宙畑 Sorabatake

衛星データ

衛星データ利用にチャレンジ! 国や地方公共団体が支援する実証実験プログラムと過去事例紹介

衛星データ利用を進めてみたいけれど、最初の一歩をどう踏み出したらよいか分からない!そんな方向けに実証実験事業一覧と、その申請方法のコツについてまとめました!

宙畑では日頃から、衛星データの利用について色々とご紹介しています。
しかし、いざ衛星データを使ったビジネスを始めようとすると「まず、何からやったらいいの?」という疑問が沸いてきます。

そこで、今回は衛星データビジネスの実現に向けた大きな一歩になる実証実験について、その種類や応募方法など詳しくご紹介します!

(1)実証実験とは

実証実験とは、ビジネスや技術開発の中で「こういうことができるのではないか」という仮説を、実際にやってみることで検証するための実験のことです。コンセプトの証明という意味で、Proof of Concept 略してPoC(ポックまたはピーオーシー)とも呼ばれます。

新しい技術などを用いる際、いきなりサービス化や商品化するのは難しいので、まずはその技術を使ってどういったことができるのかを理解することが大切です。

本記事で紹介するのは、国や地方公共団体が実証実験に対して支援を行うプログラムです。国や地方公共団体が、新しい技術の導入・促進や実現したい未来のために、実証実験を行う企業や団体に資金やその他の援助を行うことがよく行われています。

衛星データに興味はあるけど、実験のための資金が用意できない、社内で稟議を通すのが大変などという方は、実証実験の目的や時期、金額規模に合わせて活用することをおすすめします。

(2) 意外とある!?国内実証実験一覧と標準スケジュール

資金援助のある実証実験は、国や地方公共団体が実施しているものが多く、年によって時期はまちまちです。

昨年あったからといって今年もあるとは限りませんが、本記事で既に募集が開始されているものに加えて、例年公募のあるものも含めて、衛星データと相性の良い実証実験についてご紹介していきます。

【募集中】課題解決に向けた先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証プロジェクト

・URL:http://www.uchuriyo.space/model/
・主催:内閣府宇宙開発戦略推進事務局

・目的:衛星リモートセンシングデータ を活用したソリューションによる効果を実証することで、先進的な成功事例の創出を図りつつ、民間事業者が自律的に衛星データを用いたソリューション展開を行うこと

・募集内容:
新事業・新サービスの創出や既存産業の付加価値向上、生産性向上、省力化または効率化、地球規模課題の解決や安全・安心で豊かな社会の実現等に貢献する先進的な衛星リモ
ートセンシングデータ利用モデルの実証プロジェクトの提案を募集します。

「タイプ 1」
従来どおり、衛星データを利活用した課題解決を図る先進的な実証モデルの提案を募集しま
す。
「タイプ 2」
衛星データの利用に関する技術的有効性の確認に留まらず、タイプ 1 よりもより具体的・定常的な業務への適用に際しての課題の解決や、水平展開や波及効果を意識した成果最大化が見込まれる提案を募集します。

・金額:
「タイプ 1」1 件あたり上限 1,000 万円(消費税 10%込)
「タイプ 2」1 件あたり上限 2,000 万円(消費税 10%込)

・実施時期:
公募  2020年6月2日(火)~ 6月29日(月)※募集中
事業実施 2020 年契約締結日(7 月下旬以降~)~2021 年 3 月 26 日(金)

こちらは本年度の募集が先日開始されている実証プロジェクトです。過去3年にわたり実施されており、例年6月頃に募集が出されます。

Tellus利用促進実証事業

・URL:http://tellus-data.space/ ※2019年度
・主催:経済産業省

・目的:宇宙由来のデータとその他の地上データを組み合わせたプラットフォーム活用型アプリケーションの創出を加速するため

・募集内容:
(1) データホルダー連携型実証事業
衛星データと親和性の高い地上データを保有・収集可能なデータホルダーと連携し、衛星デ
ータ及び準天頂衛星の高精度測位データを組み合わせた、地域の課題や産業競争力強化に資
する新たなアプリケーションを実証する。成果物及び実証過程で収集・生成したデータは基
本的に Tellus 上に公開し、他のユーザーが利用可能な状態とする。

(2) エンドユーザー連携型機能調査検討事業
官庁・地方自治体等、衛星データの解析利用ニーズを有するエンドユーザーと連携し、Tellus上に必要なツールや Tellus を用いたサービスの要件定義、実現可能性の調査検討を行う。なお、今年度の検討事業の結果、将来的に Tellus の協調領域として整備・公開する必要性が高い機能については、次年度に Tellus への実装に向けた開発を行う可能性がある。
サービスの例) 船舶の動静の把握、道路・鉄道の新設・寸断・延長の把握、原油等による
海洋汚染の把握 等

・金額:
(1)税込1,500万円(上限)を3件程度
(2)税込1,000万円(上限)を2件程度

・時期:
公募(2019年度)令和元年7月31日(水)~ 8月30日(金)
事業実施 (2019年度)契約締結次第(令和元年 9 月下旬予定)~令和 2 年 2 月 14 日(金)

こちらは名前の通り、衛星データプラットフォームTellusの利用促進のために実施された事業です。昨年は夏ごろに募集されており、本年度はまだ事業について公開はされていません。

宇宙航空科学技術推進委託費

・URL:https://www.mext.go.jp/a_menu/kaihatu/space/jigyou/detail/1347482.htm
・主催:文部科学省

・目的:宇宙航空利用を新たな分野で進めるにあたって端緒となる技術的課題にチャレンジする研究開発、宇宙航空開発利用の発展を支える人材育成等、宇宙航空開発利用の新たな可能性を開拓するための取組を行い、さらなる裾野拡大を目指す。

・募集内容:
複数ありますが、衛星データに関連するのは以下のプログラムです。

(2)宇宙利用技術創出プログラム
 衛星から得られたデータ等(例:リモートセンシング情報や位置情報)の宇宙科学技術を活用し、異分野シーズ(航空科学技術(例:無人機等)、情報通信技術(例:IoT、ビッグデータ)、ロボット技術等)との融合による新たな宇宙利用技術に関する研究開発を行うことにより、環境、農業・漁業、防災、スポーツ、地理空間等の様々な分野における実用化につながる、新たな価値を提供する技術の創出を目指す。

・金額:
各年度上限2,000万円

・実施時期:
公募 2020年2月20日(木)~4月20日(月)
事業実施 原則として、令和4年度末までの3か年としますが、1か年、2か年でも問題ありません。

こちらは本年度の募集をすでに終了していますが、10年間毎年募集しており、今後も定期的に募集があると考えられます。

【募集中】豊橋市衛星データ利活用促進支援事業

・URL:http://www.tsc.co.jp/satellite/
・主催:豊橋市

・目的:衛星データ利活用のアイデア創出から事業化までを本市で実現できる環境づくりを行い、地域課題の解決や新たな産業の創出を図り、もって本市産業の振興に資すること

・募集内容:
(1) 実証実験
(2) 衛星データ利活用ヒアリング
(3) 宇宙ビジネス相談窓口
(4) 宇宙ビジネス検討イベント(アイデアソン)の開催
(5) Tellusとの連携、各種ネットワーキング
(6) 関連事業

・金額:
補助率は、3分の2以内、補助上限額 200 万円を予定

・実施時期:
公募 令和2年5月27日(水)~令和2年6月23日(火)
事業実施 交付決定日から事業報告の完了日または令和 3 年2 月 26 日まで

本事業の対象は、愛知県豊橋市内に事業所を有する事業者となっていますが、自治体によってはこのように個別に事業を募集している場合もありますので、該当の自治体をご確認ください。

以上が、宇宙技術の利用促進を目的とした実証事業3件でした。
それ以外にも、実現したい未来のテーマが衛星データと相性の良いものがありますので、ご紹介しておきます。

【募集中】みちびきを利用した実証事業

・URL:https://qzss.go.jp/overview/information/applidemo_200511.html
・主催:内閣府

・目的・募集内容:
みちびきのサブメータ級測位補強サービス、センチメータ級測位補強サービス、災害・危機管理通報サービス、衛星安否確認サービス、衛星測位サービスを用いた新たなサービス・分野での先進的かつ事業化を見据えた実証実験。

・金額:
1件あたり1000万円が上限

・実施時期:
公募 2020年5月11日(月)~2020年7月3日(金)※募集中

【募集中】データ利活用型スマートシティ推進事業

・URL:https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu06_02000247.html
・主催:総務省

・目的・募集内容:
都市や地域の機能やサービスを効率化・高度化し、生活の利便性や快適性を向上させるとともに、人々が安心・安全に暮らせる街づくりを目的として、複数分野のデータを収集し分析等を行う基盤(プラットフォーム)を整備するとともに、ベンチャー企業などの多様な主体が参画するための体制整備等を行う事業

・金額:
補助率は1/2

・実施時期:
公募 令和2年6月30日(火)※募集中

情報通信技術利活用事業費補助金(地域IoT実装推進事業)

・URL:https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu06_02000246.html
・主催:総務省

・目的:
これまでの実証等の取組を通じて創出された「分野別モデル」の一層の普及展開を図るため、地域での取組の提案を募集します。

・募集内容:
地域IoT実装推進タスクフォースにおいて策定されたロードマップのうち、以下に該当する「分野別モデル」の横展開事業であること。
 (公募を実施する分野別モデル)
•プログラミング教育
•医療情報連携ネットワーク(EHR)
•子育て支援プラットフォーム
•G空間防災システム
•スマート農業・林業・漁業
•地域ビジネス活性化モデル
•観光クラウド
•オープンデータ利活用
•ビッグデータ利活用
•シェアリングエコノミー

・金額:
事業費総額の1/2以下(民間事業者)

・実施時期:
– 公募 毎年4月~5月
– 事業実施 8月~3月

スマートシティモデル事業

・URL:https://www.mlit.go.jp/toshi/city_plan/toshi_city_plan_tk_000048.html
・主催:国土交通省

・目的・募集内容:
AI 、 IoT 等の新技術、官民データをまちづくりに取り入れ 、持続可能で分野横断的な取組を目指し、 都市・地域の課題 に係る ソリューション システムを実装するモデル事業を公募

・金額:
総額1.1億円より支援

・実施時期:
2019年は3-4月に公募

地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業

・URL:http://www.chiki-lb.jp/
・主催:経済産業省

・目的・募集内容:
単独もしくは複数の中小企業等が、複数の地域に共通する地域・社会課題について、技術やビジネスの視点を取り入れながら、複数地域で一体的に解決しようとする事業(実証プロジェクト)について、その経費の一部を補助する事業を行うことにより、中小企業者等の地域・社会課題解決と収益性との両立を目指す取組である「地域と企業の持続的共生」を促進し、地域経済の活性化を実現するため、令和2年度当初予算「地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業補助金」に係る間接補助事業者を公募します。

・金額:
中小企業(みなし大企業除く)、一般社団法人、一般財団法人、特定非営利活動法人
上限額 : 3,500万円
下限額 : 100万円
補助対象経費の
2/3以内

みなし大企業(ただし、みなし大企業を除く中小企業等との連名申請が必要)
上限額 : 3,500万円
下限額 : 100万円
補助対象経費の
1/2以内

・実施時期:
公募 令和2年4月22日(水曜日)~令和2年5月20日(水曜日)

グリーンインフラ活用型都市構築支援事業

・URL:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/teian/sdgs_kanrenyosan/pdf/sankou.pdf
・主催:国土交通省

・目的・募集内容:
SDGs関連。官民連携・分野横断により、積極的・戦略的に緑や水を活かした都市空間の形成を図るグリーンインフラ※の整備を支援することにより、都市型水害対策や都市の生産性・快適性向上等を推進する。

環境で地方を元気にする地域循環共生圏づくりプラットフォーム事業費

・URL:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/teian/sdgs_kanrenyosan/pdf/sankou.pdf
・主催:環境省
・目的・募集内容:
①地域循環共生圏の創造に向けて取り組む地域・自治体の人材の発掘、地域の核となるステークホルダーの組織化や、事業計画策定に向けた構想の具体化
などの環境整備を推進する。
②地域・自治体が、地域の総合的な取組となる事業計画を策定するにあたって、必要な支援を行う専門家のチームを形成し派遣する。
③先行事例を詳細に分析・評価し、その結果を他の地域・自治体に対してフィードバックすることにより、取組の充実を促す。
④都市部のライフスタイルシフト等に向けた戦略的な広報活動(シンポジウム

また、いわゆるリモートセンシングとは異なりますが、測位情報を使った実証実験も行われています。

(3)実証実験を申請する時の手順とポイント

前章では、衛星データと相性の良い実証実験をご紹介してきましたが、これらに応募するには具体的にどのような手順で考えたら良いのでしょうか。

本章では、一例として実証実験に応募するときの流れとポイントをご紹介します。

例として、現在公募中の「課題解決に向けた先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証プロジェクト」について考えてみます。

なお、紹介する内容は宙畑編集部が考えた一例であり、採択の結果を保証するものではない点にご留意ください。

検証したい項目を考える

最初に決めるのは「検証したい項目」です。この実証実験で何を検証し、実験が上手くいったら何が実現できるのかを明確にする必要があります。

例えば、簡易な解析は行ってある程度感触は掴めているものの、精度としてはまだ不十分なものの場合は、条件を色々と変えて実験回数を増やすことが必要です。

また、実際のサービス開始を見据える場合、手作業で衛星データを1枚1枚解析していく訳ではありませんので、ITシステムやユーザーが利用できるインターフェースを用意する必要があります。

このように、現時点で何が足りないのかを洗い出し今回の実験で何の実証を行うかを明確に定義します。

応募する実証実験を決める

先に挙げた通り、国による実証事業は数多く存在します。

検証したい項目と実証事業の目的に照らして、相性の良いものを選びます。
実証実験の目的を理解する
実証実験の目的を見ていくと、「課題解決に向けた先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証プロジェクト」では以下のような記載があります。

(略)衛星リモートセンシングデータを活用したソリューションによる効果を実証することで、先進的な成功事例の創出を図りつつ、民間事業者が自律的に衛星データを用いたソリューション展開を行うことを目的としています。
 これまで宇宙産業に関わりの薄かったソリューション開発を担う IT 事業者や、防災、農林水産業、インフラ維持管理、交通、物流、金融・保険、スポーツ、国土強靭化等の非宇宙分野の事業者や国・地方公共団体等の潜在的ユーザーが一体となって、新たなアイデアを持ち込むことで、従来の宇宙関係者に限らないユーザーの発掘・拡大を図ることにより、衛星データ利用拡大やこれを通じた経済社会への一層の貢献を目指しています。

課題解決に向けた先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証プロジェクト

自分たちが行おうとしているプログラムがこれらの目的に合致しているか、うまく絡められそうかを確認しておきましょう。

実証実験の時期

また、大事なのが事業実施の期間です。事業はいつからいつまでに実施しなければいけないのかが各事業の募集要項に記載されていますので、確認しておきしょう。

晴れの日でないと実施できない実験を、雨季のアジアの国でやることは難しいですし、農業に適用する場合、種まきの時期が良いのか、成長時期か、収穫時期か、その期間と実証実験の期間が合致していることを確認します。

「課題解決に向けた先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証プロジェクト」の場合、ホームページの下の方に公募要項のリンクがあります。

この要領を見ていくと以下の記載があります。

Source : http://www.uchuriyo.space/model/document/outline.pdf

この事業の場合、最終的に実績報告書などを提出することを考えると、7月下旬以降~3月頭までが実際に実験を行うことができる期間と言えます。

応募の座組を考える

次に考えるのは応募の座組です。どのような体制でこの実証の公募に応募するのか、ということです。

「課題解決に向けた先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証プロジェクト」の場合、公募要領に以下の記載があります。

Source : http://www.uchuriyo.space/model/document/outline.pdf

「衛星データの利用者(ユーザー側)と、利用サービスの開発・提供者(サービス提供者)を含めること」とあります。ユーザー視点を失わないことを重要視していることがわかります。

昨年の実証採択案件の体制をいくつか見ていくと、以下の様になっています。

過去の実証実験から見る座組

サービスの開発・提供者の中の詳細な分担(とりまとめ、衛星データ解析、システム開発)は、各社の業務内容から宙畑編集部が推定した内容になります。

株式会社天地人の場合は、サービスも解析も開発も自社で実施するため、キウイの栽培地を探すことに使いたいゼスプリフレッシュプロデュースジャパン株式会社を衛星データ利用者に設定したシンプルな布陣になっています。

それ以外のチームでは、大きく
1.サービスとりまとめ(検証に成功した際にはサービスを提供する会社)
2.衛星データ解析の企業
3.ITシステム開発を行う企業
に分けられます。

本記事を読まれている方の多くが、衛星データに興味を持ち、サービスとりまとめをされたい方なのではないかと思います。その場合には、衛星データ解析企業やITシステム開発の企業をパートナーとして探すことで、公募に通る可能性が上がります。

ITシステム開発は、自社でその機能を持っていればそれでも構いませんし、宇宙に関する知識を必要としないので、一般的なITシステム開発の企業に依頼をするとよいでしょう。最終的に作るアプリのイメージが地図ベースの場合には、GISに強い企業を選ばれるとよいかもしれません。

衛星データ解析企業については、ご自身で勉強されてトライをされてもいいですし、すでに専門にしている企業に依頼するという方法もあります。これまでの実証実験のチームをみていくと、例えば以下のような企業・団体が担当されています。
※相談にのってもらえることを保証するわけではありませんので、予めご了承ください

(順不同)
・国際航業
・一般財団法人リモート・センシング技術センター
・一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構
・宇宙技術開発株式会社
・ESRIジャパン株式会社
・アジア航測株式会社
・大学、研究所等

次に、応募する際に代表者を決めます。

通常はサービスとりまとめの企業もしくはデータ利用者が代表者となるケースが多いようです。代表者は、実証プロジェクト終了後、実施経費に係る帳簿及び全ての証憑書類を備え、会計報告を行う必要があります。また、プロジェクト成果等をとりまとめた成果報告書を提出します。

採択された場合には、委託費は代表者がとりまとめることが求められるので、参加する各社で費用が発生する場合には、別途契約を結ぶ必要があります。

なお、アイデアはあるが、誰にどのように相談すればよいかお困りの方は、お力になれる場合もあるかもしれませんので、お気軽に宙畑ホームページのコンタクトよりお問い合わせください。

予算案を作成する

続いて、実証実験の予算を考えます。
実証事業によって費用の上限や、企業負担分についての制約条件、使途の制限があるので注意が必要です。

再び公募要領を見ていくと、以下の記載があります。

「※1 件あたりの委託金額については、応募状況等によって柔軟に変更します。」とあり、採択件数が多くなる場合には、上限金額よりも少ない金額で分配される可能性もあるので、注意が必要です。

また、「外注費は原則として経費総額の5割未満」とあり、先ほどの衛星データ解析の業務や、ITシステム開発を外注する場合には注意が必要です。

計上可能な経費として以下の記載があります。

実証実験にあたり必要な経費は、ざっくりまとめると以下の通りです。

①人件費
②実験経費(実験機材、旅費、データ購入費など)
③システム開発費

①人件費

今回の場合、代表者の企業の人件費以外は外注費または再委託費で計上するように指示があります。

また、FAQにて人件費の単価は各社の規定に沿えばよい(確証が必要)とあります。

実験の準備と実験の実施、その後の評価や報告書をまとめるまでの全ての工数を見積もり、各社の単価で計上します。

費用は実証実験終了後に、最終的に必要な報告書類を全て揃え、「確定検査」終了後に後払いで支払われます。

尚、人件費については実際にいつ稼働したかを証明するための業務日誌の提出が求められるケースが多いので注意してください。

②実験経費(実験機材、旅費、データ購入費など)

実験にあたり必要なデータや実験機材があれば計上します。また、実験の場所が遠く旅費が発生する場合も計上します。

③システム開発費

今回の実証事業の場合は、社内で実施する場合は人件費として計上、社外で実施する場合には、外注費または再委託費とするのがよいでしょう。

尚、再委託費とする場合には経済産業省大臣官房会計課作成の「委託事業事務処理マニュアル」(平成31年4月版)の中に必要な事務処理についての記載があるので、一読しておくと良いでしょう。※軽微な再委託(契約金額100万円未満の再委託(請負(外注)その他委託の形式を問わない)をいう。)の場合には免除されます。

以上を踏まえて、上限金額を意識しながら、予算を作成していきます

提案の強みを考える

さて、頑張って応募しても、採択されなくては意味がありません。

採択されるためには、通常のビジネスにおける「強み」に加えて、応募する実証実験に沿った「強み」を考える必要があります。

このことを考えるために、もう一度公募要領を読み返してみます(何度でも読む)。注目すべきはこの事業が実施されるに至った経緯が分かる冒頭の部分です。

―――(引用ここから)
(1)目 的
宇宙基本計画(平成 27 年 1 月宇宙開発戦略本部決定)においては、民生分野における宇宙利用を推進するにあたって、宇宙を活用した地球規模課題の解決と安全・安心で豊かな社会の実現、関連する新産業の創出を図ることとされています。
これに関して、2017 年 5 月に宇宙産業振興小委員会で取りまとめられた「宇宙産業ビジョン 2030」では、衛星データの先進的な利用モデルの実証・普及等を通じた新調査・新サービスの創出について記載しています。

また、宇宙基本計画工程表(令和元年 12 月宇宙開発戦略本部決定)においては、利用ニーズの各プロジェクトへの反映が掲げられており、政府衛星の各プロジェクトに現場の利用ニーズが反映されるような仕組みづくりを引き続き検討することとされています。
こうした背景を踏まえ、「課題解決に向けた先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証プロジェクト」(以下「本事業」という。)では、衛星リモートセンシングデータを活用したソリューションによる効果を実証することで、先進的な成功事例の創出を図りつつ、民間事業者が自律的に衛星データを用いたソリューション展開を行うことを目的としています。

これまで宇宙産業に関わりの薄かったソリューション開発を担う IT 事業者や、防災、農林水産業、インフラ維持管理、交通、物流、金融・保険、スポーツ、国土強靭化等の非宇宙分野の事業者や国・地方公共団体等の潜在的ユーザーが一体となって、新たなアイデアを持ち込むことで、従来の宇宙関係者に限らないユーザーの発掘・拡大を図ることにより、衛星データ利用拡大やこれを通じた経済社会への一層の貢献を目指しています。
―――(引用ここまで)

太字にした部分などが、大事な要素であるということが分かります。
それぞれについて、具体的な対応を考えてみると、

●政府衛星の各プロジェクトに現場の利用ニーズが反映されるような仕組みづくり
⇒現場の利用ニーズが分かるメンバーを体制に含める。どの政府衛星が使えそうかを明確にする。

●これまで宇宙産業に関わりの薄かったソリューション開発を担う IT 事業者
⇒サービスのとりまとめやITシステム開発については、今まで宇宙産業に関わりが無い方がむしろ有利。

●潜在的ユーザーが一体となって、新たなアイデアを持ち込む
⇒ユーザー側は一緒になって考え実証実験に参加してくれる熱意があるか(これは、通常のビジネスにも通じるところですが)。これまでやられてきたアイデアとの差は何か。

といったポイントを提案書に盛り込むと、評価が高くなると考えられます。

もちろん大前提として、一般のビジネスとしての「強み」である、ロードマップ(実証実験後のビジネス化に向けた計画、市場規模など)も考えて一緒に記載していきましょう。

必要書類を作成する

以上のことを考えたら、必要資料の作成に取り掛かりましょう!

必要な書類は同じくウェブサイトに掲載されています。

Source : http://www.uchuriyo.space/model/

実証実験により、フォーマットは異なりますので、ここでは詳細な解説は控えますが、これまでに説明したことが考えられていれば中身は記載できるはずです。

提出前にはもう一度公募要領を読み直して、見落としがないか確認した上で提出しましょう。

例えば、知的財産権の帰属については以下のような記述があり、実証実験後の取扱いに注意が必要です。

(4)国内の実証実験事例

実際に実証実験をどのような企業が利用して、何を実施したのか、その後どのような活動をしているのかいくつか事例を見てみましょう。

途上国農家ビッグデータとリモセンによる農業金融サービスの実証

http://www.uchuriyo.space/model/2017/pdf/8_2_MRIrev.pdf

概要は以下の通りです。

・この事業が向き合った課題
途上国においては、農家向けの投資が必要であるにも関わらず、農地の資産評価(収益性)や信用評価が正しく実施できない(結果、投資の機会を逸している)

・実証内容
そこで、カンボジアを対象に、現場収集データ(農家の収入・収量、スマホを用いた農地状況の報告)とリモセンデータによる農地の地理的状況、実際の作付状況、インフラ整備状況を把握し、農家の信用力を評価するモデルを構築し、これによりファイナンスが可能となるか評価を行った。

また、結果は以下の通りまとめられています。

その後、プロジェクトメンバーであるAgribuddy, Ltd社は実際に実装すべく、検討を進めています。

衛星データで地域活力を創造する ~キウイフルーツ ポテンシャル名産地発掘プロジェクト~

Source : http://www.uchuriyo.space/model/2019/document/model01.pdf

こちらは2019年度の課題解決に向けた 先進的な衛星リモート センシングデータ利用モデル実証プロジェクトで採択された事例です。

衛星データ利用者にキウイの生産販売として有名なゼスプリフレッシュプロデュースジャパン株式会社が、サービス提供者には株式会社天地人が名を連ねています。

プロジェクトの概要は、以下の通りです。

攻めの農林水産業と地域活力の創造が求められている現在、潜在的な土地価値を明らかにし、参入リスクを下げつつ高付加価値作物へシフトすることが一つの答えとなる。本プロジェクトでは、ゼスプリ社のキウイフルーツを対象とし、衛星データ、特に日本が得意とする高精度なリモートセンシング技術による気象情報や地形情報を機械学習で分析・統合することで、ポテンシャル名産地を発掘する。

天地人社の活動は宙畑の記事でも紹介しています。

最近では2020年6月1日に欧州の衛星開発ベンチャーConstellRとMOU締結するなど、実証実験終了後も精力的に活動を進めています。

(5)海外の実証実験一覧と事例

最後に、英語に苦手意識が無ければ、海外でも実証実験プログラムが数多く行われていますので、ご紹介します。

Copernicus Masters

https://copernicus-masters.com/

欧州で実施しているプログラムで、9つの課題が設定されています。

課題毎にテーマが設定されているものや幅広く受け付けているものなどありますので、それぞれのサイトの説明を読んで見てください。

日本のものとは異なり実証実験費用を支援するというよりは、アイデアに賞金をつけるものとなっています。

また、事例としては以下のサイトにまとまっているので、ぜひご覧ください

https://business.esa.int/projects

(6)おわりに

今回は、知っているようで意外と知らない実証実験の世界についてご紹介しました。

冒頭でご説明した通り、実証実験とは”課題解決をするための有効性証明”をするための実験になります。したがって、まずは通常のビジネス検討の時のように、誰の課題を解決するのか、顧客への提供価値は何か、を考え、その仮説を検証するための実証実験を実施することが大切です。

実証実験プログラムに採択されること、実施すること自体が目的化しないように、ぜひ何のために実証実験をやるのか、を各チームで繰り返しよく話し合って進めてください。

また、最も大事なのは「課題を持っている人(サービス利用者)」と良く向き合うことです。実証実験を実施する際、もちろん「課題を持っている人」にも参画をしていただく必要がありますが、そういう方々には通常の業務があり、その傍らで、実証実験に協力していただくことになります。

皆さんが通常の業務の傍ら、新しいビジネスの治験者になったらということをイメージしていただければと思いますが、実証実験はサービス企画側の想像以上に、サービス利用者に負担をお願いすることになります。そのため、サービス利用者の方が一緒に実験を進めるモチベーションを削いでしまわないこと含め、最大限工夫をして実証実験を進めましょう。