NASA 日本企業も参加可能な「月の石」買取りプログラムを発表【週刊宇宙ビジネスニュース 9/7〜9/13】
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民間からの「月の石」買取りは月面探査を加速させる鍵となるか
9月10日、NASA長官のJim Bridenstine(ジム・ブリデンスティン)氏は公式ブログにて、民間企業が月面で採取したサンプルを購入する考えを明らかにし、提案を公募することを発表しました。
公募はNASAが総力を挙げて進めているアルテミス計画に向けたもので、有人月面着陸を予定している2024年までに完了させる想定。
国内外から1社以上を選定し、契約企業は50〜100グラムのサンプルを採取し、採取方法と写真データの提出を求められます。注目すべきなのは、採取したサンプルを地上へ持ち帰る必要はなく、月面で手渡す必要があることです。さらにNASAは所有権の移譲を求めています。
報酬の価格は明らかになっていませんが、契約時に10%、打ち上げ時に10%、サンプルが手渡された際に残りの80%が支払われるとのことです。
月面開発の初期のフェーズには、ランダーやローバーの開発費や打ち上げ費用など多額の費用がかかるのに対し、現時点では顧客は政府に限られていてアルテミス計画を主導する米国以外の参入のハードルは高いと言えます。
サンプルの採集場所は自由とのことで、2021年に月探査を計画しているダイモン、2022年と2023年の2回計画しているispaceなど、日本の民間企業の参加に注目が集まるのではないでしょうか。
3DプリントロケットベンチャーRelativity CTOが辞任し、新会社設立へ
9月9日、3Dプリントによるロケットの製造開発を行っているベンチャー企業・Relativity Space(レラティビティ・スペース)の共同創業者兼CTOであるJordan Noone(ジョーダン・ヌーン)氏はTwitterでエグゼクティブアドバイザーへ異動することを明らかにしました。
Relativity Spaceは2019年10月にシリーズCラウンドで150億円を調達。2020年6月には、通信衛星のコンステレーション構築を計画しているIridium Space(イリジウム・スペース)との契約締結を発表するなど、2021年に予定されている初の商業打ち上げに向けて事業を加速している様子が伺えます。
今回の異動の背景について、ヌーン氏は新しくスタートアップ企業を設立したと説明しています。
ヌーン氏は、南カリフォルニア大学にて航空宇宙工学に在学中にBlue OriginやSpaceXのインターンシップに参加し、Dragon2の推進システムの設計に携わるなど、若いながらも航空宇宙分野において経験を豊富に持っている人物です。
ヌーン氏の新会社についての詳細は明らかになっていませんが、どのようなビジネスを検討しているのか注目したいと思います。
オーストラリア初、Gilmourが打ち上げ契約を締結
9月9日、オーストラリアを拠点に小型ロケットの製造開発を行うベンチャー企業・Gilmour Space Technologies(ギルモアスペーステクノロジズ 以下、Gilmour Space)は、現地企業と打ち上げ契約を締結したことを発表しました。オーストラリアのロケットが同国のペイロードを輸送するのは今回が初。打ち上げは2022年を予定しています。
打ち上げ契約を締結したのは、LEOおよびGEO、月軌道に効率をよく小型衛星を投入させるサービスの提供を目指すスタートアップ企業のSpace Machines Company。ペイロードは35キログラムです。
Gilmour Spaceは2014年に創業され、2018年にはシリーズBラウンドで1,900万ドルを調達しました。2019年8月に実施した試験打ち上げは失敗に終わったものの、障害の原因を分析し、次回の打ち上げに綿密に対策を練ってきたとのことです。
創業者のギルモア氏は、オーストラリアのビジネスメディア「InnovationAus」のインタビューにて、2020年末に資金調達を行う予定を語っていて、商業打ち上げに向けて人員や施設の拡大を行うのではないかと考えられます。
オーストラリアは2018年に宇宙庁を開設し、国をあげて宇宙産業の拡大を支援しています。
同国のベンチャー企業に関するニュースを目にする機会も増えてきているように思います。
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参考
Space Resources are the Key to Safe and Sustainable Lunar Exploration
Relativity co-founder steps aside