宙畑 Sorabatake

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Starshipが高高度飛行試験を実施し、飛行データの取得に成功【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/12/7〜12/13】

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SpaceXがStarshipの高高度飛行試験に挑戦

SpaceXが、現在開発中の新型宇宙船Starshipの高高度飛行試験に初めて挑戦しました。パッドからの離陸には成功し高度約12.5kmまで到達しましたが、着陸には失敗し爆発しました。

今回使用した機体Starship SN8は、SpaceXが開発中のStarshipのプロトタイプです。過去に上空150mまでのホップ試験には成功していましたが、上空12.5kmまで飛行するのは初めてです。

打ち上げ5秒前のStarship SN8 Credit : SpaceX webcast

Starship SN8には、SpaceXが独自開発しているメタンと液体酸素を燃料とするラプターエンジンが3機搭載されています。離陸後4分40秒後に高度12.5kmに到達し3機のラプターエンジンは燃焼終了しました。その後機体を水平にして降下を開始しました。webcastの動画でも、フィンを細かく制御しながら降下している様子が見てとれます。

水平状態にしたまま下降するStarship SN8 Credit : SpaceX webcast

水平状態のまま自由落下し、離陸から6分32秒後にラプターエンジンを再点火させ機体を垂直に戻し着陸に挑みました。しかし着陸速度が想定より速かったようで着陸には失敗し爆発しました。

姿勢を垂直に戻し着陸に挑むStarship SN8 Credit : SpaceX webcast
着陸に失敗し大爆発を起こすStarship SN8 Credit : SpaceX webcast

着陸には失敗してしまいましたが、必要なデータは取れているようで、SpaceX CEOのElon Musk氏もTwitterで以下のように発言しています。

Fuel header tank pressure was low during landing burn, causing touchdown velocity to be high & RUD, but we got all the data we needed! Congrats SpaceX team hell yeah!!
(訳:着陸燃焼中に燃料ヘッダータンクの圧力が低いため、タッチダウン速度が速くなりRUDを引き起こしたが、必要なデータはすべて得られた!おめでとうSpaceXチーム!)

※RUDとは、rapid unscheduled disassemblyの略で、爆発のことを指しています。

Starship SN8は、全長50mの宇宙船です。大型の機体を空中で細かく姿勢制御するSpaceXの技術力の高さには驚かされます。

Starshipの諸元 Credit : SpaceX

SpaceXは次のプロトタイプであるStarship SN9もほぼ完成しています。今回のデータを分析し、次の飛行試験にどのように生かすか今後のStarshipに引き続き注目です。

また、SpaceXは新型補給船Cargo Dragonを用いた国際宇宙ステーション(ISS)への補給ミッションに成功しました。今回の補給ミッションは、SpaceXがNASAと契約している「商業補給サービス(CRS)」の一環として実施され、通算で21回目のミッションでした。

Cargo Dragonは、先日有人飛行に成功しているCrew Dragonと基本設計は同じであり、旧式の補給船Dragonから積載可能重量が約20%増加し、ISSでの滞在日数も約2倍の75日となっています。また、旧式の補給船Dragonは宇宙飛行士がISSのロボットアームで捕獲する必要がありましたが、Cargo Dragonは完全自動でドッキングが可能となっています。さらに、最大5回の再利用も可能な補給船となっています。

今回のミッションでは約2900kgの補給物資が搭載されており、クリスマスを宇宙で過ごす宇宙飛行士のための、some Christmas-y food(クリスマスっぽい食べ物)も搭載されているとのことです。

Cargo DragonがISSにドッキングする際のタイムラプス動画がこちらから視聴できます。

中央に小さく映るのがドッキング直前のCargo Dragon。画像右上にはCrew Dragonも映っています。 Credit : NASA Image and Video Library Source : https://images.nasa.gov/details-iss064e010904

Thales Alenia Spaceが再利用型無人宇宙機の開発に着手

欧州の宇宙企業であるThales Alenia Spaceが、イタリアの宇宙機メーカーのAvioと共同で、欧州初の再利用型無人宇宙機”Space Rider”の契約を欧州宇宙機関(ESA)と締結したことを発表しました。2023年半ばから後半に打ち上げ予定で、契約金は総額1億6,700万ユーロ(2億ドル)となっています。

Space Riderは、Thales Alenia Spaceが開発する再突入モジュール(再使用可能)と、Avioが開発するサービスモジュール(使い捨て)から構成されている無人宇宙機です。

Space Riderのイメージ図 Credit : Thales Alenia Space

Thales Alenia SpaceのMassimo Claudio Comparini氏は、今回の契約について以下のコメントを出しています。

Space Rider will pave the way for Europe to a more accessible and agile use of Space in Low Orbit and the contract signed today demonstrates once more Thales Alenia Space’s leading role in atmospheric reentry systems, since it combines the capabilities of orbital free-flying satellite platforms with reusability, and marks a crucial step of great technological value for European space industry.
(訳:本日締結された契約は、大気圏再突入システムにおけるThales Alenia Spaceのプレゼンスを改めて証明するものであり、軌道上のサービスプラットフォームの能力と再利用性を兼ね備えているSpace Riderにより、ヨーロッパ諸国が低軌道の利活用促進の道を開くことになるでしょう。)

全長9.7m、重量2430kgのSpace Riderは、2023年にギアナ宇宙センターからArianespaceの小型ロケットVega Cで打ち上げられる予定です。

Space Riderには1.2㎥の貨物室が搭載され最大600kgのペイロードを収容することができます。Space Riderは約2か月間低軌道に滞在したのち、サービスモジュールと分離し高度90kmでマッハ28の速度に達しながら再突入し、パラシュートを利用しながら地球に帰還します。  

最大6回の再利用が可能なSpace Riderの再突入機は、再飛行前に最小限の改修で済むように設計されているとのことですが、具体的な改修コストがどの程度になるかは気になる部分です。今後のSpace Riderの開発状況に注目していきましょう。

打ち上げから帰還までのSpace Riderの一連の流れ Credit : ESA

NASAが小型ロケットベンチャー3社と超小型衛星の軌道投入契約を締結

NASAは、新型の小型ロケットを開発するベンチャー企業支援施策の一環として、小型ロケットベンチャー企業3社と、NASAが提供する超小型衛星を軌道投入する契約Venture Class Launch Services Demonstration 2 (VCLS Demo 2)を結びました。

VCLS Demo 2契約に選ばれた3社と、契約金額は以下の通りです。

  1. Astra Space Inc. 390万ドル
  2. Relativity Space Inc. 300万ドル
  3. Firefly Black LLC of Cedar Park 980万ドル

今回の契約には、以下の2種類のミッションが用意されています。

ミッション1

30kgのキューブサットを高度500kmの軌道へ投入

ミッション2

75kgのキューブサットをミッション1の際の投入軌道から軌道傾斜角を10度以上離し、高度550kmの太陽同期軌道へ投入

Astra Spaceはミッション1の契約であることを発表しており、Firefly Black LLC of Cedar Parkはミッション1とミッション2の契約であることを明かしています。しかしRelativity Spaceはどちらのタイプのミッションの契約であるかは明らかにしていません。

VCLS Demo 2の目的は、超小型衛星に打ち上げの機会を提供すると同時に、まだ商業打ち上げ機会を有していない小型ロケットベンチャー企業に軌道投入の機会を提供させることです。

以前実施されたVCLS Demo 1では、Virgin Orbitが今回と同様の契約を有しており、12月19日にNASAが提供する10機のキューブサットを搭載して打ち上げを実施する予定でした。しかしVirgin Orbitは12月12日に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大をうけ、打ち上げ準備を中止し打ち上げ日程も再調整することを発表しました。

近年多くのロケットベンチャー企業が生まれている背景には、新興企業を支援するNASAの施策があります。国の宇宙機関とベンチャー企業が相互に補完しながら民間宇宙ビジネスの市場を拡大させることの重要性を感じます

アラスカのKodiak島の射場から9月11日に打ち上げられたAstraの Rocket 3.1の様子。 Credit : Astra/John Kraus

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