宙畑 Sorabatake

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ISSの商用モジュール構築にAxiom Spaceが選出【週刊宇宙ビジネスニュース 1/27〜2/2】

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ISSの商用モジュール構築にAxiom Spaceが選出

NASAは1月28日に、ISSの商用の居住モジュールを構築するプログラムに、米国のベンチャー企業・Axiom Space(アクシアム・スペース)を選出したことを発表しました。

同社は2024年以降に自社の宇宙ステーションを追加で構築し、ISSの運用終了後には独立して運用することを目指しています。

2028年までのロードマップ Credit : Axiom Space

低軌道が民間企業に向けて開放されることによって、宇宙旅行やそれに付随する新規ビジネスの需要増加がさらに予想されます。Axiom Spaceの活躍は、さまざまな分野のセクターが宇宙ビジネスに参入する転機として、今後も注目する必要がありそうです。

今回Axiom Spaceが選出されたのは、次世代宇宙探査技術パートナーシップ(NASA’s Next Space Technologies for Exploration Partnership)の一環。

Axiom Spaceによると選出の決め手は、経営層が有人宇宙飛行に関する経歴を持っていることや、宇宙工学、運用、微小重力の活用、宇宙ビジネスにおけるファイナンスやマーケティング、法律などの専門知識の高さが評価されたことなのだそうです。

同社の創業者は、元ISSのプログラムマネージャーのMichael Suffredini(マイケル・サフレディーニ)氏と、ISSの運用を行うStinger Ghaffarian Technologiesを設立したKam Ghaffarian(カム・ガファリアン)氏。共同創業者の2人はどちらも有人宇宙飛行に関するプロジェクトに35年以上、携わっていた経験があります。

やはりレガシースペース出身の人財の独立は、民間による宇宙ビジネスの拡大において欠かせないキーワードと言えるでしょう。

また、Axiom Spaceと同じく宇宙ステーションのモジュールの開発を行うスタートアップ企業・Bigelow Aerospace(ビゲロー・エアロスペース)は、NASAの提供資金額を理由に同コンペティションに参加しない考えを明らかにしましたが、資金次第ではプログラムに参加したいと述べるとともに引き続き研究開発を続ける姿勢です。

中国とパキスタンの宇宙開発協力について考察した記事が話題に

1月30日、アジア太平洋地域の政治や社会的テーマを取り上げるニュースサイト「THE DIPLOMAT」が公開した、宇宙開発における中国とパキスタンの関係を考察した記事「All Weather Friends: China and Pakistan Space Cooperation(真の友人:中国とパキスタンの宇宙開発協力)」が話題を集めました。記事を執筆したのは、国際関係を専門に扱うジャーナリストのPreethi Amaresh氏です。

ガガーリン・ユーリが人類初の有人宇宙飛行を果たした1961年、パキスタン宇宙高層大気研究委員会(Pakistan Space and Upper Atmosphere Research Commission 以下、SUPARCO)は、パキスタン原子力委員会の配下の小委員会として発足しました。同組織は宇宙科学や宇宙工学の研究開発を行う国の機関として設立されました。
翌年には、観測ロケット・Rehbar-1を打ち上げ、日本とイスラエルに次いでアジアで3カ国目(世界では10カ国目)のロケット打ち上げ成功国となり、好調なスタートダッシュで宇宙開発に取り掛かったように見えたものの、軍事の干渉と教育資金の不足によって技術が継承されなかったのか、現在となっては、中国やインドの宇宙開発と比較して遅れをとっている状況です。

近年では、2018年にパキスタンのリモートセンシング衛星1号(PRSS-1)と科学実験衛星(PakTES-1A)が長征2Cロケットによって打ち上げられました。

宙畑メモ
PRSS-1(Pakistan Remote Sensing Satellite)
PRSS-1の主なミッションは、高分解能な地球観測です。光学センサーを搭載した衛星の製造・開発のみならず、地上管制局などの設備強化も合わせて行いました。
参考記事:「PRSS-1」

宙畑メモ
PakTES-1A(Pakistan Technology Evaluation Satellite)
およそ300kgで中低解像度の地球観測衛星。ミッション機器は南アフリカの企業が開発。PakTES-1Bは現在開発中です。
参考記事:「PakTES-1A」

さらに2019年に中国と宇宙探査における協定を締結したりするなど、やはりパキスタンの宇宙開発は中国に大きく依存しているようにも見えます。この状況についてAmaresh氏は冒頭で「中国の先進技術の恩恵を受けられるようにパキスタンの宇宙開発計画は立てられている」と書いています。
国際関係の視点から見たアジアの宇宙開発の状況を、ぜひご一読ください。

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参考

NASA Selects First Commercial Destination Module for International Space Station

Axiom selected by NASA for access to International Space Station port

All Weather Friends: China and Pakistan Space Cooperation

History

パキスタン宇宙高層大気研究委員会

China, Pakistan sign agreement on space exploration