遠隔地の鉄道や農地にも通信技術を提供へ。イギリスが衛星通信に関する16件のプロジェクトに1,300万ポンドを出資【宇宙ビジネスニュース】
2026年8月18日、UK Space Agency(イギリス宇宙庁)は、衛星通信の16件のプロジェクトに資金提供すると発表しました。総額は1,300万ポンド(約28億円)です。16件のプロジェクトはESA(欧州宇宙機関)の通信技術開発プログラム「ARTES」の一部として実施され、身近な用途から深宇宙通信までテーマが多岐にわたります。
2026年8月18日、UK Space Agency(イギリス宇宙庁)は、衛星通信の16件のプロジェクトに資金提供すると発表しました。総額は1,300万ポンド(約28億円)です。
UK Space Agencyはイギリスの宇宙政策を担う政府機関です。ロンドンの経済・政策コンサルティング会社London Economicsによると、イギリスの宇宙産業は5万5,000人以上を雇用し、年間186億ポンド(約4兆円)を経済にもたらしています。
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16件のプロジェクトはESA(欧州宇宙機関)の通信技術開発プログラム「ARTES」の一部として実施され、身近な用途から深宇宙通信までテーマが多岐にわたります。
宙畑メモ:ARTES
ESAが衛星通信技術の研究開発を支援するプログラム。企業単独では困難な研究段階から実用化・市場投入までを一貫して支援します。捜索救助・遠隔医療・環境監視など幅広い分野への応用と、欧州宇宙産業の競争力強化を目指しています。
本記事では16件のプロジェクトの中でも、特にリリースで強調されていたプロジェクトを中心に紹介します。
(1)STARS
衛星ミッションを手がけるExobotics社が主導し、210万ポンド(約4.5億円)を受け取ります。
衛星運用者向けに超高速で耐久性の高い光通信の技術を実証します。将来的には衛星間、衛星と地上間でデータをより迅速に中継するネットワークを構想しており、今回は最初の衛星を投入します。
(2)Optimus
衛星レーザー通信の地上局を手がけるArchangel Lightworks社が主導し、184万5,000ポンド(約4億円)を受け取ります。
衛星と地上間で100Gbps (毎秒100ギガビット) 以上の速度でデータを送信できるレーザー通信システムを開発します。同社の従来機種に比べ、約10倍の速度にあたるとされています。
ブロードバンドや地球観測に加え、宇宙データセンターまで幅広い用途を想定しています。
(3)DTN Network Operations Centre
レーザー通信技術などを手がけるAalyria Technologies社が主導し、75万ポンド(約1.6億円)を受け取ります。
信号を送るのに数分から数時間かかる深宇宙でも、信頼性の高い通信を維持するネットワーク技術を開発します。将来の月ミッションやESAの「Moonlight」構想を支える基盤になるとしています。
宙畑メモ:Moonlight
地球と月の間の通信や、月面ミッションの通信・航法サービスを提供するESAの構想。国際標準に基づく共通インフラの確立、およびJAXAなどの国際パートナーとの協力により、各国の月探査ミッションを支援することを目指しています。
(4)SODOR
IT・ビジネスコンサルを手がけるCGI社が主導し、42万8,000ポンド(約9,200万円)を受け取ります。
スコットランド政府が所有する鉄道会社ScotRailの鉄道に衛星通信機器を搭載し、通信が届かない区間にブロードバンドを提供する実証です。イギリス政府は本土の全鉄道への衛星通信導入を進めており、本実証はその一環と位置づけられています。
(5)GAUFF
アグリテックを手がけるFarmer Charlie社が主導し、19万9,000ポンド(約4,300万円)を受け取ります。
農家や生産者が作物・土壌・周辺環境を監視する低価格のセンサーを開発します。衛星通信と携帯通信を組み合わせ、遠隔地の農村でも使えるよう設計されています。
リリースによれば、実用化は来年夏の終わりを見込んでおり、収穫量の改善と廃棄の削減につなげるとしています。
宇宙担当大臣のリズ・ロイド氏は、以下のようにコメントしています。
「この投資は、イギリスの宇宙イノベーションの真の幅広さを示すとともに、衛星分野のイノベーションが、より多くの鉄道利用時にインターネット接続を可能にしたり、よりスマートな農業を実現したりするなど、人々の生活を向上させることができると物語っています。優れたイギリス企業を支援することで、私たちは世界有数の宇宙大国としての地位をさらに高めるだけでなく、イギリス全土に質の高い雇用と新たな機会を創出しています。」
今回のニュースで面白いのは、宇宙ミッションに向けた通信技術のみならず、鉄道や農業といった身近な用途のプロジェクトが16件の中に選ばれ、リリースでも強調されている点です。
衛星技術の恩恵を、地上の活動で明確に受け取れるようにする動きが活発になっていると考えられます。実証段階の技術が人々の生活にどのように溶け込んでいくのか、今後も注目です。
参考記事
ESA - Advanced Research in Telecommunications Systems (ARTES)

