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インターステラテクノロジズが人工衛星事業に参入【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/12/21〜12/27】

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インターステラテクノロジズが人工衛星事業への参入を発表

日本のロケットベンチャー企業であるインターステラテクノロジズ株式会社(以下:IST)が、完全⼦会社のOur stars株式会社(以下、Our stars )を設⽴し、⼈⼯衛星事業に参⼊することを発表しました。

Our starsの設立は2021年初頭を予定しており、代表取締役社長には、ISTのファウンダーであり実業家の堀江貴文氏が就任します。資本としてはISTの100%完全子会社として設立し、今後資金調達を予定しているとのことです。

Our starsは3つの人工衛星事業を予定しています。

ピンポン玉サイズの超超⼩型衛星フォーメーションフライトによる通信衛星サービス

超超小型衛星フォーメーションフライトのイメージ図 Credit : インターステラテクノロジズ

フォーメーションフライトとは、複数の宇宙機が各々の状態量の一部(或いは全部)を一致した状態に保つことで、編隊飛行しながらミッションを行う技術です。

構想中の超超小型衛星通信サービスでは、ピンポン玉サイズの小さな衛星を数千個利用することで大きなアンテナと同等な機能を有し、いくつかの衛星が機能しなくても残りの衛星で運用することが可能とのことです。

超低高度リモートセンシング衛星による地球観測サービス

超低高度リモートセンシング衛星のイメージ図 Credit : インターステラテクノロジズ

超低高度リモートセンシング衛星による地球観測サービスは、高度150~200㎞の超低高度軌道から地球を観測して、高解像度の観測データを取得する技術の実用化を目指す事業です。

2018年にはJAXAが、超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)を打ち上げており、実際に高分解能な画像を届けています。超低高度衛星は、一般的な地球低軌道衛星より更に低い高度に投入する必要があります。どのように超低高度への軌道投入を実現するのかも注目です。

「つばめ」が撮影した画像については、こちらの記事でとり上げています。(参考:1ヶ月間、毎日都心を撮影した「つばめ」の衛星画像をTellusで公開!

ポストISS時代の宇宙実験(無重力実験)に。宇宙実験用衛星+回収カプセル宇宙実験用衛星及び回収カプセル

宇宙実験用衛星と回収カプセルのイメージ図 Credit : インターステラテクノロジズ

高度300㎞程度の軌道上に実験サンプルを搭載した衛星を投入し、微小重力下での実験を行いカプセルにて回収するまでを行うサービスです。

現在、宇宙空間で様々な実験が実施されているISS(国際宇宙ステーション)は、2024年までに今後の運用が見直される予定です。今後の微小重力下での実験環境の需要をうまく活用出来れば、ポストISS時代の重要なサービスになることが期待されます。

3つの事業はどれも、ISTが手がける小型ロケットZeroと相乗効果を生むことを狙っています。

ロケット企業が人工衛星事業に参入する事例は、海外にもあります。民間宇宙産業をけん引するロケット企業のSpaceXも、Starlinkと呼ばれる通信衛星コンステレーション事業に参入し、小型ロケットを開発するRocket Labも、Photonと呼ばれる衛星バスの開発に着手しています。輸送業であるロケット事業とロケットの輸送物である人工衛星事業を統合したビジネスを展開させることは、サービスの最適化にも繋がるため、宇宙ビジネスにおける垂直統合型ビジネスモデルとして注目を集めているのです。

ISTは衛星事業に携わる人材を独自に募集していくとのことですが、ベンチャー企業は時間との勝負です。
必要な人材を集めながら、軌道投入ロケットZeroの開発と衛星事業を並行して進めていけるか、今度のISTの動きにも注目です。

中国の新型ロケット長征8号が打ち上げ成功

中国航天科技集団(CASC)は、新型ロケット長征8号を12月22日に打ち上げ、無事に成功したことを発表しました。今回の打ち上げは、長征ロケットシリーズとして356回目の打ち上げミッションでした。

長征8号は全長50.3mの液体二段ロケットであり、4.5tのペイロードを高度700キロのSSO(太陽同期軌道)に、2.8tのペイロードを静止トランスファ軌道に投入が可能です。今回の長征8号は海南島にある文昌衛星発射場から打ち上げられましたが、ゴビ砂漠北西部にある酒泉衛星発射場からも打ち上げ可能とのことです。

長征8号は既に運用されている長征3Aや長征7号で使用されている技術をベースにして設計されていますが、改良されている点もあります。従来の長征シリーズのエンジンでは非対称ジメチルヒドラジンと呼ばれる有毒な燃料を使用していましたが、長征8号では、ケロシン(RP-1)や液体水素といった環境に優しい燃料を使用しています。また、今後は再使用可能ロケットとなることも想定して設計されています。

長征8号のプロジェクトマネージャーであるXiao Yun氏によると、今後、毎年少なくとも10機の長征8号の打ち上げが可能で、年間の製造能力は近い将来20機に達する予定と述べています。

多くの打ち上げ数を誇る長征シリーズのラインナップが、今後さらに顧客の幅広いニーズに応えることになりそうです。

離陸する長征8号の様子 Credit : China National Space Administration

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