宙畑 Sorabatake

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Rocket Lab独自の衛星バスシステムPhoton。更に高まる競合優位性とその狙い【週刊宇宙ビジネスニュース 8/31〜9/6】

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Rocket LabがElectron上段と衛星バスシステムを兼ねるPhotonの軌道投入に成功

小型ロケットベンチャーのRocket Labが、14回目の打ち上げミッション「I Can’t Believe It’s Not Optical」で、自社の人工衛星であり”First Light”という名称のPhoton1号機を8月30日に打ち上げ、無事に軌道投入させたことを9月4日に発表しました。

このPhoton1号機は、ただの衛星ではありません。Electronの上段の、小型衛星を軌道投入する部分(キックステージ)の機能をベースに、人工衛星として運用可能にしたのがPhotonです。つまり人工衛星というより宇宙機の一部であり、上段転用汎用衛星バスと言えます。

同社のライブキャストで、打ち上げミッションにおけるキックステージの分離の映像が流れなかったことに違和感を感じる方もいたようでしたが、このような背景があったようです。

キックステージの機能と衛星バスの機能を一つにするメリットとして以下の点が考えられます。

・Electoronのキックステージ部分の機能と小型衛星のバス部分の機能はほぼ同じ。よってPhotonを開発することで、顧客の開発期間や開発費用の短縮に繋がり、競合優位性になる。

・通常、軌道投入後に分離しそのまま宇宙デブリとなってしまうキックステージ部分を、自社の人工衛星として運用することができる。

・もともとキックステージの機能をベースにしているPhotonには衛星放出機構が搭載されているので、改良を加えれば月や金星を目指す深宇宙探査にも応用できる。

・内製したPhotonは部品単位でも供給可能なので、Electronを使用する顧客だけでなく他の衛星開発企業にも提供でき、同社の売り上げに貢献すると同時にすそ野拡大にも寄与できる。

今回のミッションでは、新しい電力管理や熱制御、姿勢制御サブシステムの機能を実証することを目的にしています。Rocket Labは、今後Photonを活用して、月や金星を目指す深宇宙ミッションに挑戦する予定です。

Rocket Labは今年の3月に、衛星ハードウェア会社のSinclair Interplanetaryを買収し、カリフォルニア州ロングビーチにPhotonの新工場を開設していました。今後のPhotonの開発に注目です。

Photonの外観(左側がロケット側から、右側が搭載する衛星側から見た様子) Credit : Rocket Lab

また、連邦航空局(FAA)は、Rocket Labが所有するバージニア州ワロップス島のLaunch Complex 2からの打ち上げミッションに対し、5年間のLaunch Operator License(打ち上げオペレーターライセンス)を付与しました。

このライセンスにより同社は、Launch Complex 2からElectron打ち上げが複数回可能となり、ミッションごとに個別の打ち上げ専用ライセンスを取得する必要がなくなりました。Electronの迅速な宇宙アクセスが可能になります。

Launch Complex 2は、米国政府のミッションをサポートできるような設計がされている射場です。米国のLaunch Complex 2とニュージーランドのLaunch Complex 1を保有するRocket Labは、最大で毎年130回までの打ち上げが可能になりました。

Rocket LabのCEOのPeter Beck氏は、以下のコメントを出しています。

“Having FAA Launch Operator Licenses for missions from both Rocket Lab launch complexes enables us to provide rapid, responsive launch capability for small satellite operators. With our upcoming missions from Launch Complex 2, we’re ushering in an era of even more flexibility and launch availability for these important government missions.”
(訳:Rocket labの2つの打ち上げ施設からのミッションがFAAの打ち上げ事業者ライセンスを持つことで、小型衛星事業者に迅速かつ応答性の高い打ち上げ能力を提供することが可能になります。今後のLaunch Complex 2からのミッションによって、重要な政府ミッションに対し、さらに柔軟性を高めた打上げが可能な時代の到来を告げることになるでしょう。)

最近はSpaceXが、starshipの打ち上げを洋上から実施するなど、衛星の需要が増えることによって、射場の確保やミッション内容に対する柔軟性も必要になっていきます。小型ロケット界を牽引するRocket Labに引き続き注目です。

バージニア州ワロップス島にあるLaunch Complex 2の外観 Credit : Rocket Lab

Made In Space EuropeとMomentusがロボットアームを搭載した小型宇宙機の共同開発を発表

宇宙空間で使用可能な3Dプリンター開発のパイオニアで、Redwireの子会社であるMade In Space Europeと宇宙輸送サービスを展開するMomentusが、ロボットアームを搭載した宇宙機を共同開発し、2022年に宇宙に打ち上げる計画を発表しました。

このミッションでは、Momentusが開発する小型の宇宙機VigorideにMade In Space Europeが開発するロボットアームを搭載させる予定です。このロボットアームを用いて、Vigorideは軌道上の衛星を掴んで新しい軌道に遷移させることができます。

Vigorideが軌道遷移させることができる小型衛星は、打ち上げ前に地上でVigorideに統合された小型衛星のみとなっていました。Vigorideにロボットアームが搭載されれば、Vigorideに先立って軌道上にある衛星や、同じロケットに搭載されているがVigorideに固定されていない衛星でも、軌道を遷移させることが可能になります。

「2022年のミッションでは、ロボットアームが宇宙空間での輸送をどのように改善できるかを示すことになるだろう」とMade In Space EuropeのゼネラルマネージャーであるJaroslaw Jaworski氏はコメントを出しています。

Momentusの宇宙機Vigorideにロボットアームを搭載させたイメージ図 Credit : Made In Space Europe

また、Redwireは、元Maxar Technologiesの宇宙インフラ担当部長であるAl Tadros氏が同社のCGO(Chief Growth Officer)兼宇宙インフラ担当部長に就任したことを発表しました。

Redwireは、宇宙に特化したファンドであるAE Industrial Partnersが 6月初旬にAdcole SpaceとDeep Space Systemsをそれぞれ買収し、統合して設立した企業です。

宇宙ビジネスの経験が豊富な人材も獲得していくRedwire、そしてMade In Space EuropeとMomentusの2社が共同開発する宇宙機の今後に注目です。

Intelsatが機内wifiサービスを提供するGogoを4億ドルで買収

米国連邦破産法11条(チャプター11)に基づく会社更生手続きの保護下にある衛星オペレータのIntelsatが、機内接続プロバイダーのGogoの商用航空事業を4億ドルで買収したことを8月31日に発表しました。チャプター11の保護下にあるIntelsatは、規制当局やバージニア州の連邦破産裁判所から許可をもらった上で今回の買収に踏み切ったようです。

今回の買収は2021年3月末までに完了する見込みで、約550人のGogo Commercial Aviationの従業員がIntelsatの現在の従業員約1200人に加わることになると、IntelsatのCCOであるSamer Halawi氏は語っています。

Gogoの1年間の株価推移 Credit : Yahoo!finance

上記のように、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で株価が下落していたGogoの株価は、買収発表後に急激に回復しています。

Gogoの民間航空事業は、21社のエアラインにサービスを提供しています。今回の買収により、Intelsatは、Gogoが保有する最高水準の2Kuアンテナを使ったサービスが提供することが可能になります。これにより費用対効果の高い高度な民間航空ブロードバンド接続サービスを提供することができるようになると見られています。

この買収は、Intelsatが破産保護から脱却する再生計画の一環です。今回の買収資金は、DIPフィアナンスと呼ばれ、連邦破産法の適用後、破綻後も経営陣が企業にとどまる形での運転資金の融資として供給される予定です。Intelsatが買収を完了した後は、Gogoはプライベート・ジェット・オペレーターなどのビジネス航空分野の顧客にのみ焦点を当てることになります。

経営悪化で会社更生手続き中であり、航空機の需要が激減している中での買収を発表したIntelsat。今後の企業再生の手腕が問われています。

Gogoのwifiが利用できる航空機 Credit : Gogo

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