宙畑 Sorabatake

ニュース

圧倒的な信頼を誇るロケットの引退 第30回「今週のSPACE ENGLISH」

アメリカでもっとも信頼のあるdeltaロケットついに引退を表明。zephySがソーラーパワーで連続飛行最長を更新

英語が苦手で最新の宇宙ビジネス情報をキャッチするのに四苦八苦。そんな宙畑編集部員T.N.と一緒に、宇宙ビジネスで使用される英単語を学ぶ本連載。

今週は10/15~10 /22の7日間で『SpaceNews』内で最も頻繁に出現した英単語(※これまでに同連載でご紹介した英単語を除く)を10個ご紹介します。

それではさっそく、Let’s 今週のSPACE ENGLISH!!

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
集計対象記事:『SpaceNews』で該当期間に公開された記事のすべて
集計期間:2018/10/15~2018/10/22
※()内の数字は該当期間の登場回数です

1.delta(107)

9月15日に打ち上げられたdeltaロケット Credit : NASA

今週の最頻出単語はdelta(デルタ)でした。

これは、NASAが打ち上げたロケットの名前です。

デルタロケットは1989年に打ち上げられ、アメリカで最も信頼のおけるロケットの一つと評価されているロケットで、2018年ついに役目を終えるというニュースです。

デルタロケットはNASAで最も多く打ち上げられたロケットで、その数84回。そのうち失敗したのは、7回にとどまり、打ち上げ成功率は91.6%を誇ります。

大きな信頼の原点はある大きな失敗にありました。1997年4月。打ち上げられる13秒前に欠陥が発覚しました。しかし、発射を停止することが間に合わず、発射して上空490メートルのところで爆発しました。

この失敗について起きた問題をすぐさま解明し、同年の5月24日に打ち上げを成功させました。
現在でも失敗が伴う打ち上げの現場で、問題に取り組む姿勢として参考にされている事例だそうです。

deltaロケットが引退

deltaロケットの信頼性

2.airbus(26)

ヨーロッパの航空宇宙機器開発製造会社です。設立当初の事業体の名称エアバス・インダストリーでしたが、2001年に株式会社化されて現社名に変更されました。

最近話題になったのがzephyr S という高高度疑似衛星についてです。
こちらは、太陽光だけで2万1000メートル以上の高さで飛ばすことが可能で、世界のソーラーパワー航空機の中で最長である連続25日間の飛行を実現しました。

zephyr S Credit : zephyr S

現在の人工衛星よりも低コストで製造可能で、飛ばす際は下の動画のように手で持ち上げる様にして飛ばせることからアメリカ軍の活動にも活用できると期待されています。
また、人工衛星と類似したサービスを提供できると考えている様です。

AIRBUSについては7番でも説明しています。
Airbusがある企業と協力を発表

3.soyuz(22)

10月11に打ち上げられたソユーズロケットMS-10 Credit : NASA

ロシアのソユーズロケットのことです。1957年のスプートニク1号の打ち上げに使われたロケット(R-7A)を改良したロケットであり、1973年に改良され、現在のソユーズロケットに至ります。

事故に関しては先週日本でも大きな話題となりました。

長期滞在予定のクルー2名を乗せたソユーズMS-10という10月11に打ち上げられた有人宇宙飛行のロケットが、発射されてから2分後、問題が発生。乗っていた二人は自分たちが乗っている部分を本体から分離させ、無事帰還したというものです。

ソユーズはもう一つ問題を抱えています。今年6月6日に打ち上げられISSにドッキングしたロケット、ソユーズMS-9の軌道モジュールに穴があいていることを発表しました。

ドッキングされたソユーズから空気が漏れ出し、国際宇宙ステーション全体の空気が漏れる事態に発展したようです。

現在のところ、問題が宇宙空間においておきたのか、地球上においておきたのか明らかにされていません。

二つの問題について早期解決を図っています。

AIRBUSが契約を結んだ企業とは

 

4.base(20)

今回ランクインしたのはAir Force Baseが話題に上がることが多くあったからです。

Air Force Baseとは軍用飛行場のことです。
SpaceXのロケット打ち上げ増加に向け、アメリカ軍が協力する姿勢を示し、アメリカ軍用飛行場をSpaceXの打ち上げの拠点とすることを決定しました。

5.broadband(14)

広(周波数)帯域。衛星に関する話題では多くみられる単語です。

高速・大量通信衛星(HTS: High Throughput Satellite)は、莫大な利益を得る事ができるとされていました。しかし、多くの衛星か打ち上がっているため、費用の高い衛星を維持していくのは大変な状況です。衛星によって得られる利益はここ2年で30〜60%ほど減少し、来年以降も減少し続けると予想されています。

HTSの利益に変化が?

 

6.thinkom(19)

2000年に設立されたアンテナを製造している会社の名前です。

今週はこのThinKomがTelsat とSESと協力して行う事業に関してニュースになっていました。

SESは人工衛星の保有、運用を行っているルクセンブルクに拠点をおく通信事業を行う会社です。Telsatはフランスの通信衛星運営企業で、ヨーロッパだけでなくアフリカ、インド、アジアを視野に活動している企業です。

衛星の軌道には静止軌道と地球周回軌道があります。これまで通信衛星は常に地球の決まった地点と通信が行える静止軌道上に打ち上げられていました。ThinKomが狙うのは、地球周回軌道の高度の低い軌道を周回する低軌道や中軌道にある衛星と通信するハイテクかつ手頃なアンテナの製造です。

ThinKomが製造しているアンテナ Credit : ThinKom

そこで今年8月にはSESと、O3bという衛星(これは、other 3 billionの略で、通信環境のない30億人の人をネットにつなげることを目的に打ち上げられた衛星です。)との通信を試験し、先月は、LEO(地球低軌道といって、衛星の軌道のうち高度の低い軌道)にあるTelsatの衛星と通信を試験する計画があること、さらにTelsatのLEOに120機の衛星を打ち上げるという目標について民間の端末とコラボする計画があることも発表しました。

ThinKomとコラボ。新たな通信を試験

7partnership(19)

こちらは、AIRBUSのニュースで特によくみられた単語です。

AIRBUSは、いくつかの企業と契約を結んだ事が発表されました。選ばれた企業の中で話題をよんだのがPlanetという衛星画像を提供している会社です。

選定の理由としては、PlanetとAIRBUSが提供するサービスが補完関係になれるということです。

解像度が低い分衛星自体が安く製造できるので、衛星を数多く打ち上げることで観測エリアが広くなるPlanetと、解像度は高いのですがその分衛星の機数が少なく観測エリアの狭いAIRBUSがコラボすることで、planetの衛星で世界中をくまなく観測し、その中で見つけた気になる地点はAIRBUSの解像度の高い画像で詳細に確認していく計画です。

お互いにとって、事業拡大につながるとして、契約が決定しました。

データ解析に関して評価されているOrbital Insightとも契約を交わしたことも明らかにしました。

8.range(19)

範囲。

今週の英語フレーズ

Price tags range from a few thousand dollars to $250,000 depending on the application. Antennas mounted on the side of buildings, for example, cost far less than antennas built and qualified for commercial airliners.

価格の範囲はアプリケーションに応じて数千ドルから25万ドルです。例えば建物の側面につけるアンテナは商用航空機のために構築されたアンテナよりかなり低コストである。

ThinKomが手掛ける新たなアンテナ

9.cape(22)

Cape Canaveral Credit : NASA

ケープカナベラルというアメリカ合衆国のフロリダにある地名です。
ここには、アメリカ軍の基地があるほか、ケネディ宇宙センターがある場所で、多くのロケットが打ち上げられます。

今回ランクインしたのは、このケープでSpaceXがロケットの発射を増やす考えを説明したもの。宇宙産業の発展に繋がるとして期待集まっています。

SpaceXがロケット打ち上げを増やす考えを発表

10.mercury(8)

太陽系の惑星の1つである水星。

また、水星にてミッションを行う衛星の名前も、Mercuryの名を冠しています。

Ariane5の打ち上げ Credit : Arianespace

10月19日、Ariane5というロケットがフランス領ギアナより打ち上げられました。

このロケットにはMPO(Mercury Planetary Orbiter)という欧州が運営している探査機とMMO(愛称「みお」)という日本が運営する水星磁気圏探査機が乗せられています。これらはBepi ColomboというJAXAとESA(欧州宇宙機関)が協力して行う研究計画に利用されます。このミッションはいまだ明かされていない水星の大気や、水星を取り巻くガスについての手がかりを見つけることです。

日本と欧州の協力研究。Ariane5 打ち上げ

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
以上、第30回「今週のSPACE ENGLISH」いかがだったでしょうか。

次回の「今週のSPACE ENGLISH」は11/4(日)に10/22(日)~10/29(土)に公開された「SpaceNews」記事の最頻出英単語TOP10(これまでに紹介した英単語は除外)をご紹介します。

これまで英語が苦手でなかなか海外の宇宙ニュースを敬遠していたという方も、「今週のSPACE ENGLISH」で少しずつ宇宙英単語を学んで海外の宇宙ニュースにチャレンジしてみましょう!

執筆者:ラディッシュ担当M.S.
※これまでの「今週のSPACEENGLISH」はこちら

【宙畑おすすめの宇宙ビジネス入門記事】