宙畑 Sorabatake

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創業4年の新興ロケットベンチャーAstraが宇宙空間に到達!【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/12/14〜12/20】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

Astraが創業4年で宇宙空間に到達

2016年創業の新興ロケットベンチャーであるAstraが、12月15日に打ち上げに挑み、見事宇宙空間への到達を達成しました。今回掲げていた、ロケット第一段の燃焼・第一段の切り離し・フェアリングの分離という目標はすべて達成しました。

今回の成功をうけて、民間企業単独で開発した液体ロケットエンジンで宇宙空間に到達した事例としては、世界で5社目の実績となりました。(他は、SpaecXBlue OriginRocket Labインターステラテクノロジズ

Astraの”Rocket 3.2”は、アラスカのコディアック島のPacific Spaceport Complexから打ち上げられました。打ち上げから約7分後に燃料を全て使い切り第二段エンジンの燃焼を終了しました。最終的にRocket 3.2は目標高度380kmには到達しましたが、獲得速度は7.2km/sで、所定の軌道投入速度7.68km/sにわずかに届きませんでした。

宇宙空間に到達したRocket 3.2 Credit : Astra

AstraのCEOであるChris Kemp氏は、軌道投入速度がわずかに到達しなかったことが惜しいとしながらも、今回の打ち上げは成功と捉えています。

The hardware on this system performed flawlessly through the entire flight. This far exceeded our team’s expectations.
(訳:このシステムに搭載されているハードウェアは、飛行中ずっと完璧に動作していました。これは我々のチームの期待をはるかに上回るものでした。)

第二段エンジンの燃焼において、酸化剤である液体酸素を残したまま先に燃料のケロシンが枯渇したことが報告されているため、今後技術チームはケロシンと液体酸素の混合比を微調整することで、次の打ち上げでの軌道投入の成功を目指すようです。

Rocket 3.2は、今年初めに発表された軌道投入能力を実証するための3回の打ち上げ計画のうち2回目の打ち上げでした。9月に実施したRocket 3.1の打ち上げでは、発射直後に誘導システムがロケットの振動を誘発し、エンジンの停止を引き起こしました。今回はその時の失敗を見事に克服しています。

離床するRocket 3.2 Credit : Astra

Astraは、実際の打ち上げオペレーションをわずか5人のチームで行っています。しかしながら先週、チームの1人が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の陽性反応を示したため、そのチームは隔離しなければなりませんでした。これにより、打ち上げの準備を引き継いだバックアップチーム(同じく5名)が運用を行いました。バックアップチームは素早く打ち上げシステムの構築業務をこなし、わずか数日でロケットの打ち上げを達成しました。

今回の打ち上げではRocket 3.2にペイロードは搭載されていませんでしたが、今後のためにペイロードの展開はシミュレーションしています。Kemp氏は、次の打ち上げであるRocket 3.3ではペイロードを搭載することの期待と、Rocket 3.3の約75%が完成していることを発表しています。Rocket 3.3の具体的な次の打ち上げ日程はまだ明かされていません。

既に複数の打ち上げ契約を締結済みであることも明かしているAstra。競合の多数いる小型ロケットベンチャー界の中で、確かな実績を獲得したAstraの次回の打ち上げにも注目です。

離床するRocket 3.2 Credit : Astra

Redwireが今年5件回目の買収となるLoadPathの買収を発表

今年に入り宇宙企業の買収に複数成功しているRedwireは、12月15日に宇宙産業向けのペイロードアダプターや展開可能な構造物などを開発するLoadPathを買収したことを12月15日に発表しました。具体的な取引条件は公開されていません。

Redwireは、航空宇宙や防衛に特化したPEファンドであるAE Industrial Partners,LPが 6月初旬にAdcole SpaceDeep Space Systemsをそれぞれ買収した後、統合して設立された企業です。その後、宇宙空間で使用可能な3Dプリンター開発のパイオニアであるMade In Spaceや、宇宙空間で展開可能な構造物を開発するRoccorを買収しています。

LoadPathは、Redwireによる今年5件目の買収企業となります。

2009年に設立されたLoadPathは、マルチペイロード発射アダプターの開発、展開可能な宇宙構造物の製造、構造試験、宇宙船の熱分析など、ロケットや衛星製造用の製品開発やサービス提供に取り組んできました。

LoadPath社の技術は、NASAや国防総省をはじめとする政府系組織や民間企業との20以上の宇宙飛行ミッションをサポートしてきました。これまでにLoadPathは、合計200回以上の打ち上げに宇宙機製品を納入している技術開発集団です。

Redwireの会長兼CEOのPeter Cannito氏は、今回の買収について以下のコメントを出しています。

LoadPath brings market-leading capabilities to augment Redwire’s space infrastructure portfolio and broaden our range of technology products and services to support our customers’ missions. We are excited to work with Adam and Greg and the LoadPath team to leverage their impressive technology flight heritage and advance their capabilities as a part of Redwire.
(訳:LoadPathは市場をリードする能力をもたらし、Redwireの宇宙インフラのポートフォリオを強化し、顧客のミッションをサポートする技術製品やサービスの幅を広げてくれるでしょう。我々は、AdamとGregそしてLoadPathチームと協力して、彼らの印象的な技術飛行の資産を活用し、Redwireの一員として彼らの能力を向上させることができることが楽しみです。)
※Adam氏とGreg氏は、LoadPathの共同創業者

軌道上サービスにおける強みを有しているベンチャー企業の買収に連続成功するRedwireの今後の事業戦略が楽しみです。

LoadPathの開発するマルチペイロード発射アダプタ Credit : Redwire

AST&ScienceがSPACとの合併と社名変更を経て2021年に上場へ

標準的な携帯電話から直接アクセス可能なブロードバンドネットワークを構築しているAST & Science LLCが、12月16日にNew Providence Acquisition Corp. による買収及び経営統合契約に締結したことを発表しました。

New Providence AcquisitionはSPACと呼ばれる、自分たちは事業を持たずに未上場ベンチャーの買収を目的につくられた企業です。

宙畑メモ
SPAC(特別買収目的会社)とは、その企業自体は特定の事業を持たずに、一定期間内に未公開会社・事業を買収することのみを目的として株式市場に上場する企業のことです。SPACを活用すると従来の新規株式公開(IPO)よりも簡素なプロセスで上場を果たせるため、近年この方式の上場を採用するベンチャー企業が増加しています。

昨年ニューヨーク証券取引所に上場したVirgin Galacticや、来年NASDAQに上場予定のMomentusもSPACを活用しました。詳しくはこちらから(Virgin Galacticがついに上場!【週刊宇宙ビジネスニュース 10/28〜11/3】小型衛星向けの推進機器を手掛けるMomentusが、特別買収目的会社を活用して来年初頭にNASDAQに上場へ【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/10/05〜10/11】

すでにNASDAQに上場しているNew Providence AcquisitionがAST & Scienceを買収したのちに2社は合併し、AST & Scienceが事業を主導します。今回の買収でAST & Scienceは最大2億3200万ドルの資金を獲得します。AST & Scienceは過去に、楽天株式会社・Vodaphone・American Tower・UBS O’Connerから2億3000万ドルの投資を獲得しているので、獲得資金の総額は4億6200万ドルにのぼります。

合併の取引が完了したのち、AST & ScienceはAST SpaceMobileと社名変更を行い、2021年の第一四半期にASTSのティッカーシンボルでNASDAQに上場する予定です。

AST & Scienceの会長兼CEOであるAbel Avellan氏は、買収後も引き続き事業の指揮を執る予定で、統合後のAST & Scienceの企業価値は約14億ドルとなる見込みです。今回の統合についての既存株主向けの説明資料はこちらからダウンロードできます。

SPACを活用した宇宙ベンチャーの事例は3つ目です。初めてこの手法を活用したVirgin Galacticは全ての取引が完了してニューヨーク証券取引所の上場が完了しています。2社目の事例のMomentusは全ての取引はまだ完了しておらず、2021年の第一四半期に、NASDAQに上場予定です。

AST & Scienceは特殊なハードウェアを必要とせず既存の携帯電話に直接シームレスなブロードバンド携帯電話接続を提供していく予定です。具体的には上空500~700kmの低軌道に衛星を複数配置し、遅延を20ミリ秒程度に抑えた低軌道衛星からの通信を提供します。

携帯回線速度に関して何かしらの不都合を感じているユーザーは約40億人もいると見込まれており、AST & Scienceはほぼ全世界をカバーする宇宙インフラを展開することで収益源を急速に拡大していくことを狙っています。

今回の統合及び上場について、Abel Avellan氏は以下のコメントを出しています。

AST SpaceMobile’s low-latency, space-based platform will allow hundreds of millions of people across the world to access high-speed, cellular broadband service in areas where there was previously no such service. Working directly with our strategic partners, we are on track in executing on phase one of our commercial launch as we set the stage to bring our game-changing space network for global mobile connectivity.
(訳:”AST SpaceMobileの遅延の少ない宇宙ベースのプラットフォームにより、世界中の何億人もの人々が、これまで回線に接続できなかった地域で高速の携帯電話ブロードバンドサービスにアクセスできるようになります。戦略的パートナーと直接協力して、我々は世界的なモバイル接続のための画期的な宇宙ネットワークを提供する準備を整え、商業的な立ち上げの第一段階を順調に進めております。)

上場を果たし公開企業となった後、どのように事業を拡大していくのか今後のAST & Scienceが楽しみです。

Credit : AST & Science

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