衛星データ×AIで世界50カ国以上への食料安定供給へ。オーストラリア全土の農業デジタルツイン始動【宇宙ビジネスニュース】
2026年2月17日、Australasian Space Innovation Instituteは、世界有数の農産物輸出国であるオーストラリア農業分野に向けた国家規模のデジタルツインを立ち上げたと発表しました。
2026年2月17日、Australasian Space Innovation Institute(以下、ASII)は、世界有数の農産物輸出国であるオーストラリア農業分野に向けた国家規模のデジタルツインを立ち上げたと発表しました。
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ASIIは衛星技術に強みを持つ非営利研究機関で、2026年1月から活動を開始しました。オーストラリアの宇宙産業研究を牽引してきたSmartSat CRC(産学共同研究センター)の成功と知見を引き継ぎ、研究成果を社会実装につなげる中立的な機関として設立されています。
今回発表されたプロジェクトはASIIにとって初の大型案件プロジェクトで、総額1,500万ドル(約23億円)が投じられています。
また、同機関が発表した本プロジェクトは、農業分野で大手のElders、畜産業界団体のMeat & Livestock Australia、農業データ活用プラットフォーム「Australian Agricultural Data Exchange」の提供に関わるチャールズ・スタート大学(CSU)の支援も受けています。
では、本プロジェクトが構築を目指すデジタルツインはどのようなものなのでしょうか。目指すのは、衛星データ、農地に取り付けたセンサーからのデータ、ドローンの取得データ、気候データなどを統合し、AIが中心となって顧客の課題の分析や意思決定支援をする基盤です。
オーストラリア全土の農地を仮想空間上に再現できるため、気候変動への適応、作物の感染症対策、水資源管理、生産性向上といった分野での予測シナリオ分析を可能にします。
これにより、農業関係者は複数の選択肢を事前に検証し、リスクを見極め、最適な行動を現場で実行できるようになります。
こうした取り組みは、主食カテゴリーの多くで世界5大輸出国にランクインしており、世界50カ国以上に農産物を輸出する同国が担う国際的な食料供給の安定性を高める上でも重要な意味を持ちます。
ASIIの創設者兼CEOであるアンディ・コロニオス教授は、以下のようにコメントしています。
「オーストラリアは、農業・林業・水産業において世界トップクラスの実力を持っています。しかし、その強みを国家規模で“意思決定につながる知見”を共有するための基盤が欠けていました。今回のデジタルツインは、その欠けていた基盤を提供します。これは、公共の利益のための国家インフラであり、独立した非営利機関であるASIIが管理することが、国全体で見た時に最善だと考えています。」
衛星データとAIを核とした国家規模のデジタルツインが稼働することで、農業関係者はより精度の高い情報に基づいた助言や意思決定が可能となります。
最終的には農業の生産性向上やレジリエンス強化を通じて、世界有数の農産物輸出国であるオーストラリアから世界への安定供給にもつながるでしょう。
また、国が国土レベルの広い面積の衛星データを購入することは、地域ごとに衛星データを購入するよりも利用するコストを下げることができ、衛星データを販売する企業にとっても定期的に購入してくれる大口顧客の獲得にもつながります。このような事例が今後も増えることで、ますます衛星データの利用が広がることが期待されます。
参考記事
National Digital Twin for Australian Agriculture
About AADX - Australian Agricultural Data Exchange
Enhancing our world-class agricultural traceability systems - DAFF
https://www.austrade.gov.au/jp/buy-from-australia/food-and-beverage/grain

