過熱する軌道上サービス。アストロスケールが静止軌道上サービスに参入!【週刊宇宙ビジネスニュース 6/1〜6/7】
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アストロスケールが静止軌道上サービス市場に参入
宇宙ゴミ除去に取り組む株式会社アストロスケールホールディングスの米国拠点が、イスラエルの衛星延命・サービス会社であるEffective Space Solutions R&D Ltd. (ESS)の知的財産権を取得しR&D 拠点従業員を雇用する正式契約を締結したことを、6月3日に発表しました。
今回の契約により、アストロスケールは、低軌道上サービスに加えて、静止軌道上サービスまで事業領域を拡大することになりました。
ESS社は静止軌道ミッションの経験が豊富で、特にこれまで開発を手がけていたSpace Droneプログラムの技術は、アストロスケール米国拠点が取り組む衛星寿命延長サービスに大きく寄与すると見られています。
アストロスケール創業者兼 CEO の岡田光信氏は、今回の契約にあたり以下のように述べています。
世界は今、宇宙技術を利活用したサービスに依存しており、この新型コロナウィルスの影響でより一層その依存度は増していると言えます。アストロスケールの想いは、宇宙の持続可能性の実現であり人工衛星の寿命延長サービスの技術獲得は、その目的実現のためへの大きな躍進と言えるでしょう。イスラエル拠点のメンバーをチームとして迎え、共にビジョンを実現できることを楽しみにしています。
また、ロシアの国営宇宙企業であるロスコスモスは、軌道上の大型のスペースデブリを清掃する「ソケット」の特許を取得したことを6月7日に発表しています。大手の衛星通信事業者のスカパーJSAT株式会社も、デブリを除去する人工衛星の開発を始めたことを発表しています。稼働する人工衛星の数も増えるなか、今後はデブリ除去に取り組む企業も増えてくるでしょう。
アストロスケールは5月より、独立系データセンタープロバイダー株式会社アイネットを新たな投資家として迎え入れ、シリーズ E の資金調達を開始させています。
より強固なポートフォリオを構築しながらデブリ低減のための軌道上サービスに取り組むアストロスケールに引き続き注目です。
Momentusが英国企業とサービス提携を発表
続いて、こちらも軌道上サービスに関するトピックです。
ロケットの相乗り斡旋を行うMomentusが、超小型衛星のフォーメーションフライト管理サービスを提供する英国企業のOrbAstroとのサービス提携を6月4日に発表しました。
この契約に基づき、Momentusは、2021年の打ち上げを予定しているSpaceX社のFalcon9の相乗り打ち上げで、OrbAstroが開発した3機のキューブサットを飛行させることになります。
Momentusは、OrbAstroキューブサットを同社の軌道間運搬機Vigorideに搭載し、Falcon9の打ち上げ終了後、Vigorideにより高い高度まで輸送させます。
OrbAstroのキューブサットは、以下のミッションの実証を行う予定です。
- ・ニューラルネットワークを搭載可能なオンボードコンピューター
- ・従来の5倍の性能の電源系
- ・コンパクトな姿勢制御系
- ・kWクラスの熱制御
Momentus CEOの Mikhail Kokorich氏は、今回の契約にあたり以下のコメントを述べています。
We are excited to see OrbAstro working on developing key technologies that could really enable flocks of satellites to be in close proximity of each other. In the future, this technology may enable Momentus to do rendezvous and proximity operations for refueling, satellite servicing, repositioning and more.”
(訳:OrbAstroが多数の衛星接近させることを可能にする技術の開発に取り組んでいることを知り、私たちは非常に興奮しています。将来的にはこの技術により、Momentusが燃料補給・衛星整備・軌道再配置などのためにランデブー運用を行うことができるようになるかもしれません。)
近年、プレイヤーも増えてきた軌道上サービス。今後の急成長が見られるこの市場に、引き続き注目です。
中国独自の宇宙ステーション計画の詳細が明らかに
先日有人宇宙船の試験飛行に成功した中国有人宇宙機関(CMSA)は、独自の宇宙ステーション”天宮(Tiangong)”の詳細と打ち上げスケジュールを発表しました。
中国のニュースメディアによると、天宮は2022年末までに完成し、高度340~450kmで地球を周回する予定とのことです。天宮は少なくとも10年間の運用が可能で、船内では科学技術実験や企業の応用研究の実験が行われます。また、3名の宇宙飛行士が6ヶ月間滞在することができます。
天宮はT字型で、中央にコアモジュールの”天河(Tianhe)”、両側に2つの実験室モジュールが配置されます。宇宙飛行士の居住区と地上との通信センターはコアモジュールの天河に位置する予定です。各モジュールの重量は約20トンで、天宮全体の重量は66トンとなるようです。
天宮の建設はかなりハイペースなスケジュールとなっています。CMSAは、天宮を完全に組み立てるために、2021年初頭からの2年間で11回の打ち上げを計画しています。
天宮の基本的な構成モジュールが組み立てられた後は、宇宙望遠鏡である”迅天(Xuntian)”が打ち上げられ天宮に接続されます。迅天は2m口径の宇宙望遠鏡であり、解像度はハッブル望遠鏡と同等ですが、視野角はハッブル望遠鏡の300倍となるようです。
また、CMSAは今回の天宮の詳細発表と同時に、2020年7月に最大18人の新しい中国人宇宙飛行士が選ばれることも発表しました。中国人宇宙飛行士の選抜は過去2回実施されており、いずれも中国の空軍組織である中国人民解放軍空軍(PLAAF)から選抜されていました。しかし今回はPLAAFからだけでなく、科学・工学の知識を有する民間人からも選抜される予定です。
中国は近年、宇宙ベンチャーの数も増えており、宇宙ビジネスにも力を入れています。
民間の中国人宇宙飛行士誕生・および独自の新型宇宙ステーションの建造など、世界をリードする中国の宇宙開発からは目が離せません。
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