宇宙産業で求められる人材とは? 70社超の求人情報から見えた宇宙業界の求人最前線【宇宙業界のキャリアナビゲーター特別インタビュー】【PR】
今、宇宙業界はどんな人を求めているのか? 宙畑の年末特集「宇宙ビジネス企業とゆく年くる年」で回答いただいた70社を超える宇宙ビジネス企業の求人情報に関する回答と合わせて、宇宙ビジネスに特化した人材エージェント「インバイトユー」のお二人にお話を伺いました。
宙畑が毎年末に宇宙ビジネス関連企業にアンケートを行い、各企業の2025年のトピックと2026年の展望をまとめた「宇宙ビジネス企業とゆく年くる年」。2025年版では、100を超える宇宙ビジネス関連企業にご参加をいただき、70を超える企業に求人情報にも回答いただきました。
※本アンケートは2025年12月10日(水)を締切として各企業様に記載いただいたものになります
ハードウェアエンジニアから営業・事業開発まで、多彩な職種が名を連ねる回答を眺めながら、ひとつの問いが浮かびます。
「今、宇宙業界はどんな人を求めているのか?」。
その問いにリアルに答えられるのが、宇宙ビジネスに特化した人材エージェント「インバイトユー」を運営する株式会社インバイトユーの代表取締役社長・浅野和之さんと執行役員・河辺真典さんのお二人。宇宙業界への転職の現実、宇宙産業で求められる人材、そしてインバイトユーが描く未来まで、たっぷりと語っていただきました。
株式会社インバイトユー 代表取締役社長 浅野和之さん
1993年よりリクルートエージェントにて人材紹介、新規事業開発、人事部長としてリーマンショック時の人員削減を経験。2012年からはリクルートキャリア、コーポレート部門担当上席執行役員としてMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定、組織設計、人事制度企画やマネジメント変革、強化およびリスク対応等の事業基盤整備を実行。2022年に株式会社Prop-UP(現インバイトユー)を設立。内閣府 宇宙スキル標準委員会委員
株式会社インバイトユー 執行役員 河辺真典さん
1993年大手繊維会社にて生産技術職に従事。1998年リクルートエージェントにて製造メーカー及び技術系分野の人材紹介を主に担当後、人材開発マネジャーとして社員採用と育成を経験。2006年から技術系人材紹介会社メイテックネクスト設立に携わり、17年勤務。後半6年間は代表取締役社長として事業を牽引。2023年ディップ株式会社にて執行役員として介護人材紹介事業責任者を担う。2024年10月より株式会社インバイトユー参画。内閣府 宇宙スキル標準委員会委員
(1)人材業界のプロも驚く、宇宙業界の盛り上がり
――河辺さんが2024年10月にインバイトユーに参画されてから1年超。他の業界と比べて、宇宙業界ならではの特徴はどのように感じていらっしゃいますか?
河辺 「一言で表すなら”よーいどん”。同じ事業フェーズの企業が、これだけ同時に立ち上がっている業界はほかにないと思います。ロケット会社も衛星会社も、機械エンジニアを求め、電気エンジニアを求め、ソフトウェアエンジニアを求めている、そんな状況が同時並行で起きているんです。求職者から見れば、宇宙に興味があれば、ロケットから衛星まで幅広く選択肢がある。紹介会社としても、同じようなスキルを求める企業が多数並立しているので、非常にやりがいのある環境だと感じています」
――一企業あたりの採用数は限られていても、業界全体でまとめると共通したスキルを求める会社は多いということでしょうか?
河辺 「ただしデバイスの種類によって技術の特色はあります。衛星なら熱管理や電力制御が重要になり、ロケットなら振動・低温環境への対応が問われる。さらに事業フェーズによっても、求める人材がはっきり変わります。実証実験の段階では開発エンジニア中心ですが、量産フェーズに入ると品質保証や生産技術の人材が急に必要になる。資金調達のフェーズではCFO(最高財務責任者)のニーズが高まります。企業の個性として「論理思考を重視するカルチャーか、チームコミュニケーションを大切にするカルチャーか」という違いもあります。宇宙というひとつのくくりの中に、実は非常に多様な求人が同時に存在しているともいえますね」
宇宙に特化したエージェントという希少性も、大きな武器になっていると河辺さんは続けます。
河辺 「大手の転職エージェントでも宇宙を専門に扱っているところはほとんどありません。ですから転職サービスのデータベースに登録しているエンジニアの方々に宇宙の求人をご案内すると、反応率がとても高い。最初の頃は、大学で航空宇宙工学を学んだけれど、就職活動時に宇宙の求人がなくて別の業界に進んだ、いわば”宇宙リトライ組”の方々が多く反応してくださいました。そこに最近は少し変わってきていて、『宇宙なんて全然考えてなかったけど、行けるのかな?』という方が増えています」
浅野 「ほかのエージェントから宇宙を案内されることはほぼないので、『そんな選択肢があるの?』という驚きで話を聞いてくださる方も多いですね。宇宙に特に興味があったわけではなくても、聞いたことがない分野を専門に扱っているエージェントがいると分かれば、ちょっと話を聞いてみようか、となりやすい。最近は政府の宇宙政策が活発になっている追い風もあって、そういった方々がぐっと増えている感覚があります」
河辺 「自動車業界に転職しませんかと言われたら、業界の様子は想像しやすいですが、宇宙ですって言われると、それって何ですか?と興味を持っていただける。そこが面白いところであり、われわれの可能性だと思っています」
(2)2024年10月の本格稼働から、すでに400名超と面談
――河辺さんはこれまでに何名の転職希望者、何社の企業とお話をされてきたのでしょうか?
河辺 「面談数でいうと400名ほどです。ほぼ1日1名のペースです。多くは私どもからの能動的なスカウトが起点で、インバイトユーを知って来てくださる方はこれから増やしていくフェーズです。また、イベントでの名刺交換なども含めると、延べ200名の宇宙ビジネス企業の方々と接点を持ちました。その中で40〜50社程度は何らの形でご紹介を進めています。
1年半で多くの転職希望者、宇宙企業とのコミュニケーションを行ったインバイトユーのお二人。宇宙業界に特化しているからこそ、転職を検討する個人の不安や疑問、企業の成長ステージごとの課題といった専門性の高い情報が蓄積され、求職者・企業の双方への支援の精度が高まってきていると浅野さんは言います。
――400名の方々と向き合ってきて、どのような傾向が見えていますか?
河辺 「立ち上げ当初にご縁があったのは、大学で航空宇宙工学を学んでいたのに、就職時に宇宙の求人がなくて異業界に進んだ方々です。スタートアップにインターンとして関わったきりで、ずっと宇宙の仕事をしたいという思いを持ち続けてきた方もいらっしゃいます。ようやく求人が揃ってきたタイミングで、満を持して応募してくださる、先に述べた“宇宙リトライ組”ですね。そしてもうひとつが、“宇宙デビュー組”とでもいえばいいでしょうか、宇宙とのご縁のなかった方々で、話を聞いてみたら意外と自分のスキルが活かせそうだと気づく方が増えてきています。
現在、宇宙業界以外の企業では、製品のコモディティ化が進む中でコストダウン設計ばかりが続いています。さらには生成AIによる設計支援ツールの導入も始まるなかで、自分の仕事の価値や存在意義を見つめ直す時期に来ている方も増えているようです。
たとえば、複合機メーカーもコモディティ化が進む分野で、そのエンジニアの方ももっと前向きに新しいものをつくりたいという思いを持っておられたんです。宇宙に詳しいわけではなかったのですが、面談を重ねるうちに宇宙への思い、モノづくりへの気持ちが盛り上がっていって、最終的に転職に踏み切られた。こういったケースを今後もっと増やしていきたいと思っています」
スカウトにあたっては、地上の技術と宇宙産業で生きる技術の「共通性」を軸にしていると河辺さん。たとえば、機械系では構造設計、電気系なら通信・高周波や熱対策、振動解析といった経験は、打ち上げ環境を考えると不可欠なスキルです。
浅野 「エンジニアだけでなく、事業開発や営業、管理部門といった事務系職種のニーズも出てきています。企業の規模が大きくなるにつれ、エンジニア以外の職種の需要が広がってきているんです。宇宙業界で働くことは、もはやエンジニアだけの話ではなくなっています」
(3)70社超の求人情報から分かる、企業が求める人材像。キーワードは「宇宙業界の経験不問」「柔軟性」
――「ゆく年くる年」アンケートで73社から集まった求人情報をご覧になって、印象的だったポイントを教えてください。
浅野 「データ全体を確認して、印象的だったのは、宇宙業界の経験を必須条件にしている企業が非常に少ないことでした。求人情報を分析すると、宇宙業界経験を重視しているのは5社程度。残りの9割以上の企業は基本的に業界未経験でもよい、という姿勢なんです。
また、企業の構成比を見ると、エスタブリッシュドスペースと呼ばれる大手・老舗企業が約2割、スタートアップ・ベンチャーが約8割となっていて、宇宙ビジネスの全体像が求人情報にそのまま反映されていると感じました」
河辺 「求人の内容を見ると、その会社が今どの段階にいるのかがよく分かりますね。衛星データを活用したサービスを手がける企業では、営業・事業開発の求人が非常に多く、AI人材のニーズも出始めています。
衛星メーカーでは通信系のハードウェアとソフトウェアの需要が高く、コンステレーション(複数の人工衛星を打上げ、一体的に機能させる仕組み)構築に向けた量産体制を整えるための生産技術人材も求めています。
ロケット企業では組み立てエンジニアの需要が出てきていますし、ペイロード(ロケットが宇宙へ運ぶ「有用な荷物」)を獲得するための事業開発人材も必要としている。
そして、業種を問わず共通して常に求人があるのが、プロジェクトマネジメントと、システム設計を担える上流設計の人材です」
――プロジェクトマネジメントやシステム設計ができる人材は、どの企業でも求められていながら、なかなか見つからないという課題も聞きます。
河辺 「おっしゃる通りです。機械・電気・ソフトウェアを統合してひとつのミッションを達成するための上流設計ができる人材は、常に需要があります。ところが、こうした経験をお持ちの方がキャリア書類に『システムエンジニアリング』と明記することは意外と少ない。
IT系のシステムエンジニアと混同されがちですし、大企業ではそれが”上がりのポジション”として認識されていて、目立たないことも多い。たとえば車のエアコンシステムを担当してきた方は、外気・内気・エンジンルームの温度をすべて考慮しながらシステムを最適化してきた能力を持つわけです。
これはまさにシステム設計そのもので、宇宙業界では確実に必要とされるスキルです。こういった潜在的な候補者を発掘することも、私たちの大切な仕事だと思っています」
また、求められる人物像については、エスタブリッシュドスペース、ニュースペースを問わず、多くの企業が共通したことを回答していると河辺さんは続けます。
河辺 「ほとんどの企業が、人物をよく見ています。なかでも強調されるのが柔軟性です。過去の経験に固執してしまうと、変化の速い宇宙ビジネスの環境では力を発揮しにくい。今回の求人情報でも、大手企業からスタートアップまで、『常識を疑える人』『チャレンジ精神が旺盛な人』というキーワードが目立ちました。私も面接では”最も大変だった経験”とその時の判断理由を深く掘り下げることをしますが、この話し方でその人の思考パターンが見えてくるからです」
浅野 「宇宙業界では経験値が少ない分、ノウハウを持った人材は貴重です。一方でその経験に固執してはいけない。このバランスの取り方が、特にエスタブリッシュドスペースからニュースペースのベンチャーに転職する際に難しいポイントです。いわゆる大企業のやり方のままではスタートアップ企業にはまらない。業界全体でまだ解決されていない課題でもあります」
なお、今回の宇宙業界のキャリアを考えるうえで話題にあがったもうひとつのキーワードが、英語力です。スタートアップでは開発初期から外国人エンジニアが多く在籍していること、部品の調達先や打ち上げロケット、衛星運用の基地局が海外であることから、開発・打ち上げ・運用のすべてのフェーズで英語を使う機会があります。求められるレベルについて河辺さんは「まずは片言でもいいから英語に抵抗がない人というところが第一歩で、衛星運用ポジションになると本格的な英語力が必要になってきます」と教えていただきました。
(4)見えていない宇宙業界の面白さは、まだたくさんある
――今回の求人情報の中には、AIに関わるポジションも見えました。一方で、AIエンジニアはなかなか宇宙業界に来てくれないという声もあると聞きます。現場ではどのように感じていらっしゃいますか?
河辺 「AIエンジニアの方々は、宇宙にデータがあるとはなかなか思っていないんです。衛星というとロケットや宇宙船のイメージがあり、データを活用するビジネスが成り立つとはご存じないし、また想像もされていないですね。だから、スカウトをしてもなかなかいい反応がいただけなかった。ある時、スペースデブリを回避するためのアルゴリズムを開発して、衛星企業がそのAPIを使って軌道を変えているんだ、という話をしてようやく『それは面白い』という反応をいただけました。」
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浅野 「AIエンジニアの方々は、大量の行動データを持っているB to Cサービス企業のほうが面白いと考えられている方も多いでしょう。しかし、地球観測衛星から取得できる地上に役立つデータが今後も増え続けることや、実は、宇宙にも大量の面白いデータがあるとはイメージできている方が少ないのかもしれません。これは宇宙業界全体が取り組むべき情報発信の課題だと思います。ユースケースをいかに見える化するかが重要です」
生成AIの普及は、エンジニアのキャリアにも大きな影響を与えています。既存産業では設計業務や実装作業の一部がAIに代替され始め、「何のために作るのか」という目的意識がより強く問われる時代になってきました。その中で、河辺さんは宇宙業界の独自性を強調します。
河辺 「AIが”つくるためのツール”として機能し始めると、エンジニアは何のためにつくるのか、という目的や意義を問うようになります。言われた通りに実装するだけでは差別化できなくなる。そういう時代に、宇宙は達成感という点で他の業界とは次元が違うやりがいを提供できる。打ち上げが成功した瞬間の達成感は、ほかに代えられないものです。最近よく言われるパーパス経営という潮流とも、宇宙業界の社会的意義は非常に親和性が高いと思っています」
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浅野 「もうひとつ、キャリアの将来性という観点でも、今宇宙業界に入ることには大きな意味があります。業界全体の規模はこれから確実に広がっていく。今この時期にフロンティアとして飛び込んだ経験は、10年後に非常に貴重なものになります。ただ同時に、入ってきた人材に定着して活躍してもらわないと、業界全体の人口は増えていきません。宇宙業界で働く魅力をどう伝えるか、入ってきた人にどう活躍してもらうか。これは業界全体で取り組むべき課題だと私は思っています」
(5)インバイトユーが目指す、宇宙業界の人材エージェントの姿
――内閣府の「宇宙スキル標準」が3月に公開される予定と伺っています。公開によって何が変わることを期待されていますか?
インバイトユーは今回の「ゆく年くる年」アンケートで、「人材エージェントとして唯一、内閣府『宇宙スキル標準』策定委員に選出された」と報告しています。
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当事者として標準策定に関わってきた河辺さんは、その意義をこう語ります。
河辺 「現状、転職サービスや求人情報サイトには、宇宙業界の職種が十分に表現されていません。機械設計という分類はあっても、機械・電気・ソフトウェアを統合したシステム設計という項目はどこにもない。宇宙スキル標準には”ロール(役割ごとの職種定義)が整理されています。これが人材業界全体に浸透することで、宇宙産業の求人が正確に扱えるようになります。システム設計、プロジェクトリーディング、熱解析といった宇宙ならではのロールが、求人情報や転職サービスの標準分類として認知される。そういう環境をつくることが、業界全体の人材流動を促すために必要だと考えています。私たちも宇宙スキル標準の民間活用を、積極的に進めていきたいと思っています」
――最後に、インバイトユーとして今後どのような存在を目指しているか、お聞かせください。
浅野 「私たちの強みはエンジニアの転職を深く語れることです。宇宙を語るためには、宇宙エンジニアの実情を誰よりも理解していなければならない。ここはぶらさないつもりです。そのうえで、今回のアンケートで2026年の抱負として挙げたように、ニュースペースのベンチャーだけでなくエスタブリッシュドスペースの大手企業へも、エンジニアだけでなくCxO(Chief × Officer/最高〇〇責任者)や事務系職種へも、また人材紹介にとどまらずRPO(採用アウトソーシング)サービス・組織課題解決まで、領域を広げていきます。以前は『宇宙の人材エージェントって、そんなニーズあるんですか』とよく言われましたが、各社が成長するにしたがって求められる役割は増えています。宇宙業界にはまだ知られていない可能性が広がっている。それを理解していることが、われわれの強みだと思っています」
河辺 「AIが発達したことで、宇宙について調べれば断片的な情報は手に入ります。でも、あなたのスキルが宇宙のどの部分で活かせるのか、あなたのキャリアにとって今どの企業のどのポジションがもっともフィットするのか。そこに答えられるのは人間だけであり、インバイトユーだけだと思っています。一人ひとりの希望と、今の宇宙業界のリアルを照らし合わせて、その人にとっての可能性を具体的にお見せすること。それが私たちの仕事です。ポジティブで、将来性を感じられる“宇宙業界のリアル”を、一人でも多くの方に届けたいと思っています」
今回の取材を通じて、宇宙業界が今まさに一斉に成長しようとするタイミングにあることが、改めて見えてきました。宙畑では今後も宇宙業界で役立つスキルの見える化と、業界を目指す方々への情報発信を続けていきます。
■宇宙業界のキャリアに興味がある方へ
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「ご自身のスキル・知見が宇宙業界で活かせるのか」「宇宙業界で働く具体的なイメージを知りたい」など、気になる方は一度相談してみてはいかがでしょうか?


