宙畑 Sorabatake

宇宙ビジネス

2020年サービス開始!?「宇宙旅行ビジネス」の現状とその費用、企業紹介

「宇宙旅行ビジネスの今」に焦点を当て、実際に宇宙旅行ビジネスを展開する有力企業、そして今後についてまとめています。

ロケットに乗って家族で宇宙旅行へ。まるでSF映画のような夢物語が現実になるかもしれません。

特別な訓練を受けた宇宙飛行士だけに許されていた宇宙の体験を一般の人にも提供しようという機運が高まっています。今回は、「宇宙旅行ビジネスの今」に焦点を当て、実際に宇宙旅行ビジネスを展開している有力企業を紹介。また、今後について考えてみます。

(1)旅行ビジネスの市場規模

宇宙旅行ビジネスの前に、旅行市場の現状について確認しておきましょう。

世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)が発表した資料によると、2018年時点での全世界の旅行産業の市場規模は約8兆8千億ドル(約968兆円)。全世界で約3億1900万人の雇用を生み出しています。成長率は、業界全体で全世界のGDP成長率を上回る3.9%。これは成長著しい医療業界、IT業界、金融業界のいずれの成長率も上回るもので、旅行産業が今後も有望な産業セクターであることがうかがえます。

日本国内でも、旅行産業は一大産業です。同資料によると、2018年時点における日本の旅行産業の市場規模は約40兆6042億円で、世界第三位となっています。これは、日本のGDPの7.4%を占めており、日本の旅行産業がいかに大きいかを示しています。なお、日本の旅行産業の特徴として第一に挙げられるのは内需の割合が大きいこと。40兆6042億円の市場のうち、日本人による消費が82%を占めています。外国人による消費は18%しかなく、他の先進国に比べて低いのが特徴です。

世界ランキングでは、アメリカの旅行産業の市場規模がトップです。2018年におけるアメリカの旅行産業の市場規模は約1兆6000億ドル(約176兆円)と群を抜く規模で、世界全体の約18%を占めています。アメリカの旅行産業はアメリカ国内に1560万人の雇用を産む、アメリカの重要な雇用基盤のひとつになっているのです。

(2)実現間近!? 宇宙旅行サービスの現状とその費用、市場規模予測

巨大な市場とともに成長を続ける旅行産業ですが、宇宙旅行が加わると、さらに拡大することでしょう。宇宙旅行産業は、2028年には140億ドル(約1.5兆円)になるとの予測もあります。まずは、実際に宇宙旅行サービスを展開している4つの会社をご紹介します。

※各社ホームページ、Crunchbaseなどの情報を元に作成

現在、宇宙ビジネスで実現に向けて動きがある旅行サービスは、大別すると大きく以下の4つがあります。

1.無重力を体験できる小宇宙旅行
2.滞在する宇宙旅行
3.宇宙を経由した旅行(移動)
4.月・火星への移住

各サービスで実際にどのような動きがあるのか、見ていきましょう。

■無重力を体験できる小宇宙旅行

ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)、費用は1人25万ドル!

Credit : Virgin Galactic Source : https://www.virgingalactic.com/mission/

ヴァージン・ギャラクティックは、著名起業家でヴァージン・グループ会長のリチャード・ブランソン氏が立ち上げた宇宙旅行会社です。2004年の会社設立ですので、宇宙旅行会社としては黎明期からいる企業の1つです。

ヴァージン・ギャラクティックの事業目的の1つは「宇宙旅行のための宇宙船を製造し、打ち上げること」です。ヴァージン・ギャラクティックは、2019年2月に「パイロット以外の人員」1名を乗せた宇宙船「VSS Unity」を宇宙空間に到達させ、そのシンプルな事業目的を実現しています。

ヴァージン・ギャラクティックの宇宙旅行プログラムとは、どのような内容なのでしょうか。宇宙船VSS Unityは乗員2名、乗客6名の8人乗りの小型宇宙船です。実際には飛行機のように飛行し、なおかつ垂直上昇して宇宙空間へ到達するので、スペース・エアプレーンという呼び方が正しいでしょう。乗客がVSS Unityに搭乗すると、母機にドッキングされた状態で高度15kmまで飛行し、そこから母機から分離してエンジンを噴射、高度を上げます。

高度110kmに達すると落下を開始し、乗客は4分間程度無重力状態を体験することになります。高度12kmまで降下すると通常飛行モードに切り替わり、後は普通の飛行機のように飛行して地上の滑走路に着陸します。出発から着陸までの宇宙旅行の体験時間は90分程度とされています。

気になる料金は一人25万ドル(約2750万円)。これを高いと見るか安いと見るかは意見が分かれそうですが、普通の人でも全く手が届かないような金額ではないように見えます。

なお、ヴァージン・ギャラクティックは事前予約を受け付けていますが、すでに複数の日本人を含む600人程度が申し込んでいます。また、2020年中にサービスを本格的に開始したいとしており、その動向に注目が集まります。

ブルーオリジン(Blue Origin)、費用は1人20万ドル!

Credit : BLUE ORIGIN Source : https://www.blueorigin.com/

ブルーオリジンは、Amazon創設者のジェフ・ベゾス氏が立ち上げた航空宇宙企業です。ブルーオリジンの設立は2000年で、ヴァージン・ギャラクティック同様に宇宙旅行の初期の頃から名を連ねる企業です。人類がより安価に宇宙へ飛び立てるようにする。どこかAmazonとも似たようなコンセプトで事業を展開しています。

さて、ブルーオリジンも宇宙旅行サービスの提供を予定していますが、どのような内容でしょうか。ブルーオリジンは、独自開発した再利用型ロケットの「ニューシェパード」を使い、旅行者を宇宙空間へ運びます。ニューシェパードはロケットとクルーカプセルで構成され、6人乗りのクルーカプセルを宇宙空間で放出。ロケットは地上へ帰還し、自動制御で着陸します。

ニューシェパードも、ヴァージン・ギャラクティックのVSS Unityと同様に地上100kmまで上昇。地上100kmでクルーカプセルが分離され、自由落下を開始します。その間、搭乗者は数分程度の無重力状態を体験できるのです。なお、クルーカプセルは自動制御されるため、操縦士は搭乗しません。一定の高度まで落下するとパラシュートが展開され、そのまま地上へ軟着陸します。

気になる料金ですが、ブルーオリジンによると、現時点での料金は一人当たり20万ドル(約2200万円)を予定しているそうです。ヴァージン・ギャラクティックの25万ドルより少し安めの料金設定ですが、こちらも頑張ればなんとかなるような価格に見えます。

なお、ニューシェパードの打ち上げから帰還までにかかる時間は15分程度だそうです。単純に時間だけを比較した場合、ブルーオリジンよりもヴァージン・ギャラクティックの方がお得感があるかもしれません。

サービスの提供は、早ければ2020年になるのではと憶測が流れています。しかし、コロナウイルス感染拡大の影響などを踏まえると、このスケジュールはさらに延びるかもしれません。

■滞在する宇宙旅行

スペースX(SpaceX)のISS滞在旅行、費用は1人5500万ドル!

Credit : SpaceX Source : https://www.spacex.com/dragon

日本のビジネスパーソンの間でも有名な起業家イーロン・マスク氏が率いるスペースXも、宇宙旅行サービスの提供を計画しています。スペースXには、すでにファルコンロケットで国際宇宙ステーションへ物資を輸送するなどの多くの実績があります。しかしそれだけではなく、アクシアム・スペース社と契約を締結して、ファルコンロケットを使って3人の民間宇宙飛行士を国際宇宙ステーションへ送る計画も進めているのです。

同社の発表によると、スペースXが計画している宇宙旅行は10日で、参加者は8日間国際宇宙ステーションに滞在。期間中、参加者は国際宇宙ステーションに勤務する宇宙飛行士の仕事の邪魔をしない範囲で、自由に宇宙での滞在を楽しめます。

現在のところ、この宇宙旅行は早ければ2021年に実施されるのではないかと報道されています。予約はすでに埋まっていて、料金は1人あたり5500万ドル(約60億5千万円)。なお、スペースXは宇宙旅行ビジネスを、本業のロケット打ち上げビジネスに続く有望な新規事業としてとらえているようで、別のプランではファルコンロケットに最大4人の旅行者を乗せて、地球を周回する旅行プランも策定しているそうです。スペースXでは、早ければ2022年初めころにはサービスを開始したいとしています。

スペース・アドベンチャーズ(Space Adventures)のISS滞在旅行、費用は1人約3700万ドル!

Credit : Space Adventures Source : https://spaceadventures.com/experiences/spacewalk/

スペース・アドベンチャーズは、1998年に起業家のエリック・アンダーソン氏が設立した宇宙旅行会社です。同社は、これまでに7人の民間人をロシアのソユーズロケットで国際宇宙ステーションへ運ぶサービスを実施(Charles Simonyi氏は2回経験)。また旅行者を単に国際宇宙ステーションへ送るだけでなく、オプショナルツアーとして宇宙遊泳を体験できるプログラムなども用意しています。

金額は25億7300万ルーブルで、日本円換算をすると約39億円。
※2020年5月6日時点の為替レートで計算しており、現在ルーブルはコロナの影響を受けて大幅安になっていることに注意

さらに、大気圏内での無重力体験ツアーや地上における宇宙飛行士訓練体験ツアーなどのサービスも手がけており、地上と宇宙の両方で様々なプログラムを提供しています。

スペース・アドベンチャーズの強みは、これらの豊富なプログラムを組み合わせて顧客の要望に応じた旅行計画を策定し、実際に提供することです。スペース・アドベンチャーズは、現在月の周回軌道を回るツアーを計画しています。

参考:スペース・アドベンチャーズ CIRCUMLUNAR MISSION

月の周回軌道ツアーではロシアの宇宙船を活用して、月を一周してから地球に帰還させる予定です。

ゲートウェイ財団(Gateway Foundation)

Credit : Gateway Foundation Source : https://gatewayspaceport.com/

カリフォルニア州に拠点を置くゲートウェイ財団は、最大450人が滞在できる宇宙ホテルを2027年までに建設すると発表しています。ロケットの父フォン・ブラウンの名前を冠したフォン・ブラウン・ステーションは回転型のロータリーデザインで、直径190メートルの巨大な宇宙ホテルです。ロータリーの中心は、宿泊客や物資を運ぶ宇宙船のためのドッキングステーションで、宿泊客はそこからチューブを通って部屋へ移動します。

ゲートウェイ財団のプロジェクト以外にも、宇宙ホテルの建設を目指すプロジェクトはいくつも立ち上がっています。宇宙ホテルは、未来の宇宙旅行ビジネスにおける主たるビジネスセクターの1つになるでしょう。

■宇宙を経由した旅行

スペース・プレーン(SpaceX)

Source : https://www.youtube.com/watch?time_continue=3&v=zqE-ultsWt0&feature=emb_logo

スペース・プレーンも、未来の宇宙旅行ビジネスにおける注目株です。スペース・プレーンとは、宇宙空間を飛行する宇宙船のことですが、既存の航空機を駆逐する可能性があると言われています。

スペースXは100人乗りのスペース・プレーン「ビッグファルコンロケット」を開発し、旅客輸送サービスの開始を計画しています。スペースXによると、従来は15時間かかっていたニューヨーク・上海間の航空機によるフライトを、約39分に短縮できるとしています。

現在、全世界では年間に1億5千万人が飛行時間10時間以上のフライトを利用し、52万ルートを飛行しているそうです。あくまで構想段階ではありますが、そうしたフライトの一部を、スペース・プレーンがリプレースする可能性は大いにありうるでしょう。

Hypersonic Vehicle(Stratolaunch Systems)

Credit : Stratolaunch Source : https://www.stratolaunch.com/vehicles/talon-a

マイクロソフトの共同創業者 ポール・アレンなどが設立したストラトローンチ・システムズでも、約120mの翼幅を持つ巨大航空機「ストラトローンチ」の計画が進んでいます。2020年3月30日には、詳細なデザインが公開され、順調にいけば2022年に試験飛行が始まるそうです。スペースXより早く実用化する可能性もあるでしょう。

現在構想している「Talon-A」は、極超音速を実用できるように設計しており、マッハ6クラスの機体であるとホームページに記載があります。また自動で水平着陸を可能に、自動離陸もできるようにするとしています。

Talon-Aでは超音速飛行中のデータを収集するための実験が行われます。試験飛行は、早ければ2022年に実現すると発表しています。

(3)夢物語ではない、月や火星に“住む”という選択肢

月や火星、SFの世界に出てくるような舞台が人類にとって当たり前の存在になるかもしれません。実はそこに向けて、すでに複数のプロジェクトが進んでいるのです。

■月探査プロジェクト

例えば、スペースXやスペース・アドベンチャーズは月への宇宙ツアーを計画しています。ZOZOの創業者・前澤友作氏の出資で立ち上がったディア・ムーン・プロジェクトは、スペースXが現在開発中の大型宇宙船スターシップ号に8名程度の乗客を乗せ、ファルコンロケットで月まで送る壮大なプロジェクトです。過去にアポロ13号が辿った軌道と同じ軌道を通り、月に着陸することなく月の周囲を回り、打ち上げから6日後に地球へ帰還する予定です。

現時点では2023年に予定されているスペースXの月旅行ツアーですが、ツアーの回数を重ねて安全性や安定性が確立されれば、価格も下がる可能性があります。価格が下がればより多くの参加者を集められ、さらに価格が下がるという好循環が生まれるはずです。

民間だけでなく、国家でも再度月を目指す動きがあります。NASAでは2028年に月面基地建設を目指す「アルテミス計画」が立ち上がっており、2024年に有人月面着陸を予定しています。

■火星探査プロジェクト

将来的には火星への旅行ツアーなども計画されており、宇宙旅行ビジネスのさらなる広がりが期待できます。「火星への移住」をミッションに掲げるスペースXをはじめ、宇宙船の信頼性向上と大型化が実現することで、宇宙旅行ビジネスは確実に拡大するでしょう。

火星への旅行や移住を進める前に火星を探査する必要がありますが、すでにそのためのプロジェクトも進んでいます。

例えば、NASAは2033年の火星有人探査計画を進めています。その上で、火星探査車(ローバー)を送り込むプロジェクトが進めており、2020年夏に「Perseverance」を積んだロケットを打ち上げる予定です。

さらに、スペースXと同様に、商用旅行サービスの展開を進めようとしているアクシアム・スペース社です。同社は、旅行サービスだけでなく、NASAからISSの商業モジュール建設業者として選定を受けている他、火星探査用ローバーの開発にも力を入れています。

これらの取り組みが成功すれば、人類が火星に旅行して定住する未来が実現するかもしれません。

(4)まとめ

2020年代は、ヴァージン・ギャラクティックのVSS Unityによる、一般の旅行客を乗せた「宇宙旅行ツアー」が大きな盛り上がりを見せるでしょう。

またスペースXも、来年末までに国際宇宙ステーションへの8泊10日の宇宙旅行ツアーを実施する予定です。さらに2024年までに、ファルコン宇宙船による地球周回軌道観光ツアーも始まる予定です。コロナウイルス感染拡大により、ツアー開始を遅らせることは十分考えられますが、10年スパンで見れば実現する可能性の方が高いでしょう。

■有人宇宙飛行スケジュール(延期の可能性あり)
2020年5月27日:NASA・スペースX ISSへ
2020年:ヴァージン・ギャラクティック、民間向け有人宇宙飛行サービス提供開始
2020年末:ブルーオリジン、民間向け有人宇宙飛行サービス提供開始
2021年:スペース・アドベンチャーズとスペースX、民間人に宇宙旅行を提供開始
2021年:アクシアム・スペースとスペースX、民間人をISSへ
2023年:スペースX、ZOZO創業者・前澤友作氏を乗せて月周回旅行へ
2024年:NASA、有人月面着陸
2030年代:中国、有人月面着陸
2033年:NASA、火星有人探査

2020年代は、宇宙旅行ビジネスが花開いたーー。後世の人たちは、このように評価するかもしれません。

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(参考サイト)
https://www.wttc.org/
https://www.theverge.com/2020/3/5/21166657/spacex-tourists-iss-international-space-station-orbit-falcon-9-dragonhttps://www.blueorigin.com/
https://www.nytimes.com/2020/03/05/science/axiom-space-station.html
https://spaceadventures.com/
https://www.businessinsider.com/space-hotels-could-launch-in-2021-photos-2019-10
https://www.cnbc.com/2019/03/18/ubs-space-travel-and-space-tourism-a-23-billion-business-in-a-decade.html
https://realsound.jp/tech/2019/11/post-450242.html
https://www.businessinsider.jp/post-185905