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事業加速となるか?宇宙特化型ファンドが設立したRedwireがMade In Spaceを買収【週刊宇宙ビジネスニュース 6/22〜6/28】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

Redwireが軌道上3DプリンターメーカーのMade In Spaceを買収

6月23日、Redwire(レッドワイヤー)が宇宙空間で使用可能な3Dプリンター開発のパイオニアであるMade In Space(メイド イン スペース)とそのヨーロッパ拠点を買収したことが明らかになりました。

Made In Spaceは、米国を拠点とするスタートアップ企業で、2010年に創業。ルクセンブルクに子会社にあたるMade In Space Europeがあります。2014年に、Made In SpaceはNASAと共同でISSに輸送した3Dプリンターをリモートで操作し、工具の製造を成功させました。さらに2019年には、NASAと軌道上で小型衛星の電源システムを構築するArchinautプロジェクトの契約を締結しています。

Redwireは、宇宙に特化したプライベートエクイティファンドであるAE Industrial Partners(AEインダストリアルパートナーズ)が 6月初旬にAdcole Space(アドコール・スペース)とDeep Space Systems(ディープスペースシステムズ)をそれぞれ買収し、統合して設立した企業。

Adcole Spaceは小型衛星と宇宙機のコンポーネント、Deep Space Systemsは宇宙探査機の設計や製造、運用をメインに行う企業でした。買収金額などは明らかになっていません。

また、Made In SpaceでCEOを勤めていたAndrew Rush(アンドリュー・ラッシュ)氏とチーフエンジニアのMichael Snyder(マイケル・スナイダー)氏は、それぞれRedwireのCOOとCTOに就任し、既存のプロジェクトは引き続き進めていくとのことです。ラッシュ氏は、「私たちは協力して、数カ月のうちに、新しい製品を市場に提供する予定です」とコメントしています。

Made In Spaceの重役に与えられた役職やラッシュ氏のコメントから推測するに、今回の買収は両社にとって有益なもののように見受けられます。

通信衛星企業IridiumがRelativityと打ち上げ輸送契約を締結

6月24日、通信衛星のコンステレーション構築を計画しているIridium Space(イリジウム・スペース)が、2023年から2030年を対象とする衛星6機の打ち上げ輸送契約をRelativity Space(レラティビティ・スペース)と締結したことを発表しました。

Relativity Spaceは、3Dプリントでロケットの製造開発を行っているベンチャー企業。2015年に創業し、2019年10月にはシリーズCラウンドで150億円を調達。同社が開発しているロケット「Terran1」の初打ち上げは2021年2月で、さらに同年内に商用運用を開始する予定を発表しています。

Terran1のイメージ Credit : Relativity Space

Iridium Spaceの衛星は1機あたり850kgで、個別にTerran1で打ち上げられます。同社のCOOを務めるSuzanne McBride(スザンヌ・マクブライド)氏は、「SpaceXのFalcon9は衛星に対して大きく、Rocket Lab(ロケットラボ)のElectronは小さすぎるため、Relativity SpaceのTerran1は我々のスイートスポットである」と説明しています。

SpaceXの相乗り打ち上げ費用は、830 kgでおよそ400万ドル(4.3億円)となっています。それ以上の場合は問合せが必要となっていますが、費用感としては4~5億円の範囲と推測されます。Terran1の打ち上げ価格は公表されていませんが、スザンヌ氏のコメントから推測するに、コストはSpaceXよりも安くなるということでしょう。OneWebの例からも、衛星打ち上げ費用を下げる努力は、サービスを持続する上で非常に重要であると言えます。

Iridium Spaceは2017年から2019年の間に7回にわたり、Falcon9で9機の衛星を打ち上げています。Relativity Spaceが安定した輸送技術を確立できるか否かにますます注目が集まるのではないでしょうか。

Virgin GalacticがNASAとISS搭乗の代理店業務契約を締結

6月22日、民間初の宇宙旅行サービスの提供を目指すVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)はNASAとの間に、ISSへの飛行希望者を総合的に支援する契約を締結したことを発表しました。

プログラムに関心がある人の斡旋から、輸送手段の調達、事前の訓練プログラムの仲介までを担うとのことです。同社が開発しているSpaceShipTwoは、サブオービタル飛行を想定したものであり、ISSまでの輸送にはすでに有人宇宙飛行船の開発を行っているボーイングやSpaceXとの連携が有力視されています。また、Virgin Galacticは、SpacePort America(スペースポート・アメリカ)で実施可能な宇宙飛行に必要な訓練の開発を行っています。

さらにVirgin Galacticは6月25日に、ニューメキシコにあるSpacePort Americaからの試験飛行に成功しました。

Credit : Virgin Galactic

SpacePort Americaからの飛行試験は、5月1日に続き2回目。VMS Eveによって高度15kmまで上昇し、その後VSS Unityはいくつかのポイントに到達して、滑走路に着陸しました。前回よりも高高度かつ高速で実施しています。

プレスリリースによると、同社はサービス提供開始に向けての次のステップである動力付き宇宙飛行に向けて準備を進めているとのことです。

Virgin Galactic は2019年12月に上場して以来、ペースを上げて飛行訓練を実施しているように見えます。今回発表されたNASAとの契約で資金を獲得しつつ、自社での宇宙旅行サービス提供に向けて取り組みを加速させていく考えなのかもしれません。

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参考

Redwire acquires Made In Space

Virgin Galactic’s SpaceShipTwo Completes Second Flight from Spaceport America

Virgin Galactic Flight Test Program Update:SpaceShip Two Preparing for Second Test Flight from New Mexico

Virgin Galactic Signs Space Act Agreement with NASA for Private Orbital Spaceflight to the International Space Station(ISS)