アメリカの情報機関が選んだ宇宙ベンチャーとは
アメリカ国家地球空間情報局をご存知でしょうか。 世界中の地理空間情報を提供する機関なのですが、とある宇宙ベンチャーに14億円の投資を決定しました
世界の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部が、易しく解説!
アメリカの地理空間情報収集部隊:NGA
アメリカ国家地球空間情報局(National Geospatial-Intelligence Agency:NGA)をご存知だろうか。
名前の通り、アメリカの各部局に対して、世界中の地理空間情報を提供する機関である。
地理空間情報とは、ある場所(空間)に紐づけられた情報を表す。地図情報や衛星で撮った写真などを指すことが一般的であるが、広い意味では、食べログのようなサービスも、ある場所にあるレストランの情報・評価が分かるという意味で、地理空間情報に当たる。
NGAは商用の超小型衛星画像に期待感
NGAは1996年に創設された。情報収集に用いる衛星画像は、これまで政府御用達の画像販売元であるDigital Globeから買ってくることが多かった。Digital Globeが提供する衛星画像は、50cm程度とても細かいものまでみることができる(高解像度)ものの、値段的にも高かった。
ところが、近年NGAは商用、つまり政府向けではない画像にも興味を示し始めている。理由は、撮影の頻度である。
衛星による撮影の頻度は、ある駅に電車が何分おきに来るか、という事象を考えてもらうとわかりやすい。その線路全体で電車の本数が多くなれなるほど、1つの駅に来る電車の回数は多くなる。衛星も同様に、宇宙空間にある衛星の機数が多くなればなるほど、ある地点の上を通る頻度は高くなり、撮影の頻度は上がる。
つまり、撮影の頻度を上げたければ、衛星の機数を増やせばよい。
ただし、今までの同じハイスペックな衛星は高価なため、予算がいくらあっても足りない。そこで、超小型衛星の登場である。超小型衛星であれば、解像度は落ちるが1機あたりの費用を抑えることができ、撮影の頻度を増やすことができるというわけだ。
NGAは昨今の超小型衛星ブームを鑑み、2015年10月COMMERCIAL GEOINT STRATEGYの中で、NGAが使えそうな衛星画像サービスには積極的に投資する方針を打ち出した。
UrthcastやOrbital Insightなど有望な衛星画像ベンチャーに予算をつけ、利用の可能性について検討させたのである。
NGAはPlanetを採用し、14億円の投資をすることを決定
そして、この7月NGAは数あるベンチャーの中から、Planetを採用し、1年で14億円の予算をつけた。
Planetが提供する画像の解像度は3~7mであり、前述のDigital Globeの50cmに比べるとだいぶ粗い画像になる。しかし、この解像度であったとしても、安全保障上のいくつかの問題の推定や食料問題、インフラ開発などについては、充分に役立つだろう、とNGAは述べている。Planetは今回の資金を用いて、週に一度程度の観測頻度を今後さらに向上させていく予定である。
NGAによると、UrthecastやOrbital Insightなど他のベンチャーはNGAの求める撮影の頻度を満たすことができなかったという。その点、Planetはすでに142機の撮影可能な衛星を軌道上に有している。
老舗Digital Globeは・・・
元々NGAがよく衛星画像を購入しているDigital Globeはこの流れをどうみているか。
CEOのJeffrey Tarrは昨年10月に「NGAとの関係に何ら影響はないと考えている」と述べている。撮像の頻度は低くとも、高解像度の衛星が不要にはならないという見方だ。
そのような中で、Digital Globeも自身で超小型衛星に投資し始めている。
サウジアラビアの会社とジョイントベンチャーを立ち上げ、最低でも6機の衛星群を形成する計画のほか、WorldView Legionと呼ばれる衛星群を2020年までに整備し、1日になんと40回の撮像の頻度を達成するという。
NGAが期待する宇宙ビジネスの次の5年
NGAは、20日に発表した文書の中で、次の5年でさらにPlanetのような衛星画像プロバイダーが増えることを期待している。このところ、買収が相次ぎ衛星画像ベンチャーは収束方向に向かうと思われたが、NGAのこの発言を受けて、どのように市場が反応するか注目したい。
今週の英語フレーズ
NGA and our many customers have been learning how to use it across our varied mission sets in numerous locations so we truly understand where we get the bang for our buck.
NGAと多くのユーザーは我々の様々な場所の様々なミッションにどのように衛星画像を使うかを学び、我々はどのあたりで値段に見合う価値を得られるのかを理解したのである。
出典元
2017/07/19, NGA, NGA purchases $14 million subscription to utilize small satellite capabilities,
https://www.nga.mil/MediaRoom/PressReleases/Pages/NGA-purchases-$14-million-subscription-to-utilize-small-satellite-capabilities.aspx
2017/07/20, SPACENEWS, Planet wins second NGA satellite-imagery contract,
http://spacenews.com/planet-wins-second-nga-satellite-imagery-contract/
2015/10/26, NGA, New commercial GEOINT strategy emphasizes greater persistence, advanced analytics,
https://www.nga.mil/MediaRoom/PressReleases/Pages/New-commercial-GEOINT-strategy-emphasizes-greater-persistence,-advanced-analytics.aspx