宙畑 Sorabatake

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OneWebが新しい衛星打ち上げを発表。買収が完了し再起を目指す【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/11/16〜11/22】

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OneWebの買収が完了し新たな衛星打ち上げへ

通信衛星コンステレーションに取り組むOneWebが、今年の7月に発表されたインドの大手通信企業Bharti Globalと英国政府による買収の手続きが無事に完了し、米国破産法第11章(Chapter11)による保護状態を脱したことを11月20日に発表しました。

OneWebは総額約30億ドルの資金を獲得し、74基の通信衛星を軌道投入させていましたが、2020年3月に米国ニューヨーク南部地区連邦破産裁判所に米国破産法第11章に基づく救済を申請していました。
(詳細はこちら:OneWebが連邦倒産法第11条(Chapter11)を申請【週刊宇宙ビジネスニュース 3/23〜3/29】

今回の買収ではBharti Globalと英国政府が各々5億ドルを出資し、それぞれ株式の42.2%を取得し、残りの株式の大部分はSoftBank GroupとHughes Network Systemsが引き続き所有します。

今回の買収手続き完了にともない、2018年からOneWebのCEOを務めたAdrian Steckel氏が退任し、Neil Masterson氏が新しいCEOに就任します。Masterson氏は、過去20年トムソン・ロイターに勤め、直近ではCOOを務めていました。宇宙業界及び通信業界以外の業界から来たMasterson氏が今後のOneWebをどう率いていくのか楽しみです。

またOneWebは、2020年12月7日に、ボストーチヌイ宇宙基地からArianespaceのソユーズ2.1bロケットで36基の通信衛星を打ち上げる予定であることも発表しました。現在、衛星は米国フロリダ州の工場からボストーチヌイに輸送され、打ち上げに向けた準備が進められているとのことです。

同社の通信衛星打ち上げは2021年から2022年にかけて継続され、2021年後半に英国と北極圏への商用接続サービスを開始し、2022年にはグローバルサービスの提供に向けて拡大していく予定です。

通信衛星大手のイリジウムグローバルスターも、過去にChapter11を経験した後に事業の再建に成功しています。
今後のOneWebに注目です。

工場から運搬されるOneWebの通信衛星の様子 Credit : OneWeb

Arianespaceの小型ロケットVegaが打ち上げ失敗

欧州のロケット打ち上げプロバイダーであるArianespaceが手がける小型ロケットVegaが、11月16日にギアナ宇宙センターから打ち上げられましたが、失敗に終わりました。
Vegaは固体燃料4段式ロケットで、昨年7月に引き続き2回目の失敗となりましたが、原因は前回とは無関係のようです。

Arianespaceによると、ロケットから取得していたデータを分析した結果、2つの推力ベクトル制御アクチュエーターへのケーブルが反転していたことが発見され、片方のアクチュエーターに送られるはずのコマンドがもう片方のアクチュエーターに送られてしまったのが、今回の打ち上げ失敗の原因と結論づけられています。

Roland Lagier氏は今回の打ち上げについて、

This was clearly a production and quality issue, a series of human errors, and not a design one
(訳:これは明らかに生産過程における品質の問題で人為的なミスが原因のため、設計上の問題ではありません。)

と述べています。

Vegaは、主契約者であるAvio(イタリアの航空宇宙メーカー)のもと、欧州各国の様々なメーカーが部品を供給して製造されているロケットです。2012年の打ち上げ以降、成功率100%を誇っていたにもかかわらず、2019年7月と2020年11月と、失敗が続いたことが気になるところです。COVID-19の影響により各メーカーの雇用状況も変わっており、そのような影響を受けての失敗かは分かりませんが、いずれにしても次期打ち上げに向けて何かしらの対応は必要となるでしょう。

ロケットのように部品点数が膨大な工業製品の場合、フェイルセーフやフールプルーフといった安全工学に基づく設計も重要となります。今回の失敗で設計が変更になることはないようですが、エンジニアが繋ぐケーブルをそもそも間違えることがない設計へと変更する、という工夫も必要かもしれません。

宙畑メモ 安全工学

安全工学とは、工業製品やシステムにおいて、事故の発生を防ぎ安全性を追求する学問の1分野のことです。フェイルセーフとは、故障が発生する前提で、故障が発生したとしても大事故には繋がらない信頼性設計の一つです。フールプルーフとは、人が手順を間違えることができない構造を組み込んで人為的ミスを発生させない信頼性設計の一つです。

今回の打ち上げで、スペインの地球観測衛星SEOSAT-Ingenioとフランスの上層大気の電磁現象を研究する衛星TARANISの2基が失われましたが、原因の再発防止につとめ、いち早くVegaの打ち上げが再開することに期待です。

 

11月16日に打ち上げられるVegaの様子 Credit : Arianespace

Rocket Labがロケット第一段の回収に成功

小型ロケット業界のリーディングプレイヤーであるRocket Labが、11月19日に”Return to Sender”という名称で挑んだ16回目のElectronミッションにおいて、ロケット第1段の回収に挑み無事に成功しました。
(詳細はこちら:Rocket Labが第一段回収試験の日程を発表【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/11/2〜11/8】

Rocket Labは、第一段回収のための試験はこれまでに数回実施していましたが今回の取り組みでは、再利用する第一段ロケットはパラシュートを活用しながら海に着水し、その後回収船によって引き上げられました。将来的にはヘリコプターを活用した空中回収に挑む予定とのことです。

同社CEOのPeter Beck氏は、今回のElectronの第一段回収について、

Even if we get to use the stage just another single time, it has the effect of effectively doubling production. Even one reuse is a really huge advantage.
(訳:ロケット第一段をもう一回使うだけでも、実質的に生産量を倍増させる効果があります。一度の再利用でも、本当に大きなメリットがあるのです。)

と語っています。顧客へ提供する打ち上げ機会を増加させることが、Rocket Labのロケット第一段回収の狙いです。

今後のRocket Labの取り組みからますます目が離せません。

無事に着水したElectronの第一段 Credit : Rocket Lab CEO Peter Beck氏のTwitter

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