宙畑 Sorabatake

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中国独自の衛星測位システムBDSを構成する全ての衛星が軌道上へ【週刊宇宙ビジネスニュース 6/22〜6/28】

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中国が、独自の衛星測位システムを構成する全ての人工衛星の打ち上げに成功

中国航天科技集団(CASC)は6月23日に、長征3Bロケットで測位衛星である北斗(BD3 GEO-3)を静止軌道に投入したことを発表しました。今回の打ち上げで、中国独自の測位システムである北斗衛星測位システム(BDS)を構成する全ての衛星が軌道投入されたことになりました。

これにより、中国はアメリカが運用するGPSに依存しない独自の衛星測位システム(GNSS)の運用が可能になります。

BDSは、中軌道・IGSO軌道・静止軌道といった3種類の軌道を活用している衛星測位システムです。構成されている衛星の数は35機で、北斗は世界で最も多く稼働している測位衛星となりました。(GPSが31機・Galileoが22機。)

BDSは世界中に測位・ナビゲーションサービスを提供することが可能となっているため、米国のGPS・ロシアのGLONASS・欧州のGalileoに加わり、4つ目の世界的な衛星測位システムとなりました。

中国の軍事目的のみならず、民間目的の活用もBDSには期待されています。

西昌の射場から長征3Bで打ち上げられる北斗衛星 Credit : CASC

SPACE WALKERが資金調達に成功

再使用型有翼機の開発に取り組む株式会社SPACE WALKERは、新たに1.55億円の資金調達を実施したことを発表しました。これにより、同社の累計調達額は5.25億円となりました。

今回の資金調達は、シード期のベンチャー企業の資金調達に最適なコンバーティブル・エクイティを採用しています。コンバーティブル・エクイティとは、バリュエーション(企業価値)の決定を先送りにしながら将来的に株式に転換できる新株予約権のことです。コンバーティブル・エクイティは次回の適格資金調達ラウンド(一般にはシリーズA)で優先株式に転換されるのが一般的です。

今回調達した資金は、主にサブオービタルスペースプレーンの技術実証機であるWIRES #013、#015の設計・開発および製造に使用するとのことです。
※WIRES(WInged REusable Sounding rocket)の詳細はこちら

SPACE WALKERのメインビジュアル Credit : SPACE WALKER

SPACE WALKERの事業計画によると、サブオービタル飛行の時は単段式有翼再使用機を使用し、小型衛星の軌道投入時は有翼機の上に小型ロケットを載せた2段式の有翼機を使用するようです。

まず最初にサブオービタルの有翼機を2022年までに打ち上げます。この有翼機はスペースシャトルと同様の、垂直打ち上げ・水平着陸です。公式HPによると、高度120㎞にペイロード100㎏を打上げる輸送能力を持つとのことです。

その次に、サブオービタルの有翼機の上に小型ロケットを搭載し、小型衛星の打ち上げに取り組みます。小型ロケットには、株式会社IHIが開発をしているLOX/Methaneエンジンを搭載する予定となっています。

そして、2027年までに有人宇宙旅行を実現するスペースプレーンを打ち上げるそうです。パイロット2名及び乗客6名が搭乗し、高度120kmを往復する宇宙旅行を提供します。

アメリカでは、サブオービタルの有人宇宙旅行は早ければ今年から実施される予定です。2027年に市場に登場する日本発の有人宇宙旅行に期待しましょう。

WIRES #013、#015の開発スケジュール Credit : SPACE WALKER

また、日本の宇宙ベンチャーへの投資として、新たな動きもありました。

トヨタ自動車株式会社は、三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行と連携して、4社合計で80億円を、投資会社のスパークス・グループ株式会社の子会社が立ち上げた投資ファンドに出資し、他の企業からの追加出資も受けて、2020年12月をめどに出資額を150億円規模に拡大するとのことです。

既にレッドオーシャンとなっている小型衛星打ち上げ市場で、SPACE WALKERがプレゼンスを発揮できるか、引き続き注目です。

Maxar TechnologiesがVriconの買収を発表

世界最高性能の光学衛星であるWorldViewシリーズを提供する、人工衛星サービス大手のMaxar Technologies(以下、Maxar)は、衛星画像からの3Dマップの作成を行うVriconを約1億4000万ドルで買収することを発表しました。

Vriconは、2015年にMaxar Technologiesとスウェーデンに本拠を置く航空機メーカーのSaabのジョイントベンチャーとして設立され、2社の強みを生かした高精度で没入感のある3D製品を市場に提供してきました。

Maxar Technologies CEOのDan Jablonsky氏は、今回の買収について以下のように語っています。

“The Vricon software works on stacks and stacks of Maxar’s imagery and the Legion program will supercharge the Vricon machine. We will be able to create photo-realistic, 3D accurate data models overnight essentially, by harnessing the two capabilities together.”

(訳:Vriconのソフトウェアは、Maxarの衛星画像を何層にも重ねて使用することができ、WorldView LegionはVriconの性能をさらに向上させることができます。この2つの機能を一緒に利用することで、写真のようにリアルで正確な3Dデータモデルを一晩で作成することができるようになります。)

※WorldView Legionとは、Maxarが来年SpaceXのロケットで打ち上げ予定の新型の光学衛星の名称。

シリア・ダマスカスの3D画像 Credit : Maxar Technologies

Jablonsky氏は、Saabが所有するVriconの株式を取得するオプションがジョイントベンチャー設立時に組み込まれていたため、Vriconの買収は1ヶ月以内に完了すると述べています。

Maxarは、自社の自動特徴抽出や変化検出といった技術を活用させることで、既存市場において、Vriconがより付加価値の高い製品を市場に提供することを期待しています。
引き続き、衛星大手のMaxarの動向に注目です。

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