営業、プロジェクトマネジメント、エンジニアリング……「宇宙スキル標準」と10名超の宇宙業界転職者に学ぶ、宇宙ビジネスの職種・スキルまとめ
「自分のスキルは宇宙で活きる?」Why Spaceで伺った10人を超える宇宙業界への転職ストーリーを、内閣府「宇宙スキル標準」の職種分類を参考に整理し、職種マップにまとめました。
非宇宙業界から宇宙業界に転職した方に焦点を当てた宙畑のインタビュー連載「Why Space」。今回、これまでにご紹介した10人を超える転職ストーリーを、内閣府が策定を進める「宇宙スキル標準」の職種分類にもとづいて整理し直し、宇宙ビジネスにはどのような職種があり、どのようなスキルが求められるのかをまとめてみました。
※宙畑連載「Why Space」では、非宇宙業界から宇宙業界に転職もしくは参入された方に「なぜ宇宙業界に転職したのか」「宇宙業界に転職してなぜ?と思ったこと」という2つの「なぜ」を問い、宇宙業界で働くリアルをお届けしています。
日本の宇宙産業は、2024年に10年で1兆円規模の技術開発投資を行う宇宙戦略基金が本格始動し、政府は2030年代早期に国内市場規模を現在の4兆円から8兆円へと倍増させる目標を掲げています。
一方で、宇宙関連事業の人材不足は業界共通の課題です。実際に、宙畑の年末特集「宇宙ビジネス企業とゆく年くる年」に協力いただいた宇宙ビジネス企業のうち7割が求人情報を記載するなど、宇宙業界における強い人材ニーズが明らかになりました。
そして、注目したのは、求人情報に回答いただいた70社を超える宇宙ビジネス企業のうち、宇宙業界の経験を重視すると回答したのはわずか5社程度で、9割以上の企業が「業界未経験でもよい」という姿勢です(詳しくはこちらの記事をご覧ください)。他業界からの転職は、多くの宇宙ビジネス企業で当たり前になっています。
本記事では、宇宙スキル標準による職種の整理、そして職種ごとのWhy Spaceインタビュイーのご紹介という流れでご紹介します。連載の更新に合わせて、本記事のマップと転職ストーリーも増えていく予定です。
本記事が、ご自身のスキルと宇宙業界との接点を見つける資料として参考になれますと幸いです。
(1)宇宙業界は「人材がいない」〜今、転職者が求められている理由〜
「宇宙業界の方とお話しすると開口一番に『とにかく人材がいない!』とおっしゃる」。宇宙スキル標準の策定に携わった、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の山口真吾参事官(インタビュー当時)が宙畑のインタビューで教えていただいたように、人材不足は宇宙業界の最重要課題のひとつです。
日本の宇宙関連就業人口は、バブル期以前には約1万人いたものの長期的に減少し、直近の統計(2022年)では約8,900人。しかもそのうち約4,000人は研究開発人材で、実際の製造・運用を担う産業人材が圧倒的に不足していると言われています。
一方で、市場の期待は大きく膨らんでいます。2026年6月12日には、SpaceXがNasdaqに上場。宇宙業界に興味のなかったが、IPOの情報について関心を持ったという方も多かったのではないでしょうか。実際に上場後の時価総額1.77兆ドルと史上最大規模となりました。また、今後も宇宙産業の市場規模はますます拡大することが期待されています。
では、市場の中身はどうなっているのでしょうか。2024年の世界市場約62.3兆円のうち、ロケット産業は約1.4兆円、衛星製造は約3兆円。圧倒的に規模が大きいのは、衛星データを活用したサービスや地上設備関連の約40兆円です。「宇宙=ロケットや衛星をつくる仕事」というイメージとは裏腹に、市場規模の大部分は、位置情報サービスや天気予報、災害対応など、地上に住む私たちが必要とするデータとサービスにあります。
こうした状況から、企業側の門戸は大きく開かれているのです。そして、前述の通り、宙畑の調査に回答した70社超のうち9割以上が宇宙業界の経験を必須としていません。
では、具体的に宇宙業界に「どのような仕事があるのか」について、次章以降で紹介します。
(2)「宇宙スキル標準」で宇宙の仕事を整理
宇宙スキル標準とは、宇宙開発分野に求められる標準的なスキルを整理した、日本の宇宙業界のための「スキルブック」です。内閣府宇宙開発戦略推進事務局が主導し、2025年2月に試作版、2026年3月に決定版が公表されました(詳しい策定背景はこちらの記事をご覧ください)。
大きな特徴は、宇宙業界の仕事を「業務」と「スキル」に分解し、他業界の人にも分かる言葉で見える化したことです。山口元参事官はその狙いを「『こんなお仕事が求められています』と関わりたい方が分かる言葉で等身大に落とし込んで見せるため」と教えていただきました。燃料タンクの構造設計をアルミの溶接作業のようにスキルへ分解して説明できれば、他産業での類似経験者が「自分のスキルは宇宙でも通用するかもしれない」と気づけるようスキル標準が作成されています。
また、宇宙スキル標準では、宇宙に関わる業務を特性に応じて7つのカテゴリに分類しています。
①プログラム創造・組成
宇宙ビジネス・サービス創造、宇宙ミッション策定など、新たな価値創造を担う業務領域
②プロジェクトマネジメント
プロジェクトの立ち上げ・計画・実行、進捗・コスト・リスク・体制要員管理など
③システム全体エンジニアリング
宇宙輸送機や人工衛星のシステム全体に係る概念設計・システム設計など
④領域別エンジニアリング
構造系・推進系・電気系・通信系・熱制御系・制御系・データ処理系・ソフトウェア系などの設計・解析・製造・試験
⑤打上げ
射場の整備や打上げオペレーションに関する業務領域
⑥衛星運用
軌道上の人工衛星の運用に関する業務領域
⑦コーポレート
営業・調達・総務・法務・財務・経理・人事・広報など、事業運営に必要な業務領域
この7カテゴリの下に、業務項目とそれに紐づくスキルが整理され、さらに「ロール(役割ごとの職種定義)」の例が示されています。
また、各スキルには「遂行可能な業務範囲・深さ」「業務遂行時の自立性」「資格・検定」「経験年数」の4つの評価軸×5段階のスキルレベルが設定されており、求人票の作成、自己評価、教育カリキュラムづくりなど、幅広い場面で「共通言語」として使えるように設計されています。
では、これらの分類も参考にしながら、宙畑がWhy Spaceでお話を伺ったした13人を職種マップに置いてみた結果を紹介します。
(3)Why Spaceでインタビュー機会をいただいたインタビュイーの業界と職種を整理
縦軸に「技術系⇔ビジネス系」、横軸に「バリューチェーン(ロケット・宇宙輸送/衛星開発・製造/地上系・衛星運用/データ利用・サービス創造/業界横断・コーポレート)」をとり、宇宙スキル標準の業務カテゴリ・ロール例を職種エリアとして配置したうえで、Why Spaceでご紹介した13人をプロットしたのが次の図(AIを利用して作図)です。ハードウェアとソフトウェアの仕事は輸送・衛星・地上系のそれぞれで発生するため、技術系はハードウェア/ソフトウェアの2段に分けて整理しています。
この整理から、3つのポイントにご注目ください。
1つ目は、エンジニアだけでなく、事業開発、経営、人事、通訳、人材紹介と、宇宙の仕事の入り口が多様であること。
2つ目は、全域にまたがる「システム全体エンジニアリング/プロジェクトマネジメント」の帯の存在です。特に、機械・電気・ソフトウェアを統合する上流設計人材は、業種を問わず常に求人がある一方で、なかなか見つからない存在と言われています。どのような業種であってもプロジェクトマネジメント経験がある方は、ぜひとも宇宙業界に興味を持っていただけますと幸いです。
3つ目は、技術系といっても、ハードウェアとソフトウェアに分かれているということです。宙畑では、ハードウェア系エンジニアにお話を伺えているのはロケット・宇宙輸送分野(山岸さん・千葉さん)のみで、衛星開発・製造で伺えているのはソフトウェア系(小林さん・田中さん)のみ。
輸送分野のソフトウェア(誘導制御・搭載ソフトウェア)、衛星のハードウェア(電気系・通信系・熱制御系など)、そして地上系・衛星運用はハードウェア/ソフトウェアともに未登場となっており、いずれも求人が存在する領域ですので、Why Spaceの連載で今後ぜひお話を伺いたい職種です。
それでは、マップの各エリアで活躍する方々を、職種ごとにご紹介します。
(4)職種別に見る、Why Space転職者のストーリー
各職種について「仕事内容と求められるスキル」を宇宙スキル標準ベースで整理したうえで、Why Spaceでご紹介した方のインタビュー概要をお届けします。気になる方が見つかったら、ぜひインタビュー記事もご覧ください。
・ハードウェアエンジニア(構造系・機構系・推進系)
・ソフトウェア/データ解析のエンジニア
・事業開発・営業・セールスエンジニア・プロジェクトマネジメント
・経営・プログラム創造(創業・CxO)
・コーポレート・業界サポート(人事・通訳・人材)
ハードウェアエンジニア(構造系・機構系・推進系)
宇宙輸送機(ロケット、人工衛星、探査機など)の構造・機構・推進機構などの設計・解析・製造・試験を担う職種です。
宇宙スキル標準では「領域別エンジニアリング」に位置づけられ、構造設計・解析、機構設計・解析、熱/熱制御設計・解析、CADなどのスキルが紐づきます。自動車業界のエンジン燃焼技術は推進系開発に、車体の軽量化技術は構造設計に応用できるなど、モビリティ業界の経験がそのまま活きる領域です。
■山岸尚登さん(第6回/本田技研工業→インターステラテクノロジズ)
本田技研工業で大型二輪車の量産設計やレース用バイクの開発などでキャリアを積み、現在はインターステラテクノロジズでロケットの機体構造や機構系の開発を担当するグループのマネージャーに。宇宙業界はまったくのノーマークだったそうですが、「原理原則には多くの共通点がある」と、ものづくりの土台が共通しているからこそロケット開発にチャレンジできると教えていただきました。
「原理原則には多くの共通点がある」宇宙業界はノーマークだった自動車業界出身エンジニアが考えるロケット開発の面白さとチャレンジ
■千葉太郎さん(第13回/JALエンジニアリング→将来宇宙輸送システム)
航空機整備のエンジニアとしてキャリアを積むなかで、「再利用」というキーワードから、ロケットも再利用されるのであれば整備士の知見が必要だという思いから将来宇宙輸送システムに転職。「地上から手を振ってロケットを見送りたい」と、非常にワクワクする展望をインタビューで教えていただきました。
「地上から手を振ってロケットを見送りたい」航空機を愛するエンジニアが将来宇宙輸送システムに転職したワケ
ソフトウェア/データ解析のエンジニア
宇宙輸送機の電気系・通信系・熱制御系・データ処理系・ソフトウェア系の開発や、衛星データの解析などを担う職種です。
衛星に搭載するOBC(オンボードコンピュータ:衛星搭載の小型コンピュータ)や管制システム、地上系のクラウドシステム、そして衛星データを解析するAI・データサイエンスまで、ITスキル標準と重なるスキルセットが多いのが特徴。これからの人工衛星や宇宙システムはソフトウェアやAIで差別化していく方向にあり、IT業界出身者の活躍の場が広がっています。
■小林秀和さん(第7回/クックパッド→アークエッジ・スペース)
クックパッドでソフトウェアエンジニアとしてキャリアを積み、アークエッジ・スペースに転職。人工衛星の管制システムやOBCの設計・開発などを行い、リモートセンシング事業部で活躍されています。タイトルの言葉は「技術は裏切らない」。Webサービスで磨いた技術が衛星開発の現場で通用することを体現するストーリーです。
「技術は裏切らない」クックパッドのソフトウェアエンジニアが宇宙ビジネス企業に転職したワケ
■田中周一さん(第8回/SIer→QPS研究所)
SIerからSAR衛星を開発するQPS研究所に転職したソフトウェアエンジニア。「マーケットごと自社サービスを作りこめる」ことを宇宙業界の魅力として挙げています。宇宙産業はまさに自社サービスを作り込むフェーズにあり、ソフトウェアエンジニアが考える最高の状態を実際に手を動かして実装できる環境だと言います。
「マーケットごと自社サービスを作りこめる」SIerからQPS研究所に転職したソフトウェアエンジニアの今と展望
■安井秀輔さん(第12回/数学専攻・AI企業→スペースシフト)
大学で数学を専攻し(「空からガロア理論の本が降ってきた」ことが数学の道に進むきっかけだったそう)、AI企業を経て、SAR衛星データ解析を手がけるスペースシフトのテックリードに。数学×AIというバックグラウンドが衛星データ解析の最前線で活きています。
「空からガロア理論の本が降ってきた」数学専攻からAI企業を経て、SAR衛星の魅力にハマったテックリードのキャリア遍歴
事業開発・営業・セールスエンジニア・プロジェクトマネジメント
宇宙スキル標準の「プログラム創造・組成」に対応する、宇宙ビジネス・サービスを生み出し、顧客に届ける職種群です。
「技術」を顧客の課題を解決する「ソリューション」へと翻訳する力が求められ、他業界での営業・事業開発・新規事業・プロジェクトマネジメントの経験がそのまま武器になります。
■高山郁恵さん(第3回/日立システムズ→Tellus)
日立システムズの営業から、衛星データプラットフォームTellusのビジネス開発へ。宇宙業界に転職して最初に参加した海外イベントで「『技術』と『ソリューション』は別物」という違和感を覚えたと言います。裏を返せば、それは技術をソリューションに変えられる人材の伸びしろがあるということ。営業出身者ならではの視点を教えていただいたインタビューでした。
「『技術』と『ソリューション』は別物」日立システムズの営業から宇宙業界に入って最初に感じた違和感と伸びしろ
■井上大夢さん(第2回/通信大手→インフォステラ)
通信大手企業で新規事業コンペ最優秀賞を受賞した経験を経て、地上局共有サービスを手がけるインフォステラにセールスエンジニアとして転職。「個人の成長×社会を前進させる使命感」を軸に、宇宙業界の中でも明確な理由を持ってインフォステラを選んでいます。技術とビジネスの橋渡し役であるセールスエンジニアは、通信・IT業界出身者と相性の良い職種です。
「個人の成長×社会を前進させる使命感」通信大手企業の新規事業コンペ最優秀賞を経てインフォステラを選んだ理由
経営・プログラム創造(創業・CxO)
事業と組織そのものをつくる職種です。
資金調達のフェーズではCFO、事業拡大のフェーズではCOOと、企業の成長段階に応じてCxO人材のニーズが高まっています。商社・メーカー・IT企業などで培った経営管理・事業開発の経験が、宇宙ビジネスの「会社づくり」に直結します。
■永崎将利さん(第5回/三井物産→Space BD創業)
三井物産でキャリアを築いた後、宇宙商社Space BDを創業し、代表取締役社長に。インタビューでは宇宙産業の3つの伸びしろと、商社パーソンとして培った「良い契約とは何か」という視点を教えていただきました。
【宇宙産業の3つの伸びしろ】 三井物産を経て、宇宙商社を起業した永崎さんが考える良い契約とは
■浅野高光さん(第4回/P&G→Space Food Lab.)
P&Gの経営管理部門でマーケットを大きくする感覚を身につけ、宇宙食開発を手がけるSpace Food Lab.の取締役に。「(最初は)儲かる匂いがしなかった」という率直な第一印象から、宇宙という極限環境のポテンシャルに気づくまでの視点の変化を教えていただきました。
「(最初は)儲かる匂いがしなかった」P&Gの経営管理から宇宙ビジネスに参入して気づいた宇宙という極限環境のポテンシャル
■宮丸和成さん(第10回/楽天・大手流通→ElevationSpace)
楽天、大手流通業を経て、宇宙環境利用・回収プラットフォームを開発するElevationSpaceのCOOに。「人生最後の転職という覚悟、夢を実現するために来た」という言葉通り、これまでのキャリアの集大成として宇宙を選んだ決意を教えていただきました。
「人生最後の転職という覚悟、夢を実現するために来た」楽天、大手流通業を経てCOOとして宇宙企業に転職した宮丸和成さんのWhy Space
コーポレート・業界サポート(人事・通訳・人材)
人事・労務、総務・法務、財務・経理、広報、通訳といったコーポレート職種と、人材紹介やメディアなど業界全体を支える仕事です。
宇宙スキル標準でも「コーポレート」は7カテゴリのひとつに位置づけられています。企業の規模拡大にともないエンジニア以外の職種の需要も広がっており、「宇宙業界で働くことは、もはやエンジニアだけの話ではなくなっています」(インバイトユー・浅野代表)。
■濵田牧子さん(第1回/ベネッセ・サイバーエージェント等→アクセルスペース)
編集者から人事に転身し、複数のベンチャーで人事責任者を務めた後、小型衛星ベンチャーのアクセルスペースにCHROとして入社。採用フローの抜本的見直し、行動指針(Axelspace Way)の浸透、オンボーディング改革という3つの変化を起こしました。転職の決め手は「この人とともに走りたいと思えるかどうか」。そして入社後の実感は「そこまで構えなくてよかった」。宇宙業界を目指す人へのメッセージは「怖くないよ、全然未知じゃないよ」でした。
「そこまで構えなくてよかった」人事のプロが宇宙ベンチャーのCHROになって変えた3つのこと【Why Space】
■大原知子さん(第9回/通訳者→アストロスケール)
名誉あるコンサルティングファームか、名の知れない宇宙ベンチャーか。2つの選択肢から宇宙を選び、スペースデブリ除去などに取り組むアストロスケールで通訳として活躍。10冊以上もの宇宙業界の専門用語などがまとめられたノートを見せていただきながら、「我ながら良いチョイスだった」と教えていただいたことは非常に印象に残っています。
「我ながら良いチョイスだった」名誉あるコンサルか名の知れない宇宙ベンチャーの2択で宇宙を選んだ通訳者の今
■浅野和之さん(第11回/リクルート→インバイトユー創業)
リクルートキャリアの上席執行役員などを歴任した企業人事のスペシャリストが、宇宙業界特化の人材エージェント「インバイトユー」を設立。「宇宙業界は閉じていなかった」という実感とともに、業界の人材流動を支えるインフラそのものをつくっています。内閣府の宇宙スキル標準委員会委員も務められました。
「宇宙業界は閉じていなかった」元リクルート上席執行役員が宇宙業界特化の人材エージェントを立ち上げたワケ
(5)Why Spaceの転職者に共通する3つのこと
これまでに10人以上の宇宙業界外からの転職をされた皆さんのお話を伺ってきたなかで、宇宙業界で働くことに関する共通点が見えてきたように思います。
共通点①原理原則・技術は業界を超えて通用する
山岸さんの「原理原則には多くの共通点がある」、小林さんの「技術は裏切らない」に象徴されるように、前職で磨いた技術やものづくりの原理原則が宇宙でも通用した、という声が数多く聞かれました。エンジン開発の燃焼技術は推進系に、車体の軽量化技術は構造設計に、電機の知見やスキルは衛星の電源システムに……。宇宙スキル標準も、まさにこの「共通性」を確認するためのツールとして機能することを期待されたものとも言えるでしょう。
共通点②「宇宙は特殊」という思い込みを乗り越えている
濵田さんの「そこまで構えなくてよかった」、浅野和之さんの「宇宙業界は閉じていなかった」。飛び込んでみたら意外と普通だった、という声も共通しています。実際、企業側も9割以上が業界経験不問で、それよりも「常識を疑える人」「チャレンジ精神が旺盛な人」といった柔軟性を重視しています。変化の速い環境で過去の経験に固執しないことも、多くの方に通じる姿勢だったように思います。
共通点③成長市場×使命感・達成感に惹かれている
井上さんの「個人の成長×社会を前進させる使命感」、宮丸さんの「人生最後の転職という覚悟」。市場の成長が自分のキャリアの成長とリンクすること、そして社会を前進させる使命感や打ち上げ成功の達成感が、転職の決め手として教えていただく方も少なくありませんでした。
なお、職種を問わず共通していたのが、機械・電気・ソフトウェアを統合する上流設計(システムエンジニアリング)人材とプロジェクトマネジメント人材への継続的な需要、そして英語力です。英語は「まずは片言でもいいから抵抗がないこと」が第一歩で、衛星運用ポジションでは本格的な英語力が求められるとのことです。
異なる立場から宇宙業界に関わる若手4名に、この業界に入った経緯、日々の仕事の中身、そしてこれから描くキャリアについて議論いただいた特別対談でも、宇宙業界で働くリアルについて、たっぷりとお話を伺いました。ぜひこちらの記事も合わせてご覧ください。
「私たちの世代が宇宙技術を社会インフラにする」衛星データ・保険・スペースポート・コンサル、若手4人が語る宇宙産業で働く理由とキャリアの可能性
まとめ
本記事では、内閣府「宇宙スキル標準」の分類も参考にしながら、宇宙ビジネスの職種をマクロに整理し、Why Spaceでご紹介した皆様の転職事例と職種マップを整理してみました。ロケットや衛星のエンジニアはもちろん、事業開発、経営、人事、通訳、人材紹介まで……宇宙の仕事の入り口は、想像以上に多様です。
そして、そのどの入り口にも共通するのは「前職のスキルが活きる」ということ。
Why Spaceの連載が続き、新しい方が増えていくたびに、本記事も更新していきます。5年後、10年後、日本の宇宙産業はどんな景色になっているのか。宙畑としても定期的に振り返っていきたいと思います。
「自分のこのスキルは宇宙業界で活かせるのだろうか?」と気になった方は、ぜひ宇宙スキル標準を眺めてみてください。また、この職種で宇宙業界に入れるか興味がある!という方や、Why Spaceでご紹介したい方をご存知の方は、宙畑までお問い合わせいただけますと幸いです。

