境の中でも、将来を見据えた技術開発につながります。

また、防衛宇宙需要に頼りすぎるのではなく、長期的に伸びていくことが予想される商業宇宙需要を将来的に取り込むことのできるビジネスモデルを設計することも今後の重要な課題と言えるでしょう。